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萩原京平に勝ち目はあるのか? 5・5『RIZIN LANDMARK 3』打倒クレベルの作戦とは─。

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
クレベル・コイケと闘うチャンスを得た萩原京平(左)(写真:RIZIN FF)

牛久絢太郎が意地の王座防衛

「(昨年10月、斎藤裕に勝利するも)たまたま、まぐれという声が多くて悔しくて、半年間必死に追い込んだ練習をしてきました。それが結果につながってとても嬉しい。やってきたことは間違っていなかった。RIZINのベルトを腰に巻いてからずっとプレッシャーがありました。でも、そのことが自分を強くしてくれた」

試合後に、牛久絢太郎(K-Clann)は涙声でそう話し、インタビュースペースでは笑顔を見せた。

「今回の試合だけに集中していたので、これから先のことは考えていなかった。ゆっくり休んでから考えます」と試合後にインタビュースペースで話した牛久絢太郎(写真:藤村ノゾミ)
「今回の試合だけに集中していたので、これから先のことは考えていなかった。ゆっくり休んでから考えます」と試合後にインタビュースペースで話した牛久絢太郎(写真:藤村ノゾミ)

4月17日、東京・武蔵野の森総合スポーツプラザ『RIZIN.35』でのフェザー級(66キロ以下級)タイトルマッチで牛久は前王者の斎藤裕(パラエストラ小岩)に再び勝利、王座初防衛を果たしている。

内容は、緊迫感溢れるクロスファイト。

互いに様子を見合った1ラウンドはイーブンも、2ラウンドに牛久が左ハイキックで斎藤を後方に吹っ飛ばし尻もちをつかせる。総合格闘技だから試合続行だが、キックボクシングなら「ダウン!」がコールされるシーンだ。

3ラウンド前半にも牛久は、左フックをクリーンヒットさせる。この時も斎藤は体勢を崩した。それでも前王者が、ここから積極的にパンチを振るってラッシュをかけ持ち直す。ドローに近い戦況も、有効打で勝った牛久がジャッジ3者の支持を得た。

幾度も構えを左右スイッチし斎藤裕を翻弄、要所で強打を炸裂させた牛久絢太郎(右)がフェザー級王座防衛を果たした(写真:RIZIN FF)
幾度も構えを左右スイッチし斎藤裕を翻弄、要所で強打を炸裂させた牛久絢太郎(右)がフェザー級王座防衛を果たした(写真:RIZIN FF)

RIZINフェザー級の勢力図は変わらず。

王者・牛久は夏に2度目の王座防衛戦を行うことになろう。クレベル・コイケ(ボンサイ柔術)との対戦が有力視される。

なぜクレベルvs.萩原なのか?

さて、そのクレベルだが来月、RIZINのリングに上がることになった。

『RIZIN.35』の中で次回大会が、榊原信行CEOより発表されている。

5月5日、『RIZIN LANDMARK vol.3』(会場非公表)─。

この大会のメインエベントでクレベルは萩原京平(SMOKER GYM)と闘う。よって一試合を挟み、クレベルは牛久のベルトに挑むことになりそうだ。

(提供:RIZIN:FF)
(提供:RIZIN:FF)

それにしても、驚きのマッチメイク。

両者の実力差は大きい。大方のファンが「クレベルの圧勝」と予想することだろう。クレベルは昨年6月、東京ドーム『RIZIN.28』で朝倉未来(トライフォース赤坂)を三角絞めで失神に追い込み完勝した。萩原は、その朝倉に昨年10月の『RIZIN LANDMARK vol.1』で寝技で弄ばれ完敗しているのだから。

ではなぜ、クレベルvs.萩原が組まれたのか?

理由は2つあるように思う。

一つは、実力はともかく、萩原の人気が高いこと。つまりは、配信における視聴者数が見込める。

もう一つは、主催者が長期的計画で萩原を育てようと考えていること。

今年3月、大阪での『RIZIN.34』で萩原は、前DEEPフェザー級王者の弥益ドミネーター聡志(team SOS)に腕ひしぎ三角固めを決められ沈んだが、その直後に榊原CEOは言った。

「今日敗れた萩原選手が強くなるには実戦が必要。強くなるチャンスを今後もドンドン与えていきたい」

勝ち負けだけではなく、将来の飛躍に向けてキャリアを積んでもらいたいとの想いもあるのだろう。

『RIZIN.35』第6試合終了後に、5・5『RIZIN LANDMARK vol.3』の開催とメインカードが発表された。リング上から意気込みを語ったクレベル(左)と萩原京平(写真:RIZIN FF)
『RIZIN.35』第6試合終了後に、5・5『RIZIN LANDMARK vol.3』の開催とメインカードが発表された。リング上から意気込みを語ったクレベル(左)と萩原京平(写真:RIZIN FF)

「革命」を起こすためには…

クレベルが圧倒的優位。とはいえ、闘いの行方がどうなるか分からない部分もある。

萩原も真正直に闘い、単に敗北を受け容れるためにリングに上がるつもりもないだろう。

彼は、こう話す。

「前回負けたのに、ビッグチャンスが回ってくるとは俺は『持っている』。この試合にすべてをかけて、クレベル選手をぶっ倒しに行こうと思っています。5月5日、革命を起こします!」

普段通りの闘い方をしてクレベルに勝てるとは萩原も思っていない。組み技、寝技のトレーニングにも励んでいる彼だが、短期間でクレベルと互角に渡り合えるレベルに引き上げるのは難しい。ならば、試みるべきは「一か八か」の奇襲だろう。

組まれること、寝かされることを恐れず開始早々から一気に打撃で攻め込む。クレベルも打撃戦には応じてくるタイプ。打ち合いに持ち込み、組みつかれる前に一撃でダメージを与えるのだ。可能性は低いとはいえ、この作戦が嵌まればアップセットを起こせるかもしれない。

順当な決着となれば「牛久vs.クレベル」、萩原が革命を起こせば、「牛久vs.朝倉」、もしくは「牛久vs.萩原」のタイトルマッチが夏に行われることになる。

さらにヒートアップするRIZINフェザー級戦線。グランプリトーナメントの有無にかかわらず目が離せそうにない。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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