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【若者の立候補意識調査】被選挙権も18歳に引き下げると、45万人の若者が立候補する

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

被選挙権も18歳に引き下げると45万人の若者が立候補する

2000年から選挙権年齢・被選挙権年齢引き下げと政治教育の充実から若者の政治参加を促進しようと活動してきたNPO法人Rights(代表理事:高橋亮平)は、2019年9月、全国の18〜25歳を対象に、若者の政治意識や立候補意欲に関するアンケート調査を行い500人からの回答を得た。

NPO 法人 Rights 若者の立候補意欲など政治意識に関する調査

被選挙権を持たない18〜24歳の407人に対して、「もし被選挙権年齢が引き下げられ18歳から立候補できればあなたは立候補しますか?」との問では、2.7%が、「すぐにでも立候補する意思がある」と答えた。

総務省による最新の2018年10月1日現在の人口データでは、18〜24歳の人口は8,778千人となっており、割返して考えると、被選挙権年齢を18歳まで引き下げた場合、23万7千人がすぐにでも立候補したいと思っていることを示した。

今回のアンケート調査では、「すぐにでも立候補する意思がある」と答えた若者に、「将来的に立候補する意思がある」と答えた若者を加えると5.2%の若者が「立候補意思がある」と答えており、「もしかしたら立候補するかもしれない」という若者まで加えると10.1%の若者が立候補の可能性の意思を示した。

年齢別人口に割返して考えてみると、日本全体で45万3千人の若者が将来的な立候補意識を示し、88万4千人の若者が立候補の可能性を示したことになる。

図表1: 被選挙権年齢が引き下げられた際の自身の立候補に関する意識調査(18-25歳)

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(出典)NPO法人Rights調査2019より筆者作成

20歳までの引き下げでも16万人は「すぐにでも立候補したい」

今回のアンケート調査は、被選挙権年齢が引き下げられた際の影響や社会的効果について考えるために行ったものだが、被選挙権年齢の引き下げは、18歳まで引き下げられなくても、20歳まで引き下げられるだけでその影響はある。

対象者を20歳から24歳の326人に絞って今回の結果を見ても、「すぐにでも立候補する意思がある」という可能性がある若者は15万5千人(2.5%)、「将来的に立候補する意思がある」という層まで加えると33万人(5.2%)の若者が、「もしかしたら立候補するかもしれない」という層まで加えると62万1千人(9.8%)の若者が立候補の可能性を示していることになる。

必要な技能・教養を養成し費用負担が減ればさらに立候補する若者は増える

図表2: 立候補する意思がない人にとって弊害になっている要因(18-24歳)(複数回答あり)

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(出典)NPO法人Rights調査2019より筆者作成

今回の調査では、同時に、「どちらかというと立候補する意思はない」、「まったく立候補する意思はない」と答えた方を対象に、その理由についても複数回答ありで聞いている。その結果、「立候補する意味がわからない」と「政治家になれる自信がない」が44.2%と最も高かった。

注目すべきは、「立候補にかかる費用が高い」が24.3%であったことである。立候補に否定的だった層の中の約1/4の方が、立候補しないハードルになっているのが費用負担であると言っているわけだ。逆説的に捉えれば、費用負担さえ軽減できれば、立候補にやぶさかではない層はさらに増える可能性もあるということになる。

「政治家に必要な技能・教養がない」と思っている方も36.6%と1/3以上となっており、あらためて主権者教育やシティズンシップ教育の必要性も感じたほか、「政治家への信頼度が低い」も30.4%あるなど寂しい結果も明らかになった。

図表3: 立候補する意思がない人にとって弊害になっている要因(25歳)(複数回答あり)

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(出典)NPO法人Rights調査2019より筆者作成

こうした立候補する意思がない人にとっての弊害になっている要因について、現時点で既に被選挙権を持つ25歳でも見てみると、「政治家に必要な技能・教養がない」(32.3%)よりも「立候補にかかる費用が高い」(38.5%)と答えた人の割合が高くなっている。

政治家になりたいという若者が少ないなどと指摘されることもあるが、こうした選挙制度の改善や立候補への環境整備を進めることで、被選挙権を既に持つ若者の立候補を増やす可能性も示しているように思う。

3人に1人が「10代の候補者も投票の選択肢に入れる」と回答

図表4: 10代が立候補した際に投票の選択肢に入れるか

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(出典)NPO法人Rights調査2019より筆者作成

これまでも若者が政治への関心を持てない理由として、同世代の政治家が少ないことを上げることを紹介したことがある。

今回、調査にあたってあらためて18〜25歳の若者に、18歳被選挙権が実現した場合、「10代の候補者は投票先の選択肢の1つに入るか」について質問したところ、選択肢に入れないと答えたのはわずか21%だった。全体の49%は、わからないと回答しているが、あらためて若者にとって若い候補者は投票先として選択肢になることも見えてきた。

立候補者不足は、被選挙権年齢引き下げで即解消される

今年4月、第19回統一地方選挙が行われ、全国で立候補者不足から無投票の選挙が続出したことが話題になった。

道府県議選では、総定数2,277に対して3,062人が立候補したものの、改選となった41道府県で計612人が無投票での当選が決まり、1951年以降で過去最高となった。

同様に市議選が無投票になったのは11市、計182人の当選が無投票で決まった。

さらに切実なのは町村議選で、93選挙区の計988人が無投票での当選となり、総定数に占める割合は23.3%と過去最高となったほか、8町村議選では定数割れとなった。

こうした立候補者不足は、とくに地方においては大きな課題になっており、一方で、担い手を増やすために、地方議員の年金制度を充実させようというおかしな取り組みがはじめられようとしている。

今回の調査で明らかになった、被選挙権年齢引き下げによる潜在的立候補者が最低でも24万人がすぐにでも立候補したいと表明し、45万人の若者が将来的な立候補意識を示したことは、これからの日本社会やとくに担い手不足が指摘される地域社会の活性化を考えるにあたり、大きな可能性を示したのではないだろうか。

政治家たちには、自分たちの保身や、党勢拡大の力学ではなく、これからの未来を担う人材が活躍する場を創るという側面からも、懸案となっている「被選挙権年齢引き下げ」について、是非、実現に向けて全力を尽くしてもらいたいと思う。

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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