1月8日の始動から約3週間。片野坂知宏新監督のもと、2022シーズンの『片野坂ガンバ』が少しずつその色を見せ始めている。

 大阪でのトレーニングでは主に、沖縄キャンプでゲームや戦術トレーニングを戦うためのコンディションづくりに充てられてきたが、18日に沖縄入りしてからは本格的に戦術トレーニングに突入。今日までに練習試合を3試合消化しながら、狙いを持ったチーム作りが進められているようだ。

「大阪での2週間はフィジカル、技術的なものを含めて基本的なゲームができるくらいまでの準備期間にあて、戦い方の大枠というか、戦術面での攻守の狙いを徐々に選手たちに提示した上で、こういうプレーをしてほしい、こういう狙いのもとでサッカーをしようということを伝えてきました。その上でキャンプに入ってからは90分を戦えるフィジカルを仕込みながら、より実戦形式で練習試合、紅白戦を行い、出た課題を1つずつクリアしていくことと、攻守における細かい部分の落とし込みと改善をしていこうと考えています。またキャンプが終わってから開幕までの約3週間でも、練習試合を組んでいる中で、開幕に向けてある程度戦術やメンバーの大枠を固めながら合わせていき、シーズンを戦える準備をしたいと思っています(片野坂監督)」

 指揮官によれば、例年、開幕前のこの時期は練習試合を5〜6試合戦いながらチームづくりを行うとのこと。実際、今シーズンも、2月19日のJ1リーグ開幕戦までにそれと同等の練習試合を組んでいると言う。

「普段の練習ももちろん大事ですが、相手もある中で戦う練習試合や紅白戦などのゲーム形式で出た課題をトレーニングで修正し、また次の試合を戦うことを繰り返しながらチーム力を上げていくのが理想です。また、せっかく沖縄で寝食を共にできる時間を設けられたので、全体ミーティングだけではなく選手とも個別に面談を行なっていきたいと思っています。僕がどういうサッカーをしたいかを伝えるだけではなく、僕自身がどういう監督で、何を大事にして、何を許すのかといった、人間性の部分も選手に知ってもらいたいですし、逆に僕も一緒に仕事をするのが初めての選手が多い中で、選手の人間性や性格、どんな思いでガンバでプレーすることを選んでくれたのか、などを知る時間にもしたいと思っています(片野坂監督)」

 実際、沖縄キャンプでは、選手のプレーの特性、特徴の見極めを行う一方で、マインドやチーム内での振る舞いなども観察しつつ、個人面談を行いながら相互理解を深めたと聞く。その中身については「個人面談で、僕の中で留めておきたいので詳しくは話せない」としながらも、いい驚きがあったと明かしてくれた。

「ガンバは以前から、大人しい選手が多い、大人しいチームだと聞いていましたが、実際にトレーニングや面談で選手と話をしていると決してそうではないなと感じました。選手一人一人が非常にしっかりとした思い、ビジョンを持っているし、面談で向き合っても、しっかりと自分の考えを言葉にできる選手が多い。やはりプロフェッショナルだなと感じました。選手とは日々、コミュニケーションをとりながら、チーム戦術のもとで選手同士が合わせていくことが大事だと伝えていますし、決められたことをやるだけではなく、ある程度の戦術、戦い方の方向性は大事にしながら、それを思い切ってやるとか、コミュニケーションの部分でも言葉にしていくことを求めています。その環境を作り出すのは僕の責任ですが、普段のトレーニングを見る限り、選手は言い合う、話し合うという部分で選手も非常に積極的にやってくれていますし、その姿を見ているとそんな大人しいチームではないのかな、と。決して静かではなく、非常にいい雰囲気でやれていると感じています(片野坂監督)」

 また、28日には新キャプテンには倉田秋を、副キャプテンには宇佐美貴史と三浦弦太を指名。その理由についても言及した。

「キャプテンの倉田はアカデミー出身で、ガンバで長い間プレーしていることからガンバのことをよくわかっていますし、若い選手からベテランの選手まで分け隔てなく話ができる選手だと思っています。また昨年、チームが勝てない時期を過ごし、苦しんでいた時も選手同士のミーティングを行うなど、リーダーシップを発揮していたとも聞いています。また秋は、彼がアカデミーからトップチームに昇格した時にも一緒に仕事をしていますから。僕やクラブとのコミュニケーションという部分でも、選手の意見をまとめてしっかり話ができる選手だということも総合的に考えて、任せることに決めました。また副キャプテンの二人については、弦太はこれまでもキャプテンとしてチームを引っ張ってきてくれていましたし、秋のサポート役としても力を発揮してもらいたい、チームに貢献してもらいたいと伝えました。また貴史については、彼がユース年代だった頃から一緒に仕事をしたこともありますし、長い間、ガンバの顔として引っ張ってきた選手だということ。またここまで貴史と話をしたり、彼のグラウンドでの姿を見てきた中で、ガンバを何とかしたいとか、今シーズンにかける思いを非常に感じられたこと。自分のチームにおける立ち位置や、他の選手について、常にキャプテンシーを持って言葉を発せられる選手だということも決め手になりまいた。正直、キャプテンを任せてもいいくらいの選手だと思っていますが、今回は副キャプテンとして秋をサポートしてほしいと伝えました。彼は今シーズン、相当な覚悟でガンバに残留してくれた中で、今シーズンに賭ける思いを副キャプテンとしても、宇佐美貴史としても発揮してもらいたいと思っていますし、それによってまた彼のこの先のチャレンジにどんどんつながっていく状況になっていけばいいなと思っています。またガンバには彼ら以外にも、キャプテンシーを備えた選手はたくさんいます。東口順昭や昌子源も、たとえ肩書きがなくともチームを引っ張ってくれる選手だと思っています。彼らを含め、選手一人一人にキャプテンシーを持ってチームに貢献してもらいたいと思っています(片野坂監督)」

世代を問わず幅広くチームメイトの信頼を集める倉田がガンバの新キャプテンを担う。 写真提供/ガンバ大阪
世代を問わず幅広くチームメイトの信頼を集める倉田がガンバの新キャプテンを担う。 写真提供/ガンバ大阪

 そうした指揮官の思いに呼応して、リーダーを託された選手たちも、その責任を口にする。

 キャプテンに就任した倉田は大役を任されたことについて「ずっとやりたいと思っていたので選んでもらって素直に嬉しい」と二つ返事で引き受けた事実を明かし、三浦弦太は過去4年、キャプテンの重責を背負ってきたからだろう。「少し気持ちは楽になります」と本音を口に。プロになって初めて副キャプテンという責任を背負うことになった宇佐美も「秋くんと弦太と話をしながらチームがいい方向に向かうようにピッチ内外で頑張っていきたい」と決意を語った。

「誰かの真似ではなく、自分らしく(キャプテンを)やってこうと思う。このチームでは一番、カタさんのことを知っているので、まずはしっかりカタさんとコミュニケーションを図り、やりたいサッカー、考えていることを吸収してみんなに伝えていくこと。あとは新たに元気な選手も増えたので、そういう選手をチームを盛り上げるような立ち位置に立たせるなど、チーム全体を見渡しながらチームがうまくいくような役割を担っていきたい。長いシーズン、いい時ばかりじゃないと考えても、しんどい時に何ができるかが一番大事。そういう時にいち早くいろんなことを察して動いていけるようにしたいと思っています。今年のチームはこれまでと雰囲気が全然違う。全てが試合につなげるための、試合を意識した練習というのも充実感を感じる部分。楽しさもありつつ、その中で激しく、厳しい練習もできているし、練習量がめちゃめちゃ多いわけではないけど、中身、質の部分ではしっかりみんなが集中して取り組めている。また、個人的にも例年にないくらい状態がいいです。まだまだ上げていかなければいけないとはいえ、体もすごく動けています。チームについても新しいことに取り組んでいる中で、カタさんのサッカーをみんなが体に染み込ませている段階で、できていること、できていないことはあるとはいえ、みんなの『やってやる』という気持ちを練習からめちゃめちゃ感じるし、練習からいい競争ができている。今やっているサッカーが完成したら、ほんまに見ている方も楽しめるサッカーになるという自信もみんなの中に芽生え始めているはずなので、今はとにかく早く完成に近づけて、試合をしたいと思っています(倉田)」

「正直、気持ちの部分は少し楽になったところはあります。ただ自分がキャプテンをやらせてもらっていた時も、周りの人のサポートがなければできなかったと考えても、今度は秋くんのサポートという部分でできる限りのことをやっていきたいと思っています。(肩書きが変わっても)自分のスタンスを大きく変えることはなく、しっかりとチームに貢献できるように、秋くんのサポートができるようにしていきたいです。カタさんが監督に就任して、戦い方が変化する中で、(沖縄キャンプでは)練習や練習試合を通して、細かい部分のチーム戦術のところに少しずつ取り組んでいます。今はまだそういう形ができる時もあれば、出し切れないところもあるので、この先も練習試合などを戦いながらチームのやり方に順応しつつ、自分のコンディションも上げていきたいと思っています。カタさんになってチームとしてのやり方も個人として求められることも変わってくる中でもう一度、一選手として成長できるようにやっていきたいし、これまでのキャリアで学んできたことにプラスアルファして、成長できるようにやっていきたい。それをチームとしての結果にも繋げていきたいと思っています(三浦)」

「新しい選手が入ってきて、若い選手というか大卒組くらいの年齢層の選手がグッと増えましたから。彼らが年齢が上の選手と若い選手をいい空気感で取り持ってくれているというか、精力的にモチベーターになってくれている感じはするので練習の空気はすごくいいなと感じます。和気あいあいとやる時と、しっかりやる時の線引きの中で練習にも取り組めています。また新たなコーチングスタッフのもと、アップの段階からボールを使った、しっかり止めて、蹴るといった練習から入り、戦術的な練習、ゲームが入ってくるといったトレーニング全体の流れ、速度みたいなものも個人的にはすごく好きだし楽しいというか。単に賑やかで楽しいという意味ではなく、練習メニューや内容、リズムを含めてサッカー自体を楽しめている感じはあります。そうした中で自分の役割としては、若い選手が増えたからこそ、彼らが伸び伸びとプレーできるように、考え方とかキャラクターを把握した上で、できる限りポジティブな声をかけるというか。いい意味で調子に乗らせてあげられるような役割を担いたいと思っています。ピリッとさせることは上の選手に任せるというか…それを僕が言ってしまうと若い選手は萎縮してしまうことも多いなと感じているので、僕はそれ以外の役割…みんながいい意味でどんどん調子に乗っていくような働きかけ、コミュニケーションの取り方にトライすることでチームの雰囲気をいい方向に持っていけるような流れを作っていきたいと思っています(宇佐美)」

 ここに名前を挙げた選手に限らず、始動から約10選手に取材を行ってきたが、それぞれの言葉や表情を見る限り、明らかにチームの雰囲気はいい。片野坂監督も、ここまでのチームづくりについて、理想通りに進んできていると手応えを語る。

ガンバには、クオリティのある、戦術理解度の高い選手が多いですし、僕が提示する戦術にチャレンジしようとしてくれる姿勢も非常に良くて、ここまでしっかり積み上げられてきていると感じています。僕もそこまで言葉がうまくない部分もあるんですけど、足りない部分は選手同士でいろいろ話をしたり、選手が僕の言いたいことを感じ取ってくれて、いいチャレンジもしてくれている(片野坂監督)」

 もっともチームづくりはまだ始まったばかり。戦術がすぐに成熟を見せたり、結果に直結するほど、甘い世界ではないはずだが、少なからず今は課題や手応えをポジティブに受け止めながら、着実に『片野坂ガンバ』が形づくられているのは間違いない。監督の言葉を聞くたびに、選手の言葉や表情に触れるたびに、開幕に向けたこちらの期待度、ワクワク感が増しているという事実がそれを証明している。

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著 高村美砂

発行 ベースボールマガジン社

2021年10月にクラブ創設30周年を迎えたガンバ大阪の歩みを選手、スタッフの『言葉』に焦点をあてて振り返る。クラブ史に残る名場面やクラブレジェンドの懐かしのシーンがここに。