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ロシアのウクライナ侵攻、中国共産党関係者が明かした3つの中国の重要な立場

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
2月4日、北京五輪にあわせて会談する中国の習近平国家主席とプーチン露大統領(写真:ロイター/アフロ)

中国外務省の汪文斌(ワンウェンビン)副報道局長は3月4日、ロシア軍によるウクライナの原発に対する攻撃をめぐり、「ウクライナの核施設の安全保護の情勢を深刻に懸念している」と表明した。

ウクライナ国内の被害拡大を受け、ここに来て中国はロシアに批判的になったのか。いったいロシアのウクライナ侵攻をめぐる中国の立場とは何か。

中国国内にいる中国共産党関係者は4日、筆者の取材に対し、ロシアのウクライナ侵攻に関して、中国には3つの重要な立場があると説明した。

●戦略的パートナー

1つ目は、中国とロシアは戦略的パートナーであること。確かに筆者の目からしても、中露はアメリカに対抗するため、戦略的な結びつきをぐっと強めている。つい最近でも、習近平(シージンピン)中国国家主席とプーチン露大統領は北京冬季五輪の開会式当日の2月4日に会談し、共同声明で北大西洋条約機構(NATO)拡大反対を表明したばかりだ。昨年10月には中国海軍とロシア海軍の軍艦合わせて10隻が一体となって日本列島を周回したことは記憶に新しい。

●中立的立場

2つ目は、中国政府と中国国営メディアはウクライナ戦争では中立的立場を取っていること。この中国共産党関係者によると、中国メディアは、国営と民営を問わず、なぜロシアが戦争を始めなくてはいけなかったかを説明してきた。その一方で、ウクライナの人々が被っている苦しみも同時に報じてきたという。

中国とウクライナは互いに重要な友好国だ。2013年12月には、北京を訪問したウクライナのヤヌコビッチ大統領(当時)が習氏と会談し、中国・ウクライナ友好協力条約に調印した。両者の首脳会談にあわせて発表された共同声明では、「ウクライナが核兵器による侵略やその類の脅威にさらされた場合、(中国は)ウクライナに対して相応の安全保障を提供する」と明記された。本来なら中国がウクライナに「核の傘」を提供するとも受け取れる内容だ。

さらに習氏も2022年1月、両国国交樹立30年を祝うメッセージをゼレンスキー大統領に送り、「戦略的パートナー関係の発展を非常に重視している」と表明した。ウクライナは、中国が進める現代版シルクロード経済圏構想の「一帯一路」戦略において、ヨーロッパへの玄関口となる要衝となっている。ウクライナにとって、中国は2019年以降、最大の貿易パートナー国となっている。中国初の空母「遼寧」となった艦船(空母ワリヤーグ)ももともとはウクライナから「カジノ施設」として購入した。軍事的にも浅からぬ因縁がある。

●ロシア制裁不参加

3つ目は、中国はロシアへの制裁には参加しないこと。中国共産党関係者は「中国はロシアとウクライナの平和的な交渉を促している」と述べた。

ロシア軍によるウクライナ原発への攻撃をめぐる中国外務省の懸念表明についても、この中国共産党関係者は「関係各国は冷静さと自制を保ち、核施設の安全を確保するよう呼び掛け、中立的立場を示したに過ぎない」と述べた。

さらに、中国共産党関係者は「中国はウクライナ情勢を非常に注視している」と述べた。その理由として「ロシアはウクライナ東部2州の独立を承認した。もし中国がそれを支持すれば、台湾独立に反対する中国の立場を弱めてしまう」と述べ、中国にもジレンマがあることを明かした。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。ホリプロ所属。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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