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<ガンバ大阪・定期便VOL.6>「蹴らせてください」から生まれたゴール。

高村美砂フリーランス・スポーツライター
8歳上のヨングォンと。物怖じしないハートの強さも山本の武器。写真提供/ガンバ大阪

「蹴らせてください」

 9月23日に戦った名古屋グランパス戦。53分にペナルティアーク内で得たフリーキックのチャンスに、山本悠樹は隣に立つDFキム・ヨングォンに自ら願い出た。

「フリーキックのチャンスを得たときに、ヨングォンか僕のどちらかが蹴ることになったんですけど、練習でも何本か決めたことがあって、自信を持っているところなので『蹴らせてください』と言ったら、(ヨングォンが)優しかったです(笑)。正直、距離が近かったし、思っていたより名古屋グランパスの選手が大きくてどうしようかな、と悩んでいたらヨングォンが『枠をしっかり捉えることだけ考えろ』と言ってくれたので、そこだけを意識して蹴りました。結構、ラッキーもあったけど、決められて良かった」

 名古屋の壁が崩れ、相手DFの頭に当たってゴールを捉える形になったが、この山本のゴールで後半、加速しつつあったガンバは一気に流れを掴む。思えば、彼が今シーズン初出場を飾ったベガルタ仙台戦も、8分に決めたプロ初ゴールとなる同点弾でチームは『いけるぞ』という空気になり、結果4-1で勝利したが、今回もその時と同じ、悪い流れを断ち切り、チームを蘇らせる貴重な同点ゴールだった。

「前半、自分たちのミスがらみの先制点を許してしまい、僕自身もうまく周りと呼吸があわなかったところもあって、少なからず責任を感じていましたし、後半、いい時間帯が続いていたのでその中でうまく後ろからサポートしながら得点を取りにいきたいと思っていました。いつもよりボールを前に、縦に運んで行くことを意識していた中で、康介くん(小野瀬)がうまく抜け出して、あの場所でファウルをもらい、FKにつながった。そこはうまくいった点だったと思うので、次に活かしていきたいです」

 この名古屋戦を含め、9月の戦いにおいては5試合連続で先発のピッチに立っている山本だが、J1リーグが再開して2ヶ月間は思うように試合に絡めず、ガンバU-23が出場するJ3リーグに出場したことも。それでも「今はすべての経験を自分の力にするとき」だと前を向いて戦い続けてきた結果、先に書いた仙台戦で初先発のチャンスを掴む。待ち望んだ『チャンス』を是が非でもものにしたいという気持ちは強かった。

「ユニバーシアードで一緒にプレーした川崎フロンターレの薫(三笘)や怜央(旗手)がJリーグ再開後すぐに活躍していた一方で、自分は試合に絡めなかったり、出ても短い時間でめっちゃめちゃ悔しかったし、チャンスをもらったら結果で応えないといけないとずっと思っていた。試合前、アップが始まるまでは珍しく緊張していたんですけど、アップが始まってからは緊張より『やるぞ』という気持ちの方が大きかった」

 その一戦での『結果』が、次なるチャンスに繋がっていると考えればこそ、ピッチに立ち続けている今も慢心はない。ポジションを争うライバルは遠藤保仁や井手口陽介、矢島慎也ら、いずれも経験豊富な代表クラスの選手ばかり。だからこそ、ピッチに立つだけではなく『結果』で示すことを何よりも自分に求めている。

「試合に出るだけではなく、チームの勝利に繋がらなければいけないと思っているし、慎也くん(矢島)がケガをしているから出ているというのでは物足りない。慎也くんともしっかり競争していきたいし、今日の試合でもヤットさん(遠藤)がああやって途中から出て、決勝点の起点にもなっていますからね。本当に僕の周りは盗むことだらけ、競争だらけなので、今後も結果にこだわりながらしっかり気を引き締めてやっていきたいです」

 思えば、今シーズンのスタート時にも、数あるオファーの中からガンバを選んだ理由として、ボランチにおける錚々たる顔ぶれとの『競争』を挙げていた山本。草津東高校時代、プロを目指すために、敢えて大学四冠を獲得していた強豪・関西学院大学を成長の場に選び、今のキャリアを切り拓いたという経験を振り返っても、高いハードルは大歓迎だ。

「挑戦しない人生は楽しくない。挑戦したからこそ得られるものはたくさんある」

 今も、そしてこれからも。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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