世界保健機関(WHO)は6月14日、南米で流行する新型コロナウイルスの新たな変異株「ラムダ」を「注目すべき変異株」(VOI)に指定した。日本ではいまだよく知られていない変異株であるだけに、警戒が必要だろう。

この新たな変異株は2020年8月にペルーで最初に確認され、当初は「アンデス型」と呼ばれてきた。系統名はC.37。現在使われている呼称のラムダ株のラムダ(λ)はギリシャ文字の1つ。WHOは、主な変異ウイルスについて、特定の国名を名指して呼称すれば差別を生みかねないため、ギリシャ文字を使うよう奨励している。

WHOによると、ラムダ株はこれまでにチリやペルー、エクアドル、アルゼンチンなど南米を中心に29カ国で感染が確認されている。南米以外でも、アメリカやドイツ、スペイン、イスラエルなどで感染者数が目立っている。日本国内ではこれまでに感染が確認されていない。

●ペルー感染者の81%がラムダ株

ペルーでは2021年4月以来、新型コロナウイルス感染者のうち、81%をラムダ株が占めた。

「ペルーは現在、非常に強い第2波に見舞われている」。2019年度内閣府主催の青年国際交流事業「世界青年の船」に筆者とともに参加したペルーの首都リマ在住の公務員、グスタボ・イリアスさん(32)はこう話した。

ペルーは感染者数が200万人を超え、感染死者数も20万人近くに及んでいる。 国際統計サイト「Worldometer」のデータによると、人口100万人当たりの感染死者数は約5700人に上り、世界最多になっている。

一方、チリではラムダ株が過去60日間の感染で32%を占めた。これは、ラムダ株がブラジル型変異ウイルスのガンマ株(33%)とほぼ同程度で流行していることを意味する。そして、イギリスで最初に発見されたアルファ株の4%をはるかに上回っている。チリは感染者数が約150万人に及び、感染死者数は3万人を超えている。

WHOは、ラムダ株が感染力が高く、中和抗体に対する耐性を持つ可能性があると指摘した。

しかし、WHOはエビデンス(実証的な証拠)が限られていることから、ラムダ株については引き続き、さらなる調査が必要だと述べた。

WHOは、変異型を「懸念される変異株」(VOC)と「注目すべき変異株」(VOI)に分類している。警戒度はVOCよりVOIの方が低く、VOIはあまりニュースの見出しを飾ることはない。

しかし、インドで最初に確認され、現在はVOCに分類されているデルタ株も、5月11日まではVOIに分類されていた。ラムダ株も、デルタ株同様に今後世界中で感染が広がる可能性がある。

●ワクチン先進国で猛威を振るうデルタ株

WHOはデルタ株について、6月15日の時点で80の国や地域から報告があったと発表した。

米製薬大手ファイザーとの新型コロナウイルスワクチンの共同開発を主導した独バイオ製薬ビオンテックのウグル・サヒン最高経営責任者(CEO)は16日、デルタ株による感染再拡大を警告した。

ワクチン接種先進国であるイギリスではデルタ株の猛威に見舞われ、6月17日の新規感染者数が1万1000人を超えた。死者数も19人に及んだ。イギリスでは成人人口の80%が少なくとも1回のワクチンを接種済み。2回の接種を終えた成人人口の割合も58.2%に達している(6月17日時点)。

ソウルにあるミズメディ・ウィメンズ病院の内科医を務め、韓国の新型コロナウイルス専門家として知られるタン・ヒョンギョン氏は筆者の取材に対し、「ワクチンは感染者からの感染拡大を防ぐためには、限られた効果しか持たない」と指摘。「ワクチンは100%効くものではない。ワクチンはウイルス感染からすべてを守ってくれはしない」と警鐘を鳴らす。

世界各地で次々と出現し、感染が広がる変異ウイルス。日本は7月23日から、世界200カ国以上から約9万3000人を受け入れる東京オリンピック・パラリンピック大会を開催する。新たな変異株の出現に目を光らせ、水際対策やゲノム解析をぐっと強化しなくてはいけないだろう。

●コパ・アメリカの惨状

日本が教訓としなくてはいけないのが、パンデミックの真っ只中にブラジルで13日から開催されているサッカーの南米選手権(コパ・アメリカ​)の惨状だ。大会3日目にして既に52人の陽性者が出ている。このうち、全登録選手の9%に当たる23人が感染した。サッカーダイジェストWebの16日付の記事は、「もうこれはサッカーの大会ではない。1人の感染者も出さなかったチームを勝ちにすればいいのではないか」と語る元ブラジル代表ゴールキーパーの皮肉交じりのコメントを引用している。

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