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海自の新たな音響測定艦が29年ぶりに就役――ひびき型3番艦「あき」が広島・呉基地に配備

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
音響測定艦として29年ぶりに就役した「あき」(海上自衛隊公式ツイッターから)

海上自衛隊の音響測定艦あきが3月4日、就役した。三井E&S造船玉野艦船工場(岡山県玉野市)で同日、引き渡し式と自衛艦旗授与式があった。音響測定艦としては1992年に就役した「はりま」に続き、実に29年ぶりの就役となった。国内唯一の音響測定隊である呉基地の第一音響測定隊に配備される。仮想敵国潜水艦の静粛化や隠密行動能力の向上を受け、日本周辺の海洋での音響情報収集能力の強化を図る。

●あきは音響測定艦3隻目

あきは「ひびき」型音響測定艦の3番艦だ。1番艦の「ひびき」は1991年、2番艦の「はりま」は1992年にそれぞれ就役した。あきは2019年3月に起工され、2020年1月に進水した。建造費は約226億円。

船体は海自の艦船としては初の双胴型で、水中に没する2本の魚雷型船体に推進器を持つ。小さな水線面積の双胴船を意味するSWATH船型と呼ばれている。

艦橋に続く後甲板は大型ヘリコプターの発着甲板になっている。艦尾には約数百キロの海中の音響情報などを広域にわたって探知するSURTASS(高性能聴音装置)を格納し、それを艦尾から曳航して潜水艦の音響情報の収集に当たる。微妙な艦位調整を行うためのバウスラスターも備える。

あきの基準排水量は2900トンで、「ひびき」と「はりま」より50トン大型化した。全長は67メートルで、全幅は29.9メートル、深さ15.3メートル、軸馬力3000馬力、速力は11ノット。乗組員は約40人。

音響測定艦としては29年ぶりに就役したひびき型3番艦「あき」。写真は2020年1月の命名・進水式時の撮影(海上自衛隊提供)
音響測定艦としては29年ぶりに就役したひびき型3番艦「あき」。写真は2020年1月の命名・進水式時の撮影(海上自衛隊提供)

●海上幕僚長「より多くの目を」

海上自衛隊トップの山村浩海上幕僚長は2日の定例記者会見で、音響測定艦が29年ぶりに就役した時代的意義について、「音響測定艦は海洋における音響情報の収集を目的としている艦艇で、これまではひびきとはりまの2隻体制だった。海洋からの音響情報を収集する必要性は従前もあったのだが、昨今の我が国周辺の軍事情勢をめぐり、より多くの目を、すなわち、より多くのセンサーをということで今まで2隻だったのを3隻体制にする」と述べた。

また、2017年に第1音響測定隊に海自艦艇として初めてクルー制(乗員を固定せずに3クルーが交互に乗り組んで2隻を運用)を導入したことに触れ、「今回あきが就役することによって、3隻による4クルー制となり、より稼働率を上げて我が国周辺の音響情報を収集できる体制をとろうと考えている」と述べた。

第1音響測定隊は、神奈川県横須賀市船越町に司令部を置く海洋業務・対潜支援群の隷下部隊となっている。音響測定艦で収集した音響データ情報は横須賀基地にある海上作戦センター隷下の対潜水艦作戦(ASW)関連部署に送られて分析、対潜戦に利用されるとみられる。

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米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

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