オニャンコポン。

 今年のクラシックは一度聞いたら忘れられない名前の馬がいる。

 一見、お遊びの珍名馬なのかと思いきや、いやいや、西アフリカのアカン語で『偉大な者』という意味があるという。

 今回はオニャンコポン号のオーナーであり、名付け親でもある田原邦男氏にその名の由来や愛馬の様子を伺った。

■2022年京成杯(GIII) 優勝馬 オニャンコポン

馬名にこめられた、たくさんの意味「日本で親しまれるように」

 オニャンコポンのオーナーである田原邦男氏はこれまで2008年秋華賞(GI)を勝ったブラックエンブレムなどを所有してきた。これまでの命名は英語のものが多かったが、今回は意識的に路線を変えたそうだ。

「せっかく日本で走らせていますので、日本の方々に親近感を持っていただけるように意識しました。言いづらくはなく、語感が良いものを考えていたところ、"オニャンコポン"というフレーズを知り、その意味を調べていくうちに気持ちが固まりました。」

京成杯の口取り写真。オニャンコポン号と田原邦男オーナー(左から3番目)らによる記念撮影の様子(写真:日刊現代/アフロ)
京成杯の口取り写真。オニャンコポン号と田原邦男オーナー(左から3番目)らによる記念撮影の様子(写真:日刊現代/アフロ)

 JRAの馬名申請では、アフリカ・ガーナの現地語アカン語で『偉大な者』としている。しかし、その名前にはさらなる他の意味や意図もこめられていたのだ。

 まず、オニャンコポンは西アフリカのアシャンティ民族の神話で創造神、天空神として登場している。その神話からの引用か否かは定かではないが、オニャンコポンという名は2021年9月に競走馬オニャンコポン号がデビューする以前から、漫画やアニメで大人気の『進撃の巨人』やゲームでは『モンスターストライク』にもオニャンコポンという名のキャラクターが登場しており、一部の方々にはすでにその名が親しまれていた。

 そして、その名の響きから即座に"猫"が連想されるが、「私自身も猫が好きだし、日本の方々は猫が好きな方が多い」のも命名へのこだわりのひとつだという。

 さらに、オーナー自身が1980年代に活躍した女性アイドルグループ「おニャン子クラブ」の全盛期をよく知る世代であることも影響しているそうだ。

 命名の意図は、それだけではない。

「今年は寅年です。トラはネコ科の動物ですし、西暦は2022年。"にゃんにゃんにゃんの年"という声も聞かれます。そういう意味でも、オニャンコポンが目指すのが2022年のクラシック戦線、というのもちょうどいい、と考えました。」

「あとは、私の所有馬はスタートがあまりよくない馬が多いので、スタートを"ポン"と出て欲しい、という意味も込められています。」

 日本の馬名は9文字以内と決められており、オニャンコポンはたった7文字だが、これほど深い深い意味と意図、そして愛情が込められていたのだ。

 京成杯ではオーナーの願いどおり、スタートを"ポン"と出て、スムーズなレース運びで優勝を決めている。

 そして、その馬名の響きの可愛らしさ、一方で重厚で威厳のある意味のギャップもあり、SNSではオニャンコポンの優勝にたくさんのファンが喜んだ。

「京成杯の優勝後、競馬を知らないファンの方も興味を持ってくださっている様子をみて、さらに嬉しくなりました。」

 オニャンコポンは、オーナーの馬名に込めた意図どおりの活躍をみせてくれたのだ。

オニャンコポンの名には猫好きの日本の方に親しまれるように、という意図もあった
オニャンコポンの名には猫好きの日本の方に親しまれるように、という意図もあった写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

「無事、母の父が勝った皐月賞、父が勝った日本ダービーに出走できれば」

 競走馬の馬主は、愛馬に対して単独で決定権を持てる作業が少ない。

「馬を買う、調教師を決める、馬名をつける、という3つは馬主が行いますが、そのほかは牧場や厩舎に委ねることがほとんどです。」

 オニャンコポンは2019年のセレクトセールで800万円で購入されたが、このとき、オニャンコポンに手を挙げたのは田原オーナーひとりだったそうだ。

「筋肉のしっかりした馬が多い中、オニャンコポンは他馬と比べたら細身の馬体でした。さらに父のエイシンフラッシュは種牡馬としての成績に目立ったものがなかったのです。

 近年、競走馬のセリの価格は上昇傾向で、予算が1頭あたり1000万程度の馬主にとっては厳しい状況になっています。その中で、リザーブ(あらかじめ設定された最低価格)で落札できたので嬉しかったです。」

2012年 天皇賞・秋 (G1) エイシンフラッシュ、優勝 デムーロ、膝をついて両陛下に敬礼
2012年 天皇賞・秋 (G1) エイシンフラッシュ、優勝 デムーロ、膝をついて両陛下に敬礼写真:アフロ

 その後、育成時代は「良い評価も悪い評価もとくに聞かれなかった」と、目立ったところのない様子だったそうだ。それは美浦の小島厩舎に入った後も続いたが、速い時計(1ハロン15秒を切る程度で走る状態)を出すようになってから「小島師から良い評価が出た」のだそうだ。

 ホープフルS(GI)は11着に終わったが「前走の百日草特別のあと、熱発したので、その影響もあり、少々調整が足りなかった」のも否めなかった。ホープフルSから中2週で今回の京成杯に挑むわけだが、2022年クラシック戦線に参加するために一番重要である賞金加算をクリアした。そして、父・エイシンフラッシュに初の産駒JRA重賞優勝という記録をプレゼントした。

 無事、2022年クラシック戦線への参加権利をほぼ手にしたオニャンコポン。しばらく休養したのち、春のGI戦線に挑む予定だそうだ。

「今週、山元トレセンに移動して休養します。9月にデビューしてから4戦していますので、疲れもあるでしょう。父のエイシンフラッシュはダービー馬、母の父のヴィクトワールピサは皐月賞馬。同世代の2頭は2010年クラシックをともに盛り上げており、そんな2頭が大好きでした。オニャンコポンの次走は未定ですが、無事にクラシックへ駒を進めてくれれば、と願っています。」

■2010年日本ダービー(GI) 優勝馬 エイシンフラッシュ

■2010年皐月賞(GI)  優勝馬 ヴィクトワールピサ