路地裏のヘロイン中毒者たち

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「インド警察が北部カシミール地方で、パキスタン側からやってきたトラックから100キログラム以上のヘロインを押収」数日前、ネットでこんなニュースを目にした。インド側の情報によれば、アーモンドを運ぶトラックに隠された114袋のヘロインがみつかり、6年前にカシミールで両国を結ぶ商業交通網がひらかれてから最大の摘発事件になったという。

この記事を読んで、2年ほど前にパキスタンの港町カラチで撮影したヘロイン中毒者たちのことを思い出した。路地裏や橋の下で、垢と埃で汚れきった男たちが、ヘロインの粉末をライターの火であぶりながら吸引したり、液体化したものを腕や足の静脈に注射していた。カメラを持った僕が近づいても目に入らないほどにハイになって白目をむいている者も少なくなかった。

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パキスタンやアフガニスタンの裏通りでは、ヘロイン中毒者たちをみかけることはそれほど珍しいことではない。世界最大のケシ(ヘロインのもとになる阿片を含む植物)の栽培地であるアフガニスタンは、世界中で消費されるヘロインの80パーセント以上を供給するが、そのうち4割はパキスタン経由でアジアやヨーロッパへと流れていく。当然それはパキスタン国内の市場でもさばかれ、一回分100円にも満たない、ヨーロッパよりも遥かに安い値段で手に入るために、中毒者は増える一方だ。現在パキスタンには、およそ100万人のヘロイン中毒者たちがいるといわれる。

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パキスタンに限らずどこの国でも麻薬取引は莫大な利益をもたらすビジネスだ。どんなに警察が取り締まりを強化しても、マフィアやカルテルによる麻薬ビジネスが撲滅されることはない。この地域では、ヘロインがタリバンや他のイスラム武装グループの貴重な資金源となっていることは言うまでもない。今年はアフガニスタンからNATO軍が撤退を始める予定だが、撤退後はこの地域の麻薬ビジネスはさらに活性化してしまうだろう。

「堤防の水門をあけるようなものだ」そんな懸念の声も聞こえてくる。

次にパキスタンを訪れるときは、吸引したり注射針を腕に差し込んでいる中毒者たちが路地裏にあふれているんじゃないだろうか….そんな気がしなくもない。