Yahoo!ニュース

日本騎手クラブ会長の武豊騎手ら「こういう時こそ困難な状況に立ち向かい、乗り越えなければ」

花岡貴子ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家
4月4日、阪神競馬場で取材に応じる武豊騎手(提供:日刊ゲンダイ)

武豊騎手「売得金の一部は国に納付、こういう時にこそ意義を感じています」

 4月5日現在、中央競馬は無観客での開催が続いている。この状態での開催は、いまのところ皐月賞(GI、中山競馬場)が行われる4月19日まで続くことが発表されている。

 このように世界中が混乱している中、日本騎手の第一人者であり、日本騎手クラブ会長である武豊騎手は4日の最終レース後、阪神競馬場において現在の考え等を語った。

「競馬は大事な娯楽で、今は自宅でもテレビやラジオ等を通じて楽しんでいただけています。そのためにも競馬を提供していかなければならないという気持ちを強く持っています。我々騎手だけでなく"競馬人"の皆がそう思っています。」

 そして、改めて"中央競馬の意義"についても述べた。

「競馬の売得金(馬券の発売金から返還金を引いたもの)の一部は国に納付しており、こういう時にこそ意義を感じています。」

 中央競馬の売上は、馬券100円につき10円が第一国庫納付金として国庫に納められている。国庫納付金は国の一般財源に繰り入れられ、畜産振興や社会福祉に充てられているのだ。

 平成30年度の第一国庫納付金は2805憶8781万4500円だった。それ以外にも、運営益の一部も第二国庫納付金として納められている。

「こういう状況だからこそ競馬を続け、安全対策を強化して、万全の態勢で困難な状況に立ち向かって乗り越えていかなければいけません。いいレースをするので応援して下さい。」

 4月12日には阪神競馬場で伝統の一戦である桜花賞(GI)、4月19日には中山競馬場でクラシックの第一関門である皐月賞(GI)が行われる予定になっている。武豊騎手は桜花賞では2歳女王のレシステンシアに騎乗予定だ。無事、競馬が行われることを願ってやまない。

福永騎手「ストレス解消や気晴らしになれば」

 また、日本騎手クラブ副会長である福永祐一騎手も現状を踏まえて中央競馬の意義について語っている。

「世界的にこういった情勢の中、競馬が毎週行われているということは我々関係者にとっても当たり前のことではないと思っています。

 無観客競馬が大前提ですが、誰も直面したことのない大きな騒動の中、改めて競馬という公営競技は国が提供する娯楽であるということです。外出禁止要請などが出て国民の皆さんが大きな不安とストレスを抱えている中で、売上が微減で収まっているということをみても、まさに公営競技の存在意義がこういった時にあるのではないかと感じています。

 競馬は生活していく上では必要ないものだとは思いますけれども、こういった閉塞した環境下の中で少しでもストレス解消や気晴らしになるのであれば。僕らはそれに対して全力で努め、国民の方々に提供しなければならない。そういう主義で今、競馬に臨んでいます。」

日本騎手クラブ副会長である福永祐一騎手(筆者撮影)
日本騎手クラブ副会長である福永祐一騎手(筆者撮影)

 

「騎手からひとりも感染者を出さないよう徹底していかなければ」

 先日、JRA職員の新型コロナウイルスへの感染が確認された。これに伴い、この職員と一緒にレースを観戦した3騎手は"濃厚接触者ではない"ながらも、疾病予防措置として4月4日、5日の騎乗を取りやめた。

 中央競馬に騎乗する騎手たちは週末は一定期間調整ルームと呼ばれる専用の施設で過ごす義務がある。ここで騎手たちは食堂や風呂などで多くの時間を共に過ごすため、騎手同士が濃厚接触者に該当する恐れが出てくる。騎手が新型コロナウイルスに感染した場合、競馬開催の続行が危ぶまれるのはこのためだ。

「日本騎手クラブとしては、騎手からひとりも感染者を出さないように徹底していかなければいけないと思っています。その予防策は競馬会、調教師会、馬主会、すべての関係各位と協力して競馬が続けていけるように注意していきたいと思います。」(福永祐一騎手)

取材も日を追うごとに厳戒態勢が高まる

 日を追うごとにトレセンや競馬場での厳戒態勢が強まっている。

 なお今回の記事の武豊騎手の写真は日刊ゲンダイより提供いただいた。普段なら各社のカメラや記者がこぞって取材に参加するのだが、この日は代表者が撮影して提供するかたちをとっている。新型コロナウイルスの問題にある程度の見通しが立つまではこのような制限が続くのかもしれない。それでも、取材が続けられるだけでもありがたい、というのが取材陣のひとりとしての正直な気持ちだ。

騎手への取材も一定距離を保って行われている(提供:日刊ゲンダイ)
騎手への取材も一定距離を保って行われている(提供:日刊ゲンダイ)
ライター、脚本&漫画原作、競馬評論家

競馬の主役は競走馬ですが、彼らは言葉を話せない。だからこそ、競走馬の知られぬ努力、ふと見せる優しさ、そして並外れた心身の強靭さなどの素晴らしさを伝えてたいです。ディープインパクト、ブエナビスタ、アグネスタキオン等数々の名馬に密着。栗東・美浦トレセン、海外等にいます。競艇・オートレースも含めた執筆歴:Number/夕刊フジ/週刊競馬ブック等。ライターの前職は汎用機SEだった縁で「Evernoteを使いこなす」等IT単行本を執筆。創作はドラマ脚本「史上最悪のデート(NTV)」、漫画原作「おっぱいジョッキー(PN:チャーリー☆正)」等も書くマルチライター。グッズのデザインやプロデュースもしてます。

花岡貴子の最近の記事