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<ガンバ大阪>97年以来の『8連勝』で残留を決める。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

同じく『残留』を目指す湘南ベルマーレをホームに迎えたJ1リーグ32節。立ち上がりは相手の勢いに押される時間帯が続いたが凌ぎ切り、0−0で折り返す。後半は勢いを取り返す中で、60分。約2ヶ月半ぶりの先発出場となったDF米倉恒貴が右サイドから挙げたクロスボールにニアであわせたのはFWファン・ウィジョ。好調のエースがまたしてもゴールをこじあけ、先制点を奪う。そのあとも、試合巧者に立ってうまく試合を進めたガンバ。終盤は湘南のシュートがクロスバーをたたくなどヒヤリとさせられる場面もあったが、全員で守りきり勝ち点3を手に。この結果、勝ち点も45に到達したことで今シーズンの目標にしてきた『残留』を自らの手で勝ち取るとともに、MF遠藤保仁がこの試合で達成したJ1通算600試合出場(歴代2位)の偉業を勝利で祝福した。試合後のガンバ大阪監督、選手のコメントをお届けする。

●宮本恒靖監督

まずは今日の試合で勝ち点3をとって、残留を明確なものにしようと試合に入ったので、それを成し終えたというか、しっかり勝ち点3をとって終われたことについては良かったと思います。7月末からみんなで取り組んできたものが少しずつ出て、この結果に繋がったと思いますが、前半を振り返ると、相手の方が出だしも良くて、ピンチも何回も作られました。その中で時折、いいカウンターを見せることはできましたが、前半に関しては少し物足りない印象を受けました。ただ、後半は、ボールの動かし方や守備の狙い目をもう少し明確にしながら入った中で、サイドも高い位置をとれるようになり、クロスボールも増えたことで得点につながりました。そうして前半から後半にかけて、いい形で変化できるというのはここ最近の流れとしてもあったので、前半流れがあまり良くなくても後半が勝負だというところでみんなの気持ちが一致していたと思います。1--0のあとも相手には少しチャンスを作られましたが、みんなでしっかりと守りきって、この試合を勝つんだという思いがピッチで現れた試合だったと思います。

ー率直に残留を決められた心境について聞かせてください。

ホッとしているというか、この連勝が始まってから、途中ぐらいからは確信を持っていましたし、仕事を引き受けた時から日常を改善していくことで残留に近づいてといけるという風に思っていたのが形になったという意味で、本当にみんなで力を合わせていい仕事というか、与えられた役割を全うしたかなと思います。

ー遠藤選手がJ1 600試合を達成されました。現役時代一緒にプレーされていた宮本監督としては、あの年齢になっても未だにバリバリとプレーしている遠藤選手についてどんなことを感じられていますか?

年齢とともに、また色々な監督と出会う中で、プレーを進化させてここに至っていると思います。600試合という数字は、今後、そういった出場記録を持つ選手が現れないのではないかというぐらい、かなり大きなものだと思います。それは体のケアも含めて、本当に怪我をしなかったというところも非常に大きいのではないかなと思います。今日の試合に関しても、ボールを動かすにあたっては、レベルはピッチ上の誰よりも高いと思いますし、もちろん色々コンディションが難しくなってくる年齢ではあると思いますけど、できる限り長くプレーする姿をたくさんのお客さんに見てもらいたいという風に思います。

ーここまでの連勝を含めて、残留決定に向けてチームが良くなってきたところは色々とあると思いますが、ファン・ウィジョ選手が勝負強さで牽引してきたところはあると思います。彼の勝負強さについて、監督はどんな心強さを感じていますか。

得点のところをどうしてもクローズアップされますけど、それ以外のボールを収める、守備をする、仲間と一緒にコンビネーションを作るというところにも改善が見られて、それが結果として得点につながっているんじゃないかと思います。プラス、アジア大会で得た個人としての自信もあると思います。覚醒する瞬間というのが確かに各試合あると思いますし、それを今日の試合でも発揮してくれたというのは、非常に頼もしい存在ではあります。でもこのレベルで終わってほしくない選手なので。もっとできることはある、と。例えば今日、前節の反省を踏まえて、ヘディングの競り合いのところを改善しようとトレーニングをした結果、それをパッと今日の試合で出せる選手なので、非常に吸収が早いなと思うので。例えば左足のシュートであったり、右足を切られた時のドリブルからのシュートとかもこれからは必要になってくると思いますし、まだそういったところを伸ばせる年齢でもあると思うので、ぜひもっとレベルの高いFWになってもらいたいと思います。

●DF三浦弦太

前半戦を振り返ればホッとする部分はありますし、ツネさん(宮本恒靖監督)になって残留は1つの目標だったので、しっかり目標を達成できたのは良かったです。(以前はこういう展開で勝ち切れずに追いつかれることが多かった。その辺もチームの成長として手応えを感じられるところですか?)最後までみんな体を張って守れていましたし、今は先制されても勝てている自信というのもあったので、バーに当たったり、運もあったとは思いますが、そういういい流れというのがあったのかなと思います。(移籍2年目でゲームキャプテンを任せられてしんどい部分もあったと思いますが)そうですね。責任のある立場をやらせてもらっているからこそ、より責任は感じていましたし、だからこそなかなか勝てない時期というのは苦しい時期もありましたけど、こうして今は連勝できていますし、チームも上向きになっているのも、あの経験があったからこそとも言えると思うし、そういう立場でやれたことは自分の成長にもつながったと思うので、そこまで悲観的に考えていないというか…今につながるいい経験だったのかなと思います。(僅差の試合も多かったですが、ウィジョ選手の勝負強さなど、前が点を取ってくれる安心感が出てきた心強さもありましたか?)そうですね。前の選手がいまウィジョを中心に点を取ってくれるので、それはすごく心強いですし、後ろはその分、粘って、粘りの守備をしてっていう意識は常にあります。

●MF小野瀬康介

残留を決められたのは嬉しいというか、そういうチームの目標に少しでも貢献できてよかったなって思います。(振り返って、途中から加入して、プレッシャーを感じていたところもありましたか?)自分にとっていろんなことがレベルアップした中で最初は戸惑いやいろんなことがありましたけど、徐々にいい意味で慣れていって自分もそのレベルに成長していけたし、今は自信を持ってやれているのを実感しています。(勝っていく中で感じたガンバの強さとは?)練習をやっていてもみんなうまいし、試合より練習の方が緊張するというかそういうのはありましたし、ついていくのに必死というか、レベルが高い中で練習をできているので僕にとってはありがたいと思っています。(今日の試合でもいい意味で余裕を持ってやれるようになってきた?)そうですね。最後のチャンスでも決めきれれば良かったですけど、狙いすぎて外したのはありますが、チームが勝ったからあれを外してもそんなに話題にはならないのかな、と思います。(加入した時はチーム状況も悪かった。小野瀬選手の貢献度も高い中で連勝していますが、自分自身成長したところは?)逆にチームが悪かったのがチャンスだと思って入ってきましたし、J1のレベルの中でしっかり判断をしながらプレーできましたし、今も自信を持ってやれているので、あとはもっと結果がついてきたらその先が見えてくるのかなって思います。

●DF米倉恒貴

(ナイスアシストでした。振り返ってもらえますか?)ウィジョしか見えなかったというか見ていなかったので、うまいこといったなって思います。(2ヶ月半ぶりくらいの先発でしたが。期する思いもありましたか)そうですね。いろんな状況での試合だったので難しかったところもありましたが、自分自身はその中でしっかり練習から準備していたし、いつチャンスがきてもいけるように準備していたので、それが結果につながったのかなと思います。その中で、残留は絶対のノルマだと思っていたので、それを自分が出た試合で決められたのはすごく嬉しいです。これまでみんなが頑張ってきてくれたからこその連勝だし、今日も全員が頑張ったからの勝利だと思うので、継続できて良かったです。途切れたらちょっと嫌だなってすごいプレッシャーを感じていたので…でも試合中は逆に開き直ってやっていました。(立ち上がりから気持ちを見せていたとはいえクロスがなかなかあわない時間帯もあった。ただ、なんとしてでも、という気持ちが最後まで伺えました)そうですね。そこは…ここでやっぱり連勝を止めたくなかったというのが一番にあったので。正直、これまで全然フルでやっていなかったので、体力がもたないだろうなっていうのも思っていて…でもこういう時に結果を出せないと、選手として次のチャンスもないとも思っていたので、しっかりアシストという結果を出せたのは良かったです。(それまで2度続けてファーにクロスをあげていました。もちろんFWの入り方もありますが自分の中で工夫したところは?)基本的にウィジョを狙っていたので、ずっと。それが最後、狙い通りにウィジョに合わせられた。最近はフィーリングが練習でも割といいなと思っていたので良かったです。

●GK東口順昭

(足は大丈夫でしたか?)大丈夫でした。いける感覚は持ちながらやれていました。(残留を決められたことについては)苦しい位置にいたときのことを考えたら、ほんまに素直に嬉しいですし、チーム一丸となって、コーチングスタッフ、選手、サポーターまで一丸となって乗り越えられた大きな壁だったと思います。それを自分たちの手でこうして達成できて、今シーズンに限っては…低いハードルですけど、全員で乗り切ったなっていう達成感はすごくあります。(残留のキーになったところは)ツネさん(宮本恒靖監督)になって、数試合勝てなかった試合というのが自分の中ではすごく大きな糧になったし、自分たちの試合の進め方で結果、勝ち点を失ったというところで、そこがしっかり修正できたら連勝ということになったので、そこの数試合というのは次につながる負け方だったり、追いつかれ方だったのかなって結果的には思います。(それによって、それまでなかった自信を抱けたと?)そうですね。たしか先制はしていたと思うし、それを90分間を通してやれなかったというのはありましたけど、積み重ねはできていたと思うので、そういうのが今は軸となって戦えていると思うので。あの時期というのはすごい大事だったなって思います。(クルピ監督の時も負ける試合はたくさんありましたが、それは負けたあとの監督のアプローチ、チームのアプローチが良かったということですか?)そうですね。監督、スタッフもそうだし、選手も自分たちでより考えていたし、いろんな方法がある中でどういう方向でいくということを示してくれたのもスタッフだったので、そういう部分は…どういう戦い方をするのかっていうところはわかりやすかったのかなって思います。

●MF遠藤保仁

(600試合目を白星で飾れたことについて)連勝を伸ばすことができて、非常に嬉しいですし、一番の目標が勝ち続けていくということと、今日に限っては残留がかかっていたので、その試合に勝てたのはいい結果だと思いますし、600試合目を勝てたのはより良かったのかなと思います。(残留が決まった瞬間は率直に?)終わった瞬間は残留が決まったというよりは、上にいくチャンスが広がったと思うので、残留が決まったというよりは、連勝が続いた喜びの方が大きかったです。(遠藤選手としてはここ最近はあまり残留は意識せずに戦ってきたということですか?)もちろん順位はみんな多少なりとも気にはしていました。ツネさん(宮本恒靖監督)が監督になった当初は残留が最大の目標であったのは間違いないと思いますし、それを決められたのも選手、スタッフのハードワークの賜物だと思います。ただ、徐々にチームが良くなっていくにつれて、みんなも自信を持ってプレーできるようになってきていたし…もちろん最大の目標は残留でしたけど、もっと高みを目指して最近はやっていて、それがいい結果につながっているんじゃないかなとも思っています。(リードした展開の中では押し込まれた時間もありましたけどどういうマインドで戦っていましたか?)基本的には相手を勢いづかせると非常に厄介な相手なので…先に点を取るまではちょっと我慢の試合が続いていましたけど、点を取ってからは落ち着いてボールを回せたとは思います。それは相手に対して前半ほどの勢いを感じられなかったこともありますが、我慢しながらは戦えていたし、そこで失点しなかったことで、しっかり終わらせることができたと思います。(残留を達成した中で残り2つ勝って10連勝で締めくくりたいという思いは強いですか?)そうですね。1つでも順位をあげたいですし、勝ち点差もさほど離されずに3チームくらいいるので、2連勝すればうまくいけばまだ順位をあげられるので。また少し期間があきますが、長崎戦はホームでの最終戦ですし、しっかり連勝を伸ばしていきながら少しでも上を目指していきたいと思います。(改めてJ1での600試合出場という数字に関して)もちろん嬉しく思います。長い間、コンスタントに出ないと達成できない数字だと思っていますが、まだ上の方がおられるので。そこをまた抜けるように、それを楽しみにやっていきたいし、自分のコンディションを落とさずにまずは残り2試合を戦えるようにしていきながら、また来年もやっていければと思います。(最初の花束贈呈の時には相手サポーターからの拍手も起きました。Jリーグの顔としてやってきたからこその拍手でもあったのかなと思います)湘南のサポーターの方にそうして祝福していただいたのはありがたいことですし、アウェイのサポーターの方から拍手を贈られることというのは滅多にないことなので、嬉しく思います。自分としては、今後、もっともっと中身のある試合を増やしたいと思うので、1つの通過点としてまたあらゆる努力をしてチームに貢献していきたいです。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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