検閲された「反日」ハリウッド映画

拘束されるイラク男性。バグダット2007年。 戦争ではどんな理不尽もまかり通る。
拘束されるイラク男性。バグダット2007年。 戦争ではどんな理不尽もまかり通る。

昨夜、映画「アンブロークン(Unbroken)」を観た。

アンジェリーナ・ジョリー監督の作品だが、日本ではネトウヨが「反日映画だ」と騒ぎたて、いまのところ国内で上映の見通しのない作品だ。細かく内容を紹介するつもりはないが、簡単に言えばこんな話。

第二次世界大戦中、乗っていた飛行機が墜落し、海上で漂流することになった若き米兵。彼は陸上5000メートル走のオリンクピック選手でもあった。47日間漂流したあげく日本軍の捕虜となるが、彼は日本兵から幾多の拷問をうけ続けることになる。ようやく終戦を迎え彼が解放されるまでが本編として描かれるが、映画の最後部で、長年の精神的、肉体的トラウマの末、自分を苦しめた日本兵たちを「許し」、1998年の長野オリンピックでの聖火ランナーとして走る彼の姿が紹介される。映画としての脚色はあるにせよ、昨年97歳で亡くなったこの米兵は実在し、ストーリーはかなり忠実に事実に基づいている。

映画の中の拷問シーン程度で、これを「反日」とするなら、日本人も随分と器量が狭くなったものだと落胆するが、それどころか、「アンブロークン」を非難し騒ぎ立てている連中がこの映画をみていないのは明らかだ。

冷静な目で見れば、これは「反日」ではなく「反戦」映画だということがすぐわかるはず。そして、47日間もの漂流と収容所での拷問の数々にも屈しなかった一人の男の人生をとおして、「許すこと」の意味を問うた作品でもある。 だいたい実際に日本兵が中・韓をはじめとしたアジアの国々でおこなった拷問、殺人やレイプにくらべれば、ここで描かれる殴る蹴る程度の暴力など、ショッキングでもなんでもない。反日を意図したものなら、甘すぎるでしょう。

僕の懸念は、こんなネトウヨの事よりも、配給会社がこの映画公開をしない判断の影には、安倍政権の意向が反映しているんじゃないかということだ。

これからどんどん自衛官をリクルートし、憲法を改悪し、日本の武装化を推し進めたい安倍政権にとって、大戦中の軍国日本の負の記憶を蘇らせるこんな映画は、もってのほかなのだろう。せっかく現代の日本人たちが広島や長崎をはじめとした戦争の悲劇を、都合よく忘れかけてくれているというのに、万が一にもこの映画が国内でヒットするようなことになれば、9条改悪に対する国民の抵抗が大きくなるかもしれないし、自衛官希望者だって減ってしまうかも知れないのだから。

日本の報道メディアにも露骨に介入してきているといわれる安倍政権だが、ハリウッド映画までも「検閲」しはじめた、といっても考え過ぎではないと思う。怖い怖い…。日本社会がますます息苦しくなっていくようだ。

我々日本人も、しっかり安倍さんの挙動を監視し、逆に「検閲」するくらいの気構えがないと、この映画の主人公のように自分が敵国の捕虜になってから後悔しても手遅れだ。僕は47日間の漂流や、拷問に耐えるほどのアンブロークン(不屈)な精神は持ち合わせていない。