Yahoo!ニュース

【高松宮記念展望】雨と枠順が迷いを生む…スペシャリストと実力馬の戦い

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
2020年香港スプリントで初GI制覇を果たしたダノンスマッシュ(写真:REX/アフロ)

 3月28日15時40分、JRA中京競馬場で第51回高松宮記念(GI)が行われる。今年もフルゲート18頭が参戦。28日朝、中京競馬場の天候はまだ曇だが、予報ではこの後、雨が降る見込み。馬場状態は朝の段階では良馬場発表だが、高松宮記念までにどれだけ悪くなっていくかが気になる。

 注目の1番人気は2歳女王のレシステンシアだが、逃げ馬ということもあり真ん中あたりを希望していたが8枠16番と偶数だが外枠に入ってしまった。昨年12月に香港で初GI制覇を成したダノンスマッシュは7枠14番。以下、単勝1桁台は28日午前9時現在で5頭となかなかの混戦ムードだし、伏兵が上位に突っ込む可能性も大いにある。

 今年の高松宮記念は、枠順、馬場ともに波乱を予感させる一戦だ。

2021年高松宮記念枠順(筆者作成)
2021年高松宮記念枠順(筆者作成)

気になる天気と馬場状態

 今回、カギを握るのは当日の天気と馬場状態だ。

 高松宮記念の発走時刻である15:40の前後をYahoo!天気の雨雲レーダーで確認すると、すっぽりと水色で覆われている。予報によれば、中京競馬場付近は午前中は時折雨がパラつき、昼頃からは1時間あたり2~4ミリ程度の雨が降り続くようだ。昼以降、断続的とはいえ、この程度の雨量ならそこまで極端な馬場悪化はない、とみた。

 本日は柵を移動しBコースを使用。これにより、これまでの開催で大きな傷みがあった個所はかなりカバーされているが、2コーナー、3、4コーナー、およびホームストレッチの内ラチ沿いはカバーしきれない傷みが残る。傷んだ馬場に雨が降り、競馬で使用されると傷みは加速するが、これについても、高松宮記念発走時点なら極端な影響はない、と見込まれる。

2020年高松宮記念(GI) 優勝モズスーパーフレア(1位入線クリノガウディ―は4位降着)

人気レシステンシアは道悪OKも課題は外枠

 当日9時現在の単勝人気を確認しよう。

 1番人気はレシステンシアで3.6倍。続く2番人気はダノンスマッシュで5.4倍。そのあとはインディチャンプ6.7倍、ライトオンキュー6.8倍、ラウダシオン7.2倍と団子状態だ。10倍台の6、7番人気はモズスーパーフレアが11.2倍、ダノンファンタジーが17.1倍。以下、20倍台へと続いている。

 発走時も1番人気を背負うであろうレシステンシアは前哨戦の阪急杯を圧勝した。もともと2歳で阪神ジュベナイルフィリーズ(GI、芝1600m)を勝った2歳女王。これまで1400~1600mのレースばかり走っており、1200m戦は初めてなのは気になるが、前走レコード勝ちした阪急杯の1200m通過タイムが1分7秒4と芝GI1200mで勝ち負けできる数字であることから大きな心配はないとみている。

 雨が想定以上に降り続いたとしても、昨年2着だった桜花賞(GI、芝1600m)は不良馬場の中でもかなり悪い状態であった。それでも2着とはいえ結果を出せるのだから、高松宮記念で予想される馬場状態なら十分力を出せるだろう。

 課題は8枠16番という外枠と、武豊騎手負傷で急きょ初コンビを組むことになった浜中騎手との相性だが、いずれも問題なく対応できるだろう。

2019年阪神ジュベナイルフィリーズ(GI) 優勝レシステンシア

2020年桜花賞 2着レシステンシア

国内初GI制覇を狙うダノンスマッシュ

 道悪OKのレシステンシアと比較すると、ダノンスマッシュは決して歓迎はしていない。戦前、ダノンスマッシュ陣営と共にこのあたりも占ったが、やはり「昼からの雨ならそれほど馬場は悪化しないだろう。それならこなせる」(岩本助手)との見解だったが、やはり馬場が良いにこしたことはないはずだ。

 ダノンスマッシュの強みは1200のスペシャリストである、ということだ。レシステンシアは計算上では1200mのGIでも通用する力がある、といえる。後述のインディチャンプはマイルでは圧倒的な実績を持つスペシャリストだが、芝1200mは経験すらない。

 また、年を重ねるごとに積み上げた成長力が素晴らしい。高松宮記念へのチャレンジは3年連続だが、過去2戦とは比べものにならないくらい安定して力を発揮できる状態に成長している。中京芝1200mというコースも昨年秋にセントウルS(GII)で優勝しておりので問題ない。

2020年香港スプリント(GI) 優勝ダノンスマッシュ

マイル王のインディチャンプは電撃の6ハロンに対応できるか

 一昨年の春秋マイル王であるインディチャンプの実力は目を見張るものがあるのだが、今回の舞台は芝1200mというのが問題だ。

 1200mと1400mの差はたった200m(=1ハロン)だが、レースの流れは別ものである。

 1200mは距離が短い分、ちょっとしたロスが致命傷となる。道中にひと息入れられる1600mではレース中にリカバリーできるようなことも、1200mでは極めて難しいだろう。"電撃の6ハロン"とも呼ばれる独特な1200m、この"忙しすぎる"の流れに慣れない馬がどこまでついていけるか。これが全てかと察する。

 インディチャンプを管理する音無師は「馬に距離が変わることを教えるのは難しい。スタートが決まって中断をキープし、この馬の瞬発力が発揮できれば」と話している。

 またインディチャンプは過去の実績から近い将来種牡馬入りするのは確実とみられるが、1200mを勝てば種牡馬としての価値はさらに上がる。そのためにもここを勝ちたい、という狙いもあっての出走とみられる。

2021年高松宮記念 インディチャンプ音無師インタビュー

狙いたい1200mのスペシャリスト

 先ほど、ダノンスマッシュの項で1200のスペシャリストの話を書いたが、今回のメンバーの中で芝1200mを中心に走ってきた実績があるのは、以下の馬たちだ。

ダノンスマッシュ

ライトオンキュー

モズスーパーフレア

ミッキーブリランテ

エイティーンガール

セイウンコウセイ

アウィルアウェイ

トゥラヴェスーラ

 今回は馬場が少し悪くなる可能性もあるため、人気薄の馬が突っ込む可能性も多いにあるとみている。

 道悪はむしろ得意なライトオンキュー、昨年の覇者で道悪も問わないモズスーパーフレア、2017年の覇者でこの季節が得意なセイウンコウセイ、補欠繰り上がりのアウィルアウェイ等。

 ポテンシャルが高い馬がさらに1200m戦に新たな適応をみせるのか、スペシャリストたちが得意を生かして幅をきかせるのか。そして、15時からの天候と馬場状態にも注目しながら、たった70秒の熱き戦いを見守りたい。

2017年高松宮記念(GI) 優勝セイウンコウセイ

ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

花岡貴子の最近の記事