河野氏、駐日韓国大使と「仲直りの食事会」

5月に当時の河野外相を表敬した南官杓駐日韓国大使(写真は外務省ホームページより)

河野太郎防衛相が外相だった7月下旬、韓国の南官杓(ナムグァンピョ)駐日大使に呼びかけ、「仲直りの食事会」を秘密裏に開催していたことがわかった。韓国政府筋が筆者の取材に対し、明らかにした。

河野外相(当時)はそれに先立つ7月19日、韓国大法院(最高裁)による元徴用工判決をめぐり、韓国政府が日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置に応じなかったことについて、南大使を外務省に呼び、強く抗議していた。河野氏が会談の冒頭、カメラの前で南大使の発言を遮って「極めて無礼だ」と述べたシーンを覚えている読者も多いはずだ。河野氏側が呼びかけ、7月下旬に開催した南大使との食事会は、その関係修復が主な目的だったとみられる。

この河野氏の発言をめぐっては、韓国のメディアが「外交的欠礼を犯した」などと反発。作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏も8月17日号の『週刊東洋経済』で、「外交の世界において首脳や外相の発言が持つ意味は大きい。『売り言葉に買い言葉』のような状況が、事態を袋小路に追い込むことになった」と批判していた。

都内で開催されたとみられる「仲直りの食事会」(韓国政府筋)だが、具体的な日時場所は「7月下旬」という情報以外、今のところ、明らかになっていない。日韓の対立が深まり、両国のナショナリズムが高まるなか、食事会の呼びかけやそれへの参加の情報は、一部の強硬な国内勢力から相手国への譲歩や弱腰姿勢とも受け止められかねない。日韓両政府ともに国内世論への体裁を気にしているためか、限られた政府当局者しか情報の共有も許されていないようだ。筆者が見る限り、日本メディアもいまだ、この食事会については報じていない。

●河野防衛相、韓国の国慶日レセプションに参加

徴用工問題などで韓国に厳しい姿勢を示し、対韓強硬派とみられてきた河野氏だが、防衛相に就任してからは防衛・安全保障分野で日韓の連携を強調している。河野防衛相は9月11日の就任記者会見で「北朝鮮の脅威に向き合うためには、やはり日米韓がしっかり連携をしていくということが大事だ」と指摘し、「日米韓がしっかり連携していくためには、日米、日韓それぞれきちんと連携が取れていることが大事だ」と述べた。

在日韓国大使館が10月3日に主催した「国慶日レセプション」では、茂木敏充外相が出席しないなか、日本の閣僚では河野防衛相だけが来場した。会場にいた参加者によると、河野防衛相は南大使とあいさつを交わし、記念写真も一緒に撮った。両者の関係改善がうかがわれる。

韓国の中央日報は翌4日付の記事で、「日本政府代表として出席が期待された茂木敏充外相が出席しないなど悪化した両国関係がそのまま表れた。この日の行事に日本閣僚級で顔を出したのは河野太郎防衛相だけだった」と報じている。

●日韓、水面下のやり取り

日韓間の重大な懸案となっている元徴用工訴訟問題をめぐる日韓当局者の接触について、慶應義塾大学法学部の西野純也教授は8日に同大で開かれたシンポジウムで、「日韓請求権協定第3条に基づく協議は行われていないが、水面下で日本と韓国の政府が接触をし、さまざまな努力をしているのは事実である。どのような努力をしているのかについては、韓国側の認識として発表されている。日本側の認識として異なる部分はあるが、事実関係としては多くの事実が含まれている。つまり、6月下旬から8月中旬にかけて、両国政府間で水面下のやり取りがかなり行われた。しかしながら、それが残念ながら我々の目に見えるような形での本格的な外交交渉としては、まだ上ってきてはいない」と述べた。

河野氏と南大使の食事会は、この水面下の接触の一環としても必要になったとみられる。

事実関係を含め、この食事会について、筆者は8日午後1時45分に外務省国際報道官室にコメントを求めたが、9日午後4時時点で回答は得られていない。

【お詫びと訂正 2019/10/10 01:10】 記事初出時、河野氏と南大使が食事会を開催したのは「7月末」と記していましたが、「7月下旬」の表現の方が正確でした。お詫びして訂正いたします。