<ガンバ大阪>走り続けた2015シーズン。 激戦を支えたコンディショニングの成功。

■『天皇杯連覇』でフィニッシュ。

激闘を続けたガンバ大阪の2015シーズンは、天皇杯優勝で幕を閉じた。元日の決勝戦、浦和レッズ戦まで実に60試合。チームとして初めてクラブワールドカップを戦った08シーズンの、61試合には及ばなかったものの、これは国内Jクラブでは最多を数える数字だった。

なぜ、ここまで試合数が膨らんだのか。答えは簡単。出場した全ての大会において上位を争ったからだ。3年ぶりのAFCチャンピオンズリーグ(以下ACL)では予選を首位で通過し、ベスト4に進出。リーグ戦では年間勝ち点で3位となりチャンピオンシップ出場を果たすと、決勝でこそ敗れたものの、2位の座を勝ち取った。

またACL出場のため予選が免除されたナビスコカップ決勝トーナメントでも昨年同様、決勝に進出。こちらも決勝戦で鹿島アントラーズに敗れたものの、その決勝戦以外は代表組が離脱する苦しい戦いを強いられながらも、総力戦で戦い切った。その他にも、2014年の天皇杯王者として出場した富士ゼロックススーパーカップや、同ナビスコカップ王者として出場したスルガ銀行チャンピオンシップといったタイトルマッチを戦い、締めくくりは冒頭に書いた天皇杯だ。チャンピオンシップでの戦いを通して再び結束力を強めたチームは、準決勝のサガン鳥栖戦を3-1で勝利すると、続く準決勝・広島戦も3-0で快勝。決勝戦では1シーズンで5度目の対戦となった浦和を2-1で征し、クラブ史上2度目となる『天皇杯連覇』を実現した。

「国内の主要タイトル3つを、全て2位で終えていたら、立ち直れないなと思っていました。10個シルバーを集めてもゴールドにはならないですから。最後の最後で、ゴールドのメダルを獲れたのは、選手、スタッフが最後まで力を合わせて戦った結果。感謝しています」

これは天皇杯を征した直後の、長谷川健太監督の言葉だ。その言葉にもあるように、確かにこれだけの試合数を戦い、ACLを含む、全戦いで上位争いを繰り広げても、その全てが「あと一歩」で終われば疲労感ばかりが色濃く残ってしまう。またMF今野泰幸が常々口にしていたように「準優勝では、歴史に名前を残すことはできない」というのも事実だろう。そう考えても、激動の2015シーズンを『タイトル』で締めくくられたことは、2016シーズンを迎えるにあたっても大きな意味を持つものになったはず。あとは2015シーズンで得た経験という財産をいかに結果に繋げていくかだろう。

■ケガ人の数はわずかに6%台に。

先ほどの「なぜ、ここまでの試合数が膨らんだのか」の答えはつまり、全大会で上位争いを繰り広げたから、ということになるが、では「なぜ、ここまでの試合数を戦えたのか」。それは1シーズンを通して、ケガ人が少なかったことが理由の1つに挙げられる。ガンバ大阪フィジカルコーチ、吉道公一朗氏によれば、元日の天皇杯を終えた時点でのケガ人の数は全体のわずかに6%台。所属選手の数で考えると、ケガ人は2人以下という計算になる。これは度重なる連戦、海外遠征も含めた移動を考えても驚異的な数字だ。吉道氏は言う。

「これだけの試合数を戦いながら、チャンピオンシップまで殆どケガ人を殆ど出さずに戦えたという点についてはフィジカル的には、おおむね、満足できるシーズンだったと思っています。また、ガンバ大阪では13年からピリオダイゼーションに基づいたフィジカルトレーニングを導入していますが、その目的の1つがケガ人を減らすことにあったと考えても、その効果を感じられるシーズンでした。ただ、これはあくまで監督、コーチングスタッフの理解があってのこと。結果が出ない時期などは特に、練習をしたくなるのが監督やコーチングスタッフですが、そういう時期も僕の考えを我慢強く受け入れてくださいましたから(笑)。またメディカルスタッフのサポートや、何より選手が常に精力的にトレーニングに取り組んでくれたのも大きかった。そう考えるとチーム全体の成果として、60試合を戦い切れたのだと思います(吉道氏)」

これについては、同トレーニング理論を15年以上前から提唱し続けているレイモンド・フェルハイエン氏も同様の考えを示している。現在、ワールドフットボールアカデミー主催の「サッカーのピリオダイゼーション」セミナー開催のため来日している同氏は、ガンバ大阪の躍進について言及する。

「近年、成功をおさめているガンバ大阪の躍進は私にとってもとても喜ばしいことです。ですが、その主な理由は、まず指導者と選手のポテンシャルが高いレベルにあることが第一の重要な理由で、ピリオダイゼーションはあくまで彼らを助けている要素の1つに過ぎません。なぜなら、指導者の質、選手の質がよくなければ、仮にピリオダイゼーションに取り組んでも、常にタイトルを争えるチームになることは難しいと考えるからです。つまり、ガンバ大阪は指導者、選手がこのトレーニング理論を正しく理解し、効果的に取り入れたことで、ケガ人を最小限に留め、より多くの試合をベストメンバーで戦うことができた。勝つ可能性を高められたんだと思います。もちろん、シーズン終盤にフレッシュな選手を多く備えることができたのは、このトレーニング理論の効果の1つだと言えますが、知識だけを取り入れても結果を得られる訳ではない。また、サッカーに保証はないと考えても、チームのフィットネスが上がり、ケガ人が減ることで勝つ可能性が高まっても、それが必ずしも結果に繋がるとも限らない。だからこそ、我々はより高い意識と目標を据えてチャレンジし続けるべきだと考えています(レイモンド氏)」

■より高みを目指して。

もちろん、その『チャレンジ』の必要性については吉道氏も感じるところだ。昨シーズンの戦いを振り返り、コンディショニングやケガ人の減少には手応えを語る一方で、課題を口にしているのはその証拠だろう。

「もう1つ上のステージでの戦いや明確にタイトルを獲得するために、という部分ではまだまだ課題に感じるところ、突き詰めなければいけないところは多いと思っています。ACLを勝ち抜くために、というのも、もちろんその1つですしね。またこれだけの連戦を強いられた中で、控えに回った選手やメンバー外になった選手のコンディショニングというところも再考しなければいけない。必然的に連戦になると、控え組みをメインにした練習試合を組める回数は減ってしまうという現状がある中で、それでも控え選手のコンディションの維持、向上を目指さなければ本当の意味での選手層の厚みには繋がっていかない。そういう意味ではもう少し個々のコンディショニングに目を配ってプランニングしていく必要性も感じています(吉道氏)」

それは今季、よりハードスケジュールが予想されることや、J3リーグ参戦が決まっているU-23チームの発足を踏まえてのことでもある。昨年の12月半ば、ガンバ大阪は「若い世代に実戦経験を積ませ、各選手のレベルアップを図ること。それによりチーム内の競争を促し、チーム全体のレベルアップ、強化に繋げること」を目的に、セカンドチーム『ガンバ大阪U-23』のJ3リーグ参戦を表明。正式にJリーグ理事会で承認されたが、それを踏まえて保有選手の増加や、選手によっては連日公式戦に帯同する可能性もあると考えれば、コンディショニング面での調整がより困難を極めるのは必至だろう。

「一昨年は天皇杯決勝が12月13日だったので、1ヶ月ほどオフをとれましたが、今年は昨シーズンが元日に終わり、1月17日が始動、翌日から沖縄キャンプですからね。休みがわずかに15日しかとれないと考えても、既に慌ただしさを感じますが、裏を返せば2週間しか休んでいない分、あまり重くコンディションづくりを考えなくてもいいのかな、と。もちろん、これも17日に選手がどんな状態で新シーズンを迎えるかにもよるので、選手の体の状態を見極めつつ、当然ながら監督やコーチングスタッフとも相談して、プランニングを…というか、既にその案は昨年末からずっと考え続けています(笑)。また、J3参戦も初めてのことですからね。そこも手探りでスタートすることになりますが、とにかく僕がするべきことは、選手のコンディションを常によりよい状態に保つことですから。その上で、昨年よりも少ない、5%以下にケガ人の数を留めながら、チームとしては今年以上の結果をとるために力を注ぎたいと思います(吉道氏)」

ガンバ大阪の2016シーズンは、現時点で2月14日に新スタジアムでのこけら落とし(対名古屋グランパス)にはじまり、2月20日にゼロックススーパーカップ(対サンフレッチェ広島)、2月24日にACLグループステージの初戦(対水原三星)を韓国の地で戦ったあと、2月27日にはJ1リーグ1stステージ開幕戦を迎えることが決まっている。その日程を見ての通り、スタートからいきなりのハードスケジュールが強いられるが、これはある意味、強豪チームだからこその嬉しい悲鳴でもある。その名誉に、いかに立ち向かい、どんな結果を手にするのか。昨シーズンの経験がどのようにチームに活かされるのか。新シーズンもガンバ大阪から目が離せそうにない。