海上自衛隊の新型3900トン型護衛艦である「もがみ型」5番艦の命名・進水式が6月23日、三菱重工業長崎造船所(長崎市)で行われた。「やはぎ」と名付けられた。同造船所での海上自衛隊艦艇の進水式は昨年12月の「みくま」以来。

海上幕僚監部広報室によると、艦名は長野、岐阜、愛知3県を流れる「矢作川」に由来する。艦名は海上自衛隊内での募集検討を経て、岸信夫防衛相が決定した。

この名を受け継いだ日本の艦艇としては、旧海軍の筑摩型防護巡洋艦2番艦「矢矧」、二等巡洋艦阿賀野型(阿賀野型軽巡洋艦)の3番艦「矢矧」に続き、3代目となる。軽巡洋艦「矢矧」は太平洋戦争末期に戦艦大和とともに出撃し、坊ノ岬沖(ぼうのみさきおき)海戦で沈没した。

「もがみ型」は年2隻のペースで建造が進められている。1番艦「もがみ」と2番艦「くまの」は順番を逆にして、それぞれ今年4月、3月に就役した。両艦は機雷戦と水陸両用戦を担当する横須賀基地の掃海隊群に配備された。

既に進水済みの3番艦「のしろ」は今年12月、4番艦「みくま」は来年3月、5番艦「やはぎ」は来年12月の就役をそれぞれ予定している。三菱重工業広報部によると、6番艦と7番艦が既に建造中だ。

●海自護衛艦として初の対機雷戦能力

「もがみ型」は、多様な任務への対応能力を向上させた新型の多機能護衛艦(FFM)だ。FFはフリゲートの艦種記号で、これに多目的任務対応(multi-purpose)と機雷戦(mine warfare)を意味するMが加えられた。海自護衛艦としては初めて機雷戦能力を有する多目的艦だ。

「もがみ型」は軍事力増強を続ける中国の海洋進出をにらみ、全長1200キロに及ぶ南西諸島を中心に日本の海上防衛の一翼を担う次世代の主力艦となる。増大する平時の警戒監視活動に加え、対潜戦、対空戦、対水上戦、機雷戦など多機能性を有していることが最大の特徴だ。

東シナ海や西太平洋など日本周辺で中露艦艇の示威活動が激しさを増す中、「もがみ型」は平時の警戒監視活動を手厚くして軍事的な空白地域を埋める。そして、有事には対潜戦、対空戦、対水上戦などの各種作戦を組み合わせて対処する構えだ。

海上幕僚監部は「FFMは従来は掃海艦艇が担っていた対機雷戦機能も備える」と強調する。機雷掃海能力や対潜能力は、アメリカ海軍が海自にとりわけ期待する分野でもある。

アメリカ軍の準機関紙、星条旗新聞の6月20日付の記事によると、アメリカ海軍はウクライナ戦争を踏まえ、中露艦隊に対抗するため、コンパクトで小回りの利く、コルベット艦やフリゲート艦の増勢が必要になっている。アメリカ軍は今後、日本をはじめとする同盟国や友好国にも周辺海域での警戒監視活動の貢献をより一層求めてくるとみられる。

●ステルス護衛艦

「もがみ型」は基準排出量が3900トン。全長133メートル、全幅16.3メートルと、従来の護衛艦と比べて船体をコンパクトにし、乗員数も通常型の汎用護衛艦の半分程度の約90人に抑えた。このうち、女性自衛官は10人となり、女性自衛官の居住区画も整備された。また、護衛艦としては初めて「クルー制」を導入する。複数クルーでの交代勤務の導入などによって稼働日数を増やすことを目指している。建造費は一隻当たり約470億円。

「もがみ型」は対艦ミサイルなどに探知されにくいステルス性の形状を備え、魚雷発射管やミサイルなどの電波を受けやすい機器を艦内に格納する。船体もロービジビリティ(低視認性)を重視した灰色と化しており、レーダーに映りにくい「ステルス護衛艦」とも称されている。

●海自護衛艦として初の複合機関CODAGを採用

もがみ型の速力は30ノット(時速約56キロ)以上。主機関としては、海自護衛艦として初めてガスタービンとディーゼルを併用する複合機関のCODAG(COmbined Diesel And Gas turbine)を採用した。巡航時など通常はディーゼルを使用し、急加速時や高速時はガスタービンを併用する。ガスタービンエンジンはイギリスのロールス・ロイス社から川崎重工業がライセンスを得て製造したMT30を1基搭載。MT30は海自護衛艦では初採用となった。ディーゼルエンジンはドイツのMAN社製の12V28/33D STCを2基搭載している。軸出力は7万馬力。

三菱重工業が提案していた「3000トン型護衛艦FFM」の概要イラスト。盛り込まれる主要性能や搭載予定の装備などがわかる(防衛装備庁ホームページより)
三菱重工業が提案していた「3000トン型護衛艦FFM」の概要イラスト。盛り込まれる主要性能や搭載予定の装備などがわかる(防衛装備庁ホームページより)

主要兵装としては、三菱重工業製の新型の17式艦対艦誘導弾(SSM-2)の4連装発射筒を2基、短射程艦対空ミサイルのRAMブロックIIA(RIM-116C)を使用する近接防御火器システム(CIWS)11連装発射のレイセオン製の対艦ミサイル防御装置(SeaRAM)を1基、12.7ミリ重機関銃M2を射撃できる日本製鋼所製のRWS(リモートウェポンステーション)である遠隔操作式無人銃架を2基、BAEシステムズ製の62口径5インチ(127ミリ)単装砲を1基、ロッキード・マーティン製のMk41垂直発射装置(VLS)を1基(16セル、搭載弾薬はアスロック)それぞれ搭載する。VLSは後日装備となる。

また、対潜水艦戦用としては、NEC製ソナーシステム「OQQ-25」や324mm魚雷発射管2基を装備し、SH-60K哨戒ヘリコプター1機を搭載する。

●従来の護衛艦にない新装備のUSVとUUV

さらに、対機雷戦用として、日立製のソナーシステム「OQQ-11」を搭載。機雷の敷設された危険な海域に進入することなく、機雷を処理することを可能とする無人機雷排除システム用の無人水上航走体(USV)1艇と無人水中航走体(UUV)を1機装備する。USVとUUVは従来の護衛艦にない新装備となる。USVは後日装備となる。

防衛省は現行の中期防衛力整備計画に基づき、2023年度までにもがみ型10隻を建造する計画を立てている。2021年度補正予算と2022年度当初予算を一体化した「防衛力強化加速パッケージ」では、9番艦と10番艦の建造費用として1103億円が確保された。将来的には22隻の配備が予定されている。

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