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<GAMBA CHOICE 3>大阪ダービーで決めた、パトリックの今シーズン初ゴール。

高村美砂フリーランス・スポーツライター
待望の今季初ゴールでチームに勝ち点1をもたらした。 写真提供/ガンバ大阪

 5月2日に行われたヤンマースタジアム長居でのセレッソ大阪戦。パトリックは試合前から、この試合を「チームにとって特別な、すごく大事な試合」だと話していた。

「過去に戦った『大阪ダービー』が示しているように、セレッソ戦はガンバに関わる全ての人たちにとって特別な試合です。選手全員が口にせずともこの試合の重要さを感じています。今の僕たちのチーム状況を考えても、決して簡単な試合にはならないはずですが、サポーターの皆さんに信じてもらってもいいのは、僕たちは最後の最後まで戦い抜く、勝利を目指して走りぬく姿を示すということです。この厳しい状況でも選手の誰もがこの状況から這い上がるために全てを注いで準備をしています。日々のトレーニング、準備は嘘をつきません。いつか僕たちにも『ああいう難しい時期もあったな』と笑って振り返られる日が必ずきます。そのことを信じてガンバのために100%を出し切って戦います。今節はリモートマッチ(無観客試合)になりますが、テレビの向こうに、サポーターの皆さんがいると信じています」

 5試合ぶりに先発メンバーからは外れたものの、自分がやるべきことはわかっていた。

「出場時間が30分でも5分、1分だったとしてもピッチに立ったら得点を取ってやろうという気持ちで準備していた」

 勝利をつかむため、得点力不足に苦しむチームにゴールをもたらすために、だ。

 そのチャンスが訪れたのは82分のこと。セットプレーのこぼれ球に反応したDF昌子源のシュートが相手DFのハンドを誘いガンバはPKを獲得する。大きなプレッシャーは感じていたが、豪快に右足を振り抜き、ゴール左上を捉えた。

僕が入る直前に失点して、追いかける展開になりましたが、誰一人諦めることなく、自分たちの強さを出そうという姿勢がゲームの中で見られました。その中でまずは同点に追いつくことができ、以降も前がかりに試合を進め、もう少し時間があれば、逆転ゴールも生まれるのではないか、という状況を作り出すことができました。その点については今後のリーグ戦に向けてプラスの影響を与えてくれると思っています。点を取るために試行錯誤をしながらやってきた中で生まれたゴール。このゴールで自信をつけたいし、チームメイトみんなで奪ったゴールだからこそ、みんなが自信をつけてくれたらなと思います」

 「日々のトレーニングは嘘をつかない」と信じればこそ、近年は特に、ピッチの内外で自分の体と向き合うことが増えた。トレーニングで100%を出し切るために、準備やケアにかける時間は格段に増え、食事のコントロールや入浴への意識も高くなったと話す。誰よりも長くクラブハウスで過ごすようになったのもその証拠だ。

「僕がガンバに加入したばかりの頃は、それこそ練習が終わればすぐに帰宅していましたが今は1、2を争う早さでクラブハウスに来て念入りに体の準備をし、練習後もしっかりケアを行います。食事面でも無駄なものを摂取しないように…特に僕は甘いものが好きなんですが、体重に影響するような食べ物は摂取を控え、牛肉より鶏肉や魚を意識的に食べるようになりました。湯船に浸かって体をしっかりと休めることも今では当たり前のようにしています。これは年齢を重ねた今、若い頃と同じように過ごしていては理想のコンディションを維持できないと感じたこと。コンディションが整っていなければ日々のトレーニングに100%で臨むことができないと学んだからです。繰り返しますが、日々の練習は裏切りません。なんとなくこなすのではなく、質と強度の高さを意識して練習に臨むことは自信にもつながります。そして、それを継続していれば必ず自分の置かれている状況は変わってくると信じています」

 また、結果が出せた時だけではなく、そうでない時も、彼は定期的にSNSを使って、日本語でしたためた『想い』を届けている。

「勝つために戦いましたが残念ながら勝てませんでした。簡単ではない事はわかっていますが、このチームを信じて、僕達の時間が来るのを信じて、お願いしますサポーターのみなさんの応援が必要です。一緒に戦ってみなさんを笑顔にできる様に」ーTwitterより抜粋(4月11日)

「今は頭を上げて、次のゲームに向けて準備していきます!!僕はまずシーズンファーストゴールを決める為にも戦っています。きっともうすぐ獲れるはず。僕もチームもみんなベストを尽くしています!!今日もサポートありがとう」ーTwitterより抜粋(4月18日)

 戦っているのは自分たちだけではなく、サポーターも同じだと信じているからだ。

「結果が出ない時に苦しいのは自分たちだけではありません。スタジアムに来て応援してくれたサポーターも、テレビ観戦していたサポーターも同じように苦しい思いで結果を受け止めているはずです。そのことに対して同じ仲間として感謝の気持ちを届けたいと思っています。正直、チームが勝っていない時はネガティブなメッセージが届くこともあります。でも、それ以上にたくさんのポジティブなメッセージももらっていますし、何より現状に対して下を向いていても何も始まりません。僕にはどうしてもサポーターの皆さんのパワーが必要です。それをもらうためにはまずは自分がメッセージを届けなければいけないと思っています。僕たちがファミリーとしての絆を深めるためにも」

 冒頭に書いた『大阪ダービー』でゴールを決めた日。彼は「勝ちたかった」という思いとともにこんな言葉をSNSに残した。

「ありとう、テレビで応援してくれたミンナ、ミンナの力が僕達は大事です。いつも一緒に!」

 いつも、一緒に。その思いもまたパトリックを強くしている。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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