下村大臣の小保方さん検証実験参加要請は筋が通らない

会見する岸輝雄委員長(左から2人目)ら改革委員会のメンバー (c)朝日新聞社

(2014年06月18日掲載WEBRONZA「そうだったのか!STAP問題」より)

下村博文文部科学相は17日の記者会見で「理研は小保方さんの活用を考えながら、一日も早くSTAP細胞を証明する努力をする必要がある」と述べた。「小保方さんでなければSTAP細胞を証明するのはより困難」とも語った。前日に若山照彦・山梨大教授が記者会見で「自分はいくらやっても再現できなかった。できるという人は小保方さん1人。小保方さんができることを証明していただかないと」と話したのを受けてのことだ。しかし、いくら理化学研究所の所管大臣とはいえ、いや、所管大臣だからこそ、これは言うべきことではない。現在、理化学研究所の懲戒委員会が検討中の事案について「横から」ではなく「上から」口をはさむ悪影響をどれだけ自覚しているのか。対等な立場の科学者が議論して進んでいくのが科学である。組織上、上位に位置する大臣があれこれ言うのは、しかも科学的な理解が乏しいままに言うのは、百害あって一利なしだ。

大臣が検証実験への小保方さんの参加の必要性を言い出したのはこの日が初めてではない。共同通信によると、小保方さんが論文取り下げに同意したことが明らかになった6月4日に「小保方さんが先頭に立って理研の中で再検証をし、自ら証明することを期待したい」と述べている。論文取り下げについては「適切な判断だった」と述べながら、「STAP細胞そのものが否定されたとは思っていない」と話し、「証明をする必要があり、それを小保方さんにお願いしたい」と言った。

下村博文文科大臣
下村博文文科大臣

3日の記者会見では、そんなことは言っていない。

「それは専門的な理研のスタンスですから、調査をするかしないかは、その内容によって理研が判断されることでありますけれども、ただ、いずれにしても、国民が納得できるような対応を理研はとっていただきたいということであります」(文部科学省の会見記録)と言っているだけだ。

だが、4日から小保方さんの名前を出すようになり、6日の記者会見では以下のように話した(文部科学省の会見記録)。

「まず、理研によると、御指摘のように小保方氏がSTAP細胞に関する2本の論文の取下げに同意したという報告がありました。研究不正が認められた論文については、既に理研により取下げの勧告がなされており、もう1本の論文についても、これまで著者間でのやりとりの中で取下げに同意されたものであり、適切な判断だと認識しております」

「今後、STAP細胞そのものの存在が否定されたということには、論文が取り下げられても、ならないと思っておりますので、是非、理研等においてSTAP細胞の検証について取り組んでもらいながら、同時に、この一連のガバナンスが理研に対してもやはり問われているわけですから、二度と研究不正が起きないような状況を、理研としてどう体制を作っていくかということも合わせて、是非、取り組んでいただきたいと思います」

「このSTAP細胞については、小保方さんがチームリーダーとして中心的な役割を理研で実際、担ってきたわけでありますし、御本人は200回も作っていると言われているわけでありますから、これはやはり再現を検証するという意味では、多分、小保方さんなしではなかなか年数がかかるということだと思いますから、やはり能力のある人にできるだけ協力してもらって、科学の部分からすれば、研究についてはベストの状態で検証するということが重要なことだと思います。その問題と、理研の小保方さんに対する処分の問題は、別次元で考えることが必要だと思いますから、再検証を小保方さんにしてもらうということが、処分について軽減するとかということではない整理の仕方で、理研がこれは最終的には考えるべきことだと思いますが、そういう整理をしてもらったら、一番、国民も理解しやすいのではないかなとは思います」

3日と4日の間に何があったのかといえば、理研「研究不正再発防止のための改革委員会」(岸輝雄委員長)の提言に「検証実験に小保方さんが参加すべきだ」という点が盛り込まれると大臣が知ったのだろう。改革委は12日に最終報告を発表、実際、「STAP現象の有無を明らかにするため、科学的に正しい再現実験を行うこと」を盛り込み、科学的に正しい再現実験とは「小保方氏自身が、熟練した研究者が監視役として同席したうえで行う」ことだと主張した。

6日の記者会見は、この内容を先取りして話したわけだ。だが、改革委や若山氏が「小保方氏が実験するしかない」と言っている意味と大臣が話すニュアンスは明らかに違う。「御本人は200回も作っていると言われている」「小保方さんなしではなかなか年数がかかるということだと思います」という発言から、大臣は小保方さんが実験すれば短期間でSTAP細胞ができると考えているのがわかる。そこが、「論文を取り下げたら発見は白紙」という科学の常識と異なるのだ。

そして、処分の問題にも言及している。改革委の岸委員長は記者会見で「小保方さんの実験参加と処分は矛盾するのでは」と問われ、「そこまで考える時間的余裕がなかった」と答えている。大臣は「理研が最終的には考えるべきこと」と言いつつ、「処分は別次元で考えて、再検証を小保方さんにしてもらう」と促している。しかし、小保方さんに再実験してもらうことを最優先で考えたら、処分を別次元で考えることなどできるわけがない。もし懲戒解雇になったら、小保方さんに限らず誰だって実験に協力しないだろう。懲戒委員会が処分を検討している最中に大臣がそんなことをいうのは、まるで裁判が進行している最中に法務大臣が量刑について口をはさむようなことではないか。

大臣発言は筋が通らない。

(2014年06月18日掲載WEBRONZA「そうだったのか!STAP問題」より)