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朝倉海vs.堀口恭司は意外な展開、結末の予感!大晦日決戦『RIZINバンタム級タイトルマッチ』──。

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
朝倉海(左)と堀口恭司が大晦日、1年4カ月ぶりに対峙!(写真:RIZIN FF)

「当然、KOを狙います。でもまずは、勝つことが大事。その中でチャンスがあれば倒しにいく感じですね。この階級(バンタム級)の日本人の中で一番強いと思っている堀口選手にもう一度勝てば海外挑戦の道を開くことができる」(朝倉海)

「前回の試合のことはカウンターパンチを喰らった後、何も憶えていません。だから再戦というよりも新たな選手と闘う感じです。久しぶりの試合、楽しみですね。仕返しできるのが嬉しい。勝つイメージしか思い浮ばない」(堀口恭司)

戦前予想は『5-5』のイーブン

大一番が目前に迫っている。

大晦日、さいたまスーパーアリーナで開催される『RIZIN.26』のメインエベントとして行われるRIZINバンタム級選手権試合、朝倉海vs.堀口恭司。1年4カ月ぶりのリマッチだ。

(提供:RIZIN FF)
(提供:RIZIN FF)

2019年8月18日、ドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)での『RIZIN.18』で両者は対戦した。当時、堀口はRIZINとベラトールのバンタム級2冠王者。試合はノンタイトル戦として行われたが大方は絶対王者・堀口の圧勝を予想した。

しかし、朝倉が大番狂わせを起こす。

開始早々に朝倉が右のカウンターパンチをクリーンヒットさせ堀口をグラつかせる。そこから打撃で一気に畳かけ、僅か68秒でKO勝利を収めた

昨年8月、『RIZIN.18』での初対決。右カウンターパンチを炸裂させた朝倉海(左)が、この後一気に攻め込みKO勝利を収める。尾張の地で時代が動いた(写真:RIZIN FF)
昨年8月、『RIZIN.18』での初対決。右カウンターパンチを炸裂させた朝倉海(左)が、この後一気に攻め込みKO勝利を収める。尾張の地で時代が動いた(写真:RIZIN FF)

その後、すぐに再戦が決まった。4カ月後の2019年大晦日に今度はタイトルを賭けて闘うと。ところが堀口が練習中に大怪我に見舞われてしまう。

右ヒザ前十字靭帯断裂と半月板損傷。

手術を受けた堀口は、長期戦線離脱を余儀なくされた。

この間に、堀口が返上したRIZINバンタム級王者のベルトは、いま朝倉の腰に巻かれている。立場を変えての再対峙となったわけである。

さて、フェイバレット(優位なの)はいずれか?

前回の試合、戦前予想は「8-2」で堀口優位だった。そのため昨年8月の試合の直後は、朝倉の勝利を「まぐれ」と見る向きも多かった。出合い頭のパンチが偶然に当たっただけだと。だが、そうではなかった。兄・未来とともに堀口のクセを見抜き一撃を決めたのだ。

その後、彼はさらに成長している。

マネル・ケイプには敗れた(昨年大晦日)ものの、今年に入ってから扇久保博正、昇侍に連勝。堀口がいない間にRIZINを牽引する存在と化している。

今回の予想は「5-5」、まったくのイーブンと見ていいだろう。

ミスが許されない闘い

気になるのは堀口の怪我からの回復状況か。

メディアに対して堀口は、次のように話している。

「もう100%に近い形で治っています。いろいろと言われますけど、怪我をしたって治せば勝てることを証明したいですね。ブランクも気にしていません」

また、彼のコーチを務めるATT(アメリカン・トップ・チーム)のマイク・ブラウンも言う。

「フィジカルに何の問題もない。それどころかキョージは、以前よりも速く、強くなっている。新たな動きも身につけた。カイはデンジャラスな相手だが、戦闘能力でキョージが上回っている。試合でそのことが証明されるよ」

堀口の練習は公開されなかったが、コンディションは整えられたようだ。

12月18日、東京・トライフォース赤坂において行われた朝倉海の公開練習。兄・未来とマススパーリングを披露し好調ぶりを誇示した(写真:RIZIN FF)
12月18日、東京・トライフォース赤坂において行われた朝倉海の公開練習。兄・未来とマススパーリングを披露し好調ぶりを誇示した(写真:RIZIN FF)

大怪我を乗り越え、1年4カ月ぶりにリング復帰を果たす堀口恭司。UFCでの激闘を含めキャリアでは朝倉を上回る(写真:RIZIN FF)
大怪我を乗り越え、1年4カ月ぶりにリング復帰を果たす堀口恭司。UFCでの激闘を含めキャリアでは朝倉を上回る(写真:RIZIN FF)

一発で勝負を決めることができる強打の持ち主同士の対峙。また、ともにスタイルがアグレッシブ。そのため激しい打ち合い、凄絶なKO決着を予想する向きが多いが、今回はそうはならないのではないか。

互いに相手の強さ、そして手の内をよく理解している。

堀口は、朝倉のカウンターパンチを警戒し不用意に飛び込むことはしない。逆に朝倉も、総力戦を望む堀口に寝業に持ち込まれることを避けようとするだろう。

ピリピリとした緊張感が漂う中、意外にも睨み合う時間が長く続く可能性もある。

9月『RIZIN.24』での那須川天心vs.皇治、あるいは、11月『RIZIN.25』朝倉未来vs.斎藤裕のように、アッという間に刻が過ぎてしまうかもしれない。私は、いずれが勝つにせよ濃密な心理戦の末の判定決着になると予想している。

両雄にとって「絶対に負けられない闘い」──。

勝負論優先の闘いでは、どうしても互いが慎重になる。ミスを犯した方が負けるのだから、それは当然のことだ。試合時間が15分では短い。もしかすると、この一戦を機に「タイトルマッチは、3ラウンドではなく5ラウンドにすべき」との声が強くなるかもしれない。

今年最後の雄叫びを上げ、腰にベルトを巻くのは果たしてどっちだ? 

朝倉海が時代を築くか、それとも堀口恭司の復権か。勝者が来たる2021年「RIZINの主役」となる。決戦のゴングが待ち遠しい。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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