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ファジアーノ岡山・DF加地亮、始動。

高村美砂フリーランス・スポーツライター

1月14日、ファジアーノ岡山の新体制会見に臨んだ加地亮の表情は晴れやかだった。ルーキー選手が緊張した面持ちで壇上にあがる中、加地亮には特別な緊張も、気負いも感じられない。新加入選手の中で一番最初にマイクを手に自身の持ち味、意気込みを語った際も、ガンバ大阪に所属していた時代からムードメーカーと知られるだけのことはあり、加地らしく『笑い』を盛り込みながら言葉を繋ぎ、会場を和ませた。

「ファジアーノ岡山にお世話になる事になりました、加地亮です。攻守両面でピンチを防ぎチャンスに多く絡むというところを持ち味にしているのでそのあたりをみてもらいたい。僕自身の目標としてはJ1昇格とかプレーオフ圏内に入るということではなく、本当に一日一日、自分に納得のいくサッカー人生を送れるよう充実した毎日過ごすことが目標です。あと、好きな食べ物はホットケーキです。AB型です。昨日は誕生日でした。ありがとうございます。」

プロサッカー選手として17年の月日を戦い、海外も含めて過去4度の移籍を経験してきたからというよりは、彼自身が積み上げてきた自身の『サッカー』に対する自信と充実感もあってだろう。かつ、国内でも、そして自身初の海外、チーバスUSAでもそうであったように、気負いすぎず、常に自分のやるべきこと、やれることを最大限でやり切ることを自身に求めながら、等身大の自分を示し続けてきた加地らしい言葉だった。

実のところ、昨年末、チーバスUSAのチーム解散が決まってからも『海外』でのプレーを模索してきた。それは、チーバスUSAで戦った約半年間に対しての充実感や、海外移籍によって手にした多くの刺激に魅力を感じていたからこそ。それもあって、メジャーリーグサッカーのドラフト制度による移籍も希望していたし、他にも様々なアクションも起こしていたと聞く。だが、それと並行して舞い込んだファジアーノ岡山からのオファーにも心を動かされる。決断は早かった。

「これまであまり縁のなかった岡山という街と人、FC東京時代に一緒に仕事をした長澤監督をはじめ、コーチングスタッフの方たちに対する興味が沸いた。ここでなら、自分なりにまたいろんなことを吸収して成長できるんじゃないかという考えがあった」

冒頭の彼の言葉にもあったように、会見の前日、加地は誕生日を迎え、35才になった。

言うまでもなく、サッカー界においては『若手』と呼ばれる年齢ではなくなったが、常日頃から「サッカーに年齢は関係ない」と繰り返し、自らの『成長』をテーマにプロサッカー生活を送ってきた加地。今回のファジアーノ岡山への移籍も、世間一般からはステージダウンの印象をもたれがちだが、彼にとってはあくまで『成長』のための決断だったと言う。実際、彼は移籍に際し、プロサッカー選手として、ここから先の更なる進化を胸に誓っている。

「サッカーに年齢は関係ないということを、口だけではなく、日々の練習、試合で示したいと思っているし、そのためには、肉体的にも、精神的にも、常にプロになったばかりの頃の気持ちのようなフレッシュさをもってサッカーに向き合いたいと思っています。その上で、プレーヤーとしても、人間としても、更に成長していきたいし、それが出来る自分だと信じています」

その言葉に嘘はない。いや、彼自身がこれまで、1プロサッカー選手として示し続けてきた姿、これだけの長きにわたるキャリアを築くに至るまでの“過程”を見てきたからこそ、そう信じられる。

ファジアーノ岡山・加地亮の更なる進化を楽しみにしている。

フリーランス・スポーツライター

雑誌社勤務を経て、98年よりフリーライターに。現在は、関西サッカー界を中心に活動する。ガンバ大阪やヴィッセル神戸の取材がメイン。著書『ガンバ大阪30年のものがたり』。

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