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金原前会長を告発したテコンドー王者・江畑秀範が『RIZIN.25』に参戦。何を見せる?勝算は?

近藤隆夫スポーツジャーナリスト
国内敵無し、テコンドー全日本選手権9連覇中の江畑秀範(写真:アフロスポーツ)

テコンドーを代表して闘う

「テコンドーならではの足技を駆使して、派手なKOをお見せしたい」

日本テコンドー界・重量級のエース、江畑秀範が格闘技イベント『RIZIN』に参戦する。11月21日に大阪城ホールで開催される『RIZIN.25』のリングでキックボクシングの試合を行うのだ。

江畑はテコンドー界においては知らぬ者はいないメジャーな選手。だが一般には「金原昇会長(当時)を告発した男」とのイメージの方が強いかもしれない。

昨年、ワイドショーなどで大きく報じられたテコンドー協会問題。選手ファーストとは程遠い運営方針に異議を唱え、強化選手の総意で合宿をボイコット、組織の改革を訴えるなど矢面に立っていたのが江畑である。

2012年から今年にかけて『全日本選手権』(80キロ以下級、20年のみ87キロ以下級)を9連覇中。現在、日本においては無敵状態。だが、来年開催される東京五輪の代表には選ばれていない。出場階級枠に重量級が入らなかったためだ。

五輪出場の夢が断たれた。ならば、キックボクサーに転向しプロ格闘技のリングに上がることを決意したのかといえば、そうではない。

「テコンドー選手としてオリンピックでのメダル獲得を目指しています。アジア競技大会にも出場して頑張りたい。と同時にプロのリングにも上がり闘うことにしました」

どうやら、テコンドーとプロのキックボクサーの両立を目指すようだ。

江畑は続ける。

「初めての『RIZIN』のリングで勝ちたいのは勿論ですし、大晦日のリングにも立って派手なKO勝利を収めたいと思っています。

いま、日本には(キックボクシングの)重量級で目立った選手はいないように感じています。その部分を自分が頑張って、いずれはMMA(総合格闘技)も視野に入れていきたい」

「足技の凄さを見てもらいたい。テコンドーでもプロのリングでも結果を残すのが目標」と爽やかな表情で話した江畑(写真:RIZIN FF)
「足技の凄さを見てもらいたい。テコンドーでもプロのリングでも結果を残すのが目標」と爽やかな表情で話した江畑(写真:RIZIN FF)

速くて鋭い蹴撃が炸裂するか

身長198センチ、体重83キロ。

江畑は、破格のフィジカルサイズを誇る。加えて運動能力は勿論のこと、適応能力も高い。

テコンドーを始めたのは高校2年生の時。それから僅か2年で全日本チャンピオンになっているのだ。高校3年時にはタイで修行もしておりムエタイにも触れている。

さて、デビュー戦はどのような展開になるのだろうか?

今回は、江畑の相手に強豪が用意されているわけではない。よって、大晦日のリングに上がるためには鮮やかに勝つことが絶対条件となる。

また、キックボクシングに対しての適性も問われよう。

対戦相手は岡山のジム、拳之会に所属する佐野勇海、20歳。江畑よりも8つ歳下の選手だ。

アマチュアとしてキャリアは積んでいるが、プロとしてリングに上がった経験はなく江畑と同じく今回がデビュー戦となる。

それでも突進力とパンチ力には定評があり、将来性豊か。

今年3月には、あのピーター・アーツの愛息マルシアーノ・アーツとアマチュアルールで闘い3ラウンドKO勝利を収めてもいる。

テコンドー仕込みの蹴り技で相手を圧倒、華々しくデビュー戦を飾りたい江畑は会見後のメディア撮影で左足を振り上げる(写真:RIZIN FF)
テコンドー仕込みの蹴り技で相手を圧倒、華々しくデビュー戦を飾りたい江畑は会見後のメディア撮影で左足を振り上げる(写真:RIZIN FF)

江畑としては長足を利しての蹴りを活かして闘いたい。そのためには、しっかりと相手との距離を確保することが不可欠。佐野に踏み込ませることなくテコンドー仕込みの速くて重い蹴りを連射していきたいところだ。

対して佐野は、そうはさせじと突進し接近戦を狙っていくことだろう。インファイトに持ち込めば破壊力のあるパンチで勝機が見い出せると考えてのことだ。

それでも技を繰り出すスピードに基準を置けば、江畑が間合いを支配する可能性が高い。8-2で江畑優位と見る。しかし、初めてのリングで

奇襲を喰らい佐野にペースを握られたならば結果は逆転する。

ちなみに佐野は江畑戦の15日後、岡山・FIGHT CLUBで試合をすることが以前から決まっている。にもかかわらず今回のオファーを受けた。

(突然、巡ってきたビッグチャンスを逃してなるものか)

そんな強い意気込みを感じる。

粗削りではあろうが、面白い試合になりそうだ。

反骨の男・江畑は、「二刀流スター街道」の扉を開くことができるのだろうか。

スポーツジャーナリスト

1967年1月26日生まれ、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から『週刊ゴング』誌の記者となり、その後『ゴング格闘技』編集長を務める。タイ、インドなどアジア諸国を放浪、米国生活を経てスポーツジャーナリストとして独立。プロスポーツから学校体育の現場まで幅広く取材・執筆活動を展開、テレビ、ラジオのコメンテーターとしても活躍している。『グレイシー一族の真実』(文藝春秋)、『プロレスが死んだ日。』(集英社インターナショナル)、『情熱のサイドスロー~小林繁物語~』(竹書房)、『伝説のオリンピックランナー”いだてん”金栗四三』、『柔道の父、体育の父  嘉納治五郎』(ともに汐文社)ほか著書多数。

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