「北朝鮮、年末までに新型の潜水艦発射弾道ミサイルのさらなる実験も」米軍事専門家が警告

北朝鮮は2017年11月29日、新型ICBM「火星15」の発射に成功したと表明(写真:ロイター/アフロ)

「北朝鮮は今年末までに新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)のさらなる実験を行う可能性がある」――。北朝鮮のミサイル開発に詳しいアメリカの軍事専門家は11月15日、都内で開かれた講演会でこう警告した。

この専門家はさらに「北朝鮮は来年中にアメリカをターゲットにした固体燃料型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を新たに完成させる可能性がある」と警告した。北朝鮮のミサイル技術の進展と、それがもたらす脅威の増大について予断を許さない状況が今後も続きそうだ。

北朝鮮の軍事技術に詳しいアメリカ科学者連盟(FAS)非常勤シニアフェロー、アンキット・パンダ氏が11月15日、都内の日本国際問題研究所で講演した。パンダ氏は、外交専門誌「ザ・ディプロマット」のシニアエディターも兼務している。パンダ氏は筆者が講演内容を報じることを全面的に快諾した。このため、この拙稿で紹介したい。

北朝鮮の軍事技術に詳しいアメリカ科学者連盟(FAS)非常勤シニアフェロー、アンキット・パンダ氏(11月15日、高橋浩祐撮影)
北朝鮮の軍事技術に詳しいアメリカ科学者連盟(FAS)非常勤シニアフェロー、アンキット・パンダ氏(11月15日、高橋浩祐撮影)

●2019年は過去タイのミサイル発射数

金正恩朝鮮労働党委員長の父、故・金正日総書記はトップ君臨中の1994年から2011年までの18年間で16発のミサイル発射実験を行った。しかし、金正恩委員長は父親の死後、権力の座についてからの8年間でその5倍近くの78発の発射実験を強行している。

2019年はすでに2016年と同じ過去タイの23発ものミサイルを発射している。ハイペースで発射し続けているのだ。

パンダ氏は「今年あと1発発射されれば、金正恩は北朝鮮のミサイル実験の歴史で過去最多の新記録を作る。今年もまだ何週間も残されていることから、おそらくそうなるだろう」と述べた。

●新型SLBM「北極星3」

2時間近くに及ぶパンダ氏の講演の中で、筆者が注目したのは、北朝鮮が10月2日に発射した新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」についてだ。

北朝鮮が10月2日に発射した新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」(写真:KCNA)
北朝鮮が10月2日に発射した新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」(写真:KCNA)

北朝鮮は、ノドンやムスダンなどの液体燃料を使う弾道ミサイルを「火星」固体燃料を使うSLBMとその地上配備改良型を「北極星」とそれぞれ呼んできた。

北朝鮮は今年、他に4つの種類のミサイル発射実験を行ってきたが、それらはすべて短距離の飛翔体だった。しかし、10月2日に発射された北極星3は、韓国軍当局によると、450キロ飛行し、高度910キロに到達した。河野太郎防衛相は翌3日、この新型SLBMが通常の軌道で発射されれば射程が約2500キロメートルに達する可能性を指摘し、準中距離弾道ミサイルとの見方を示した。

この「北極星3」について、パンダ氏は「今年発射された最大のミサイル。そして、北朝鮮がこれまで発射してきた固体燃料型ミサイルとしては最大の飛距離を有する。今回の発射は意図的に角度をつけて高く打ち上げ、飛距離を縮めて日本の排他的経済水域(EEZ)内に着弾させたが、通常の角度で発射されれば、弾頭の重さ次第だが、2000キロから2500キロに及ぶ。韓国はもちろん日本全土を射程に収める重大なミサイル能力を有する」と警鐘を鳴らした。北朝鮮が2016年4月の最初の「北極星」の発射実験から、「北極星2」「北極星3」と着実に開発を進めてきた証しだ。

アメリカ国防省は、北極星3が海中に設置した発射台から放たれたと発表した。

パンダ氏は「北朝鮮は、アメリカが1950年代に最初のSLBMのポラリスを開発した方法と全く同じ方法を採っている。最初は地上から発射し、次に海中のプラットフォーム(発射台)からの発射だ。次に考えられる実験は潜水艦自体からの発射だ。おそらく来年、いや今年中にも発射実験が行われる可能性がある」と警告した。

●固体燃料型ICBMの開発

北朝鮮はミサイル技術の開発において、固体燃料型のミサイルやミサイル誘導システムの技術開発などに課題が残っているとみられている。

パンダ氏は、「北朝鮮も他の国々と同様、最初は液体燃料を使った弾道ミサイルの発射実験を行い、後から固体燃料を使った発射実験を行っている」と述べた。

北朝鮮が2019年に入り、ロシアの地対地ミサイルシステム、9K720「イスカンデルM」や「イスカンデルE」をベースにした短距離弾道ミサイルのような固体燃料型弾道ミサイルの発射実験を何度も繰り返したのは、そうした開発に弾みをつけたかったからだとみられる。

ミサイル燃料が液体だと、固体燃料に比べ、注入など「発射準備」に時間や手間がかかるので、事前にアメリカや日本の監視システムで発射準備の兆候が見つかりやすくなっている。

パンダ氏は「液体燃料だと、メンテナンスが余計に必要になる。液体燃料型ミサイルの発射の際には、燃料や推進剤、酸化剤をそれぞれ運ぶ支援車両も必要になる」と述べ、液体燃料のデメリットを指摘した。

北朝鮮はこれまでアメリカ本土に到達可能なICBM級のミサイルを3回発射してきた。つまり、2017年7月に「火星14」を2回、同年11月に「火星15」を1回発射した。しかし、どれも液体燃料型のミサイルだった。

「北朝鮮が固体燃料型のICBMを手に入れる時期はいつぐらいになるとお思いか」との筆者の質問に対し、パンダ氏は「多くの人々は今、来年にもそれは起こり得ると思っている。北朝鮮が2017年7月に液体型ICBMを発射した時、多くの人々が驚いた。北朝鮮のミサイル開発能力を過小評価してはいけない。彼らは自信を持ち始めている。私が思うにやはり、早ければ来年にもそれは達成されるだろう。北朝鮮がどのように最初の固体燃料型ICBMの実験をするのかも興味深い点になるだろう。例えば、固体燃料を使った北極星3を地上配備型に改良したミサイルが、最初はIRBM(中距離弾道ミサイル)、そして最終的にICBMに発展するかもしれない」と警告した。