注目集まる27日の韓国憲法裁判所による慰安婦合意の違憲判断。日韓関係改善の動きを台無しにする恐れ

ソウルにある日本大使館の前で抗議する韓国の人々。2019年8月14日撮影(写真:アフロ)

1年3カ月ぶりに開かれる12月24日の日韓首脳会談の前に、再び日韓関係に暗雲が垂れ込んでいる。日韓関係への大きな悪材料となり得るネガティブなニュースが入ってきた。

韓国の聯合ニュースは23日、旧日本軍の慰安婦問題をめぐる2015年12月の日韓合意について、韓国憲法裁判所が27日に合憲か違憲かの判断を下すと報じたのだ。この日韓の慰安婦合意が韓国憲法裁判所によって違憲だと判断されれば、戦後最悪とも言われる日韓関係のさらなる悪化は避けられない。安倍政権も韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権に強硬姿勢を取らざるを得なくなるだろう。

24日の日韓首脳会談は、日韓対立の根本原因となっている元徴用工問題で進展せず、大きな前進を見せないかもしれない。しかし、日韓関係を立て直すためには重要だ。日韓のトップ同士が直接向き合うことで対話ムードが醸し出され、日韓の緊張対立も和らぐからだ。

さらに、北朝鮮は今年、過去最多となる合計25発のミサイルをすでに発射した。(北朝鮮は短距離ミサイルの発射を繰り返し、”機動弾頭技術”という弾頭を機動的に誘導制御する新たなミサイル技術を手に入れたとみられる。)そして、アメリカへのクリスマスプレゼントとして大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射の兆候を見せる中、対北朝鮮連携に向け、今回の日韓首脳会談が持つ意味は大きい。急増する北朝鮮の核ミサイル脅威を眼前にし、日韓ともに背に腹は替えられない。手をつなぎ合った方がいい。

そんな中、国と国が交わした慰安婦合意が韓国憲法裁判所によって違憲だと判断されれば、日韓首脳会談で少しでも得たせっかくの成果が台無しになってしまう。

●足元は日韓関係改善の動き

日韓関係はこのところ、改善の動きが出始めたばかりだ。直近では、まず11月4日に、安倍首相と文大統領がタイのバンコクで、ASEANプラス3(日中韓)首脳会議に先立ち、非公式ながら10分ほど歓談した。これを機に、韓国は11月22日、一度は破棄を決めた日本との軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の延期を発表した。12月16日には輸出管理についての日韓局長級の対話が3年半ぶりに開催された。さらには12月20日に日本は、韓国向けに輸出管理を厳格化していた半導体材料3品目のうち、感光剤「レジスト」についての輸出管理を見直した。だが、2015年の慰安婦合意をめぐる違憲判断が出れば、こうした足元の日韓関係改善の流れを一気にちゃぶ台返しにする動きになりかねない。

日本政府を相手にした損害賠償訴訟の第1回口頭弁論に先立ち、ソウル市内で記者会見する元慰安婦たち。2019年11月13日撮影(写真:ロイター/アフロ)
日本政府を相手にした損害賠償訴訟の第1回口頭弁論に先立ち、ソウル市内で記者会見する元慰安婦たち。2019年11月13日撮影(写真:ロイター/アフロ)

●元慰安婦「慰安婦合意は基本的権利を侵害」

元慰安婦らは2016年3月、「最終的かつ不可逆的な解決」をうたう2015年の日韓慰安婦合意によって損害賠償を求める基本的権利が侵害されたとして、同合意が違憲であるとの訴えを憲法裁判所に起こしていた。

さらに、この違憲訴訟をめぐっては、韓国外務省が「日韓慰安婦合意は法的拘束力がない政治的合意で、公権力の行使と見るのは難しい」とする答弁書を出していたことが分かっている。日本との合意の法的効力を事実上否定し、憲法裁判所に訴訟却下を促す狙いだったが、27日の違憲性の判断はいったいどうなるのか。

●問われる韓国の「司法積極主義」

元はと言えば、戦後最悪とも言える日韓関係の大きな対立は、韓国大法院(最高裁判所)が2018年10月に元徴用工への日本企業の賠償を命じたことが発端だった。大法院長(最高裁判所長官)は、文大統領が任命した金命洙(キム・ミョンス)前春川地方裁判所長だ。金氏は人権派の判事として知られ、慰安婦問題についても「国民の一人として、被害者の傷を癒やす方法が速やかに設けられることを心から願う」と述べたことがある。

韓国の裁判所は日本と違い、政治や外交への「司法積極主義」が根強く、微妙な政治や外交問題に介入しすぎているきらいがある。「韓国の裁判官は『裁判所が世の中を変えていく』というエリート意識が強い」と指摘する韓国の専門家もいる。2015年の日韓慰安婦合意を違憲と判断すれば、改めて韓国司法の在り方が内外で問われるだろう。