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【高校女子野球】クラーク仙台に5期生8人が入学。女子硬式野球の東北連盟も創設へ

高橋昌江フリーライター
東北初の女子硬式野球部であるクラーク仙台。5期生8人が入学した(筆者撮影)

 宮城県のクラーク記念国際高校仙台キャンパス(以下、クラーク仙台)で8日、入学式が行われた。2018年4月に、東北地方で初めて創部された女子硬式野球部には5期生8人が仲間入り。真新しい制服に身を包み、引き締まった表情を見せた。

■新入生代表の言葉で「日本一」を誓う

 クラーク仙台の入学式では、69人の新入生ひとりずつに入学許可証が手渡された。「新入生誓いの言葉」では、女子硬式野球部の海野輝夏(てるか)が「これから始まる3年間の入り口に立った今日、心は期待と希望に満ちていますが、同時に不安と緊張でいっぱいです。新たな経験をしていくにあたり、壁にぶつかり、立ち止まってしまうことがあると思います。それでも、決して諦めることなく、新たに出会ったたくさんの仲間たちと手を取り合いながら、少しずつ前に進めるよう、努力していきます」と堂々とスピーチした。

 また、「私は野球の試合でチームの勝利に貢献できるように、嫌なことから逃げず、どんなことにも一生懸命、取り組めるようにしたいです。また、チーム目標でもある日本一を達成するために仲間と協力し合いながら、毎日、全力で頑張りたいです」と壇上から初の全国制覇に意欲を見せた。入学式に続いて行われたウェルカムセレモニーでは女子硬式野球部の2、3年生がユニホーム姿でステージに登場。試合前に行う元気な円陣を披露し、真ん中から生徒会長が登場してメッセージを送る演出に一役買った。

「新入生誓いの言葉」を述べる海野。内野、投手、さらには捕手としても期待される。兄・卓人さん(上武大)は聖光学院(福島)で主軸を打った(筆者撮影)
「新入生誓いの言葉」を述べる海野。内野、投手、さらには捕手としても期待される。兄・卓人さん(上武大)は聖光学院(福島)で主軸を打った(筆者撮影)

■楽天ジュニア最終選考に残った2人が加入

 女子硬式野球部には5期生となる8人が入学・入部した。その中で、特別な思いを持って高校野球をスタートさせる2人がいる。柴田栞奈(かんな)と内田梨絵瑠(りえる)。ともに小学6年の時、NPBジュニアトーナメントに出場する「楽天ジュニア」のセレクションに周囲の勧めで参加し、最終選考まで残った。残念ながらメンバーには選ばれず、同じユニホームに袖を通す機会は訪れなかったが、高校でチームメイトになることができた。

 柴田はクラーク仙台の地元・宮城育ち。中学では女子軟式のクラブチーム「宮城デイジーズ」でプレーし、昨年の全国大会では8強入りした。内田は岩手県盛岡市の出身。中学時代は滝沢いわてリトルシニアで男子選手と競い、女子硬式野球チームにも所属した。

 2人はクラーク仙台の体験会で再会した。内田は別の高校への進学を考えていたが、柴田の「クラークで一緒にやろう」という一言に心を動かされたという。

「(柴田)栞奈と一緒に日本一を目指したいなと思いました。また、東北地方から他の地域の強い高校を倒して優勝したいという思いもありました。先輩も元気で、気さくに話しかけてくださって。みんな、すごく上手なので、自分もこうなりたいと思いました」(内田)

 練習会に参加してクラーク仙台への進学を決め、内田を誘った柴田は「梨絵瑠がクラークに決めてくれて心強かったです」と笑顔。「一緒に日本一を獲りたいなと思っています。どんな形でもチームに貢献し、チームのためにプレーできる選手になりたいです」と意気込む。

楽天ジュニアのセレクションで出会った柴田(左)と内田。最終選考で落選となったが、高校で同じユニホームを着ることになった(筆者撮影)
楽天ジュニアのセレクションで出会った柴田(左)と内田。最終選考で落選となったが、高校で同じユニホームを着ることになった(筆者撮影)

■森山監督「縁を大事に」

 右投手の柴田は制球力が持ち味だ。現在のクラーク仙台は投手力にやや不安があり、即戦力として期待される。チームの練習には中学野球を終えた昨年11月から参加しており、「早く入学してたくさん練習をしたいと思っていたので、やっと入学できてすごく嬉しいです」とうずうずしている様子。それでも、まずは体づくりから。3年間、チームの柱となり、高校卒業後の活躍も目指す。

 左投げの内田は、シニアではセンターがメイン。投手も務めたほか、左利き用のキャッチャーミットをはめて、マスクもかぶったという。複数ポジションを守ることを視野に入れながら、まずはミート力の高い打撃と俊足を生かした外野守備を磨いていく。楽天の元選手で、一軍、二軍の外野守備走塁コーチを務めた経験がある森山周監督は「女子野球はファースト、セカンド、ライトの間にポテンと落ちる打球が多い。それを捕ってほしいですし、ライトゴロもたくさん取ってほしいですね」と期待する。

 東北初の女子硬式野球部として、2018年4月に誕生したクラーク仙台は地元のプロ球団・楽天と連携したチーム作りをし、創部1年目から全国大会で準優勝するなど実績を作ってきた。柴田、内田ともに小学生の時は楽天との縁に恵まれなかったが、楽天が携わる高校で野球を続ける。「これも何かの縁。私もその縁を大事にして、勝たせてあげられるようにしたいですね」と森山監督。2人が参加した楽天ジュニアの選考に関わった、4年前の楽天アカデミーのコーチ陣には印象をリサーチ済みで、柴田に関しては「コントロールがとにかくよかった」と聞いている。内田についても「いろんなアカデミーコーチが覚えていて、『いい選手だよ』と言っています」と楽しみな様子だ。

新入生8人が加わり、今年のクラーク仙台は3学年合わせて33人。東北地方の高校女子野球のパイオニアとして地域を牽引する(筆者撮影)
新入生8人が加わり、今年のクラーク仙台は3学年合わせて33人。東北地方の高校女子野球のパイオニアとして地域を牽引する(筆者撮影)

■東北地方に女子硬式野球部が続々誕生

 年々、チーム数が増え、盛り上がりを見せる高校女子野球。昨夏は全国大会の決勝が甲子園で開催され、この春も選抜大会決勝が東京ドームを舞台に行われた。

 東北地方では4年前にクラーク仙台が産声をあげたのを皮切りに、2020年に花巻東(岩手)でも創部され、今年は弘前学院聖愛(青森)、惺山(山形、旧山本学園)、学法石川(福島)でも始動する。昨年度は盛岡誠桜(岩手)とウェルネス宮城でスタートしており、この5年間で7校になった。

 東北地方で生まれ育ち、野球に親しんできた女子選手の受け皿が増えてきた。5月には女子中学生のクラブチームや女子社会人チームも加えた「東北女子硬式野球連盟(仮)」が創設され、リーグ戦形式で試合を行っていく予定だ。

フリーライター

1987年3月7日生まれ。宮城県栗原市(旧若柳町)出身。大学卒業後、仙台市在住のフリーライターとなり、東北地方のベースボール型競技(野球・ソフトボール)を中心にスポーツを取材。専門誌やWebサイト、地域スポーツ誌などに寄稿している。中学、高校、大学とソフトボール部に所属。大学では2度のインカレ優勝を経験し、ベンチ外で日本一を目指す過程を体験したことが原点。大学3年から新聞部と兼部し、学生記者として取材経験も積んだ。ポジションは捕手。右投右打。

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