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データでわかった「三ツ星議員」を公開する

高橋亮平日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

任期中に国会でほとんど発言していない議員がいる

NPO法人「万年野党」では、国会議員の本会議や委員会での質問回数、質問主意書提出数、議員立法提案数、衆議院はこれに加えて質問時間数を含め、国会議員の活動データとして集積し、活発に活動した議員をそれぞれのカテゴリーごとに☆を付けて評価している。国会議員に選ばれながら、任期中に国会でほとんど発言していない議員がいる。それもかなりの数が・・・。そんな事実に気付いた事が、『国会議員三ツ星データブック』プロジェクトを始めるキッカケだった。多くの方が思っている「TVに出ている議員が一流」というステレオタイプをなくすためにも、データから国会で積極的に活動している議員はどんな議員かと見ていく事にしよう。

現在行われている通常国会は継続中で、まだデータが出揃っていないため、昨年の通常国会である第183国会と昨年末に終わった直近の臨時国会である第185国会のデータから国会における活動について見ていく事にしよう。

『国会議員三ツ星データブック』では、衆参ともに議員数の1割程度を目安とし☆を一つ付ける様にしており、例えば、183国会における衆議院では、質問回数16回42位までの49人、質問時間374分48位までの48人、議員立法3回15位までの42人、質問趣意書3回11位までの11人に、参議院では、質問回数16回22位までの25人、議員立法2回17位までの23人、質問趣意書3回13位までの18人に☆をつけた。これに加えて、大臣、副大臣、政務官など政府の役職や委員会の委員長などについていると実質的に質問機会なども少なくなる事から、こうした役職についているだけで、☆を一つ付ける事とし、最大☆3つになる様に衆参全国会議員を評価した。

意外にも最も質問回数の多い政党は自民党

今回は特に、質問回数に焦点を当てながら見ていく事にしよう。

第183国会の衆議院議員1人当たりの平均質問回数は4.9回なのだが、質問回数1位の笠井亮(共産・比東京)は1人で66回も質問している。2位の塩川鉄也(共産・比北関東)が47回、3位の高橋千鶴子(共産・比東北)が38回と、この3人だけで1回の議会で151回も質問しており、質問している議員と質問していない議員との格差が大きい事が分かる。また、衆議院の場合、上位3位までが全てが共産という結果にもなった。ただ、質問回数で☆を獲得した49人の政党内訳を見ると、みんな11人、維新10人、民主9人と並び、共産は7人しかいない。逆に与党の自民も5人、公明2人入っており、生活5人も含め、そこまで極端な結果にはなっていない。

参議院の議員一人当たり平均質問回数は5.7回と衆議院よりやや多い。1位は福島みずほ(社民・比例)の34回、2位は荒井広幸 議員(改革・比例)の29回、3位は田村智子 議員(共産・比例)28回と、回数も政党の偏りも衆議院ほど極端なものにはならなかった。☆を獲得した22人の政党内訳は、みんな6人、共産5人、生活5人、みどりの風3人、社民2人、民主1人、公明1人、維新1人、改革1人、無所属1人となっており、各党のバランスがとれている印象があるが、一方で、自民党議員は1人も☆を獲得する事ができなかった。

ちなみに、第185国会は臨時国会のため質問回数はすこし少なくなり、衆議院では1位の玉城デニー(生活・比九州)が23回、2位の高橋千鶴子(共産・比北関東)が20回、3位の赤嶺政賢(共産・比九州)が19回、参議員では、福島みずほ(社民・比例)、室井邦彦(維新・比例)が14回、井上哲士(共産・比例)が10回となっている。

図表1:衆参議員数・質問回数政党別割合<第183国会(通常国会)・第185国会(臨時国会)>

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政党ごとに合計質問回数を見ると、また違った傾向も見えてくる。

図表1を見ると、衆議院は、自民が517回と最も質問回数が多い。次いで民主の483回、維新450回、みんな288回、共産259回、公明204回、生活138回、社民10回、大地1回と並び、無所属が7回となっている。参議院は、323回の民主が最も多く、以下、みんな196回、自民183回、公明146回、生活128回、共産123回、社民76回、み風64回、維新51回、改革41回、無所属が35回となっている。質問回数で評価すると、野党議員の方が積極的に質問をしているという印象もあるが、実際に政党の総数で見ると、必ずしもそうではない事が分かる。ただ、衆議院では最も多く質問している自民も、議員数で61.3%占めながら、質問回数では1/3程度の21.9%にしか過ぎず、必ずしも議員一人ひとりが積極的に質問をしているという訳ではない事も分かる。

2013年の通常国会である「183国会」と臨時国会の「185国会」とで回数を比較して見える事もある。

衆議院は、183国会と185国会で大きな差はなかった。しいて言えば、自民が21.9%(1位)から12.4%(4位)になっている事が挙げられるが、この背景には、185国会から質問回数のカウントに議員立法の回数と重なる提案説明を除いた事もある。一方で、参議院では自民が増えている。183国会と185国会の間に参院選があり、所属議員が増えているという事もあるが、183国会で13.4%(3位)だったものが、17.3%(2位)へと増加している。☆獲得議員数で見ると1人もいない事になっていた自民も、こうして政党ごとの総数で見ると、多くの質問をしている事が分かる。逆に言えば、大政党に所属している議員は、これだけ質問回数が多くても、議員数が多過ぎるために、なかなか質問機会が回って来ないという構造の問題も見えてくる。183国会から185国会で、目立って増えたのは、維新。3.7%(9位)から一気に3倍近い10.7%(6位)になった。また共産も9.0%(6位)から12.3%(4位)へと上昇している。

衆議院の中で最も増えたのは、維新で、19.1%(3位)から22.3%(2位)へと浮上。次が生活で5.9%(7位)から8.2%(7位)と順位は変わらないものの、1.5倍近くポイントを増やした。

2013年度に三ツ星を獲得した18議員らを表彰する

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今回は、文字数の関係もあり、質問回数についての一部しか書く事が出来なかったが、『国会議員三ツ星データブック』の中では、この質問回数に加え、質問主意書提出回数、議員立法提案回数なども含め、国会での活動データと共に、そのデータからそれぞれについて見ていくコラムについても書いている。先日出版した昨年7月から12月の間に行われた臨時国会を対象にした最新の『184.185国会版 国会議員三ツ星データブック』は、Amazonでの販売も開始されたほか、国会にお越しの際等には、衆議院第一議員会館・第二議員会館の売店でも販売している。図書館流通センターからもストックブックに採用されたとの通知もいただいたので、是非みなさまには、購入や最寄りの図書館への取り寄せの働きかけなどについてもしてもらえればと思う。

今回紹介したこの『国会議員三ツ星データブック』の中でも、最も積極的に活動している議員として評価しいている「三ツ星議員」が、2013年に行われた「第183国会」と「第185国会」で、18人いる。

この18人の「三ツ星議員」について、5月26日に行われる『万年野党“結党”大会』で表彰したいと思っている。

中でも、大熊利昭(衆・みんな・比東京)と、重徳和彦(衆・維新・比東海)の2名は、183国会・185国会と2回連続で、三ツ星を獲得している。また、柿沢未途(衆・みんな→結い・東京15)と、中西健治(参・みんな・神奈川)の2名は、183国会で三ツ星を獲得している他、先月末まで実施していた質問の「質」を評価する『国会議員質問力評価』でも上位議員に選ばれた。『国会議員質問力評価』の最終結果については、また改めて紹介する事にしたい。その他の三ツ星議員は、183国会が、赤嶺政賢(衆・共産・比九州)、今井雅人(衆・維新・比東海)、小池政就(衆・みんな→結い・比東海)・篠原孝(衆・民主・長野1)、辻元清美(衆・民主・比近畿)、畑浩治(衆・生活・比東北)、荒井広幸(参・改革・比例)、谷岡郁子(参・み風・愛知)、185国会が、後藤祐一(衆・民主・比南関東)、玉木雄一郎(衆・民主・香川2)、長妻昭(衆・民主・東京7)、柚木道義(衆・民主・比中国)、吉川元(衆・社民・比九州)、福島みずほ(参・社民・比例)となっている。

このランキングは、これまであまり知る機会のなかった国会議員の国会での活動について、国民のみなさんが分かりやすい形、興味を持てる形で提供することで、国会議員も国民の目を意識し、国会での活動が活性化されればという試みである。

『万年野党“結党”大会』には、田原総一朗、宮内義彦、竹中平蔵、磯山友幸、高橋洋一、原英史の6氏に加えて、新たに、野村修也 中央大学法科大学院教授・弁護士、ロバート・フェルドマン モルガン・スタンレーMUFG証券株式会社・チーフエコノミスト、八代尚宏 国際基督教大学客員教授も参加する事になった。是非、『万年野党“結党”大会』にも足を運んでいただき、こうした「三ツ星議員」たちを直に見て頂き、国会議員の見方を変える一つのキッカケにしていただければと思う。

特定非営利活動法人「万年野党」

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Twitter:  @yatoojp

事務局長 高橋亮平

日本政治教育センター代表理事・メルカリ経営戦略室政策企画参事

元 中央大学特任准教授。一般社団法人生徒会活動支援協会理事長、神奈川県DX推進アドバイザー、事業創造大学院大学国際公共政策研究所研究員。26歳で市川市議、全国若手市議会議員の会会長、34歳で松戸市部長職、東京財団研究員、千葉市アドバイザー、内閣府事業の有識者委員、NPO法人万年野党事務局長、株式会社政策工房研究員、明治大学世代間政策研究所客員研究員等を歴任。AERA「日本を立て直す100人」に選ばれた他、テレビ朝日「朝まで生テレビ!」等多数メディアに出演。著書に『世代間格差ってなんだ』(PHP新書)、『20歳からの社会科』(日経プレミアシリーズ)、『18歳が政治を変える!』(現代人文社)ほか。

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