「東京湾に直に入ってくる台風が一番危険」千葉・鋸山の日本寺ご住職のお母様が昔からの言い伝えを指摘

雲の渦巻き 台風イメージ(提供:アフロ)

9月9日早朝に上陸した台風15号の影響による千葉県の大規模停電は、18日午後5時半時点で依然として約4万2200戸で続いている。通信障害などが起こっている地域も少なくない。

例えば、千葉県鋸南町(きょなんまち)にある漁協直営の人気鮮魚食堂「ばんや」に電話をかけると、「現在おかけになった地域では、ネットワーク設備が故障している。または、相手の通信機器の電源が入っていないか、故障していると思われます」との自動音声がかかるばかりだ。現地では懸命の復旧活動が続いている。

ばんやと並び、南房総の人気観光名所である鋸南町鋸山(のこぎりやま)にある日本寺(にほんじ)のご住職のお母様(78)は18日、匿名を条件に筆者のインタビューに応じ、被害状況や救援活動の様子を克明に話した。

約1300年の歴史を誇る日本寺のご住職のお母様として、「東京湾に直に入ってくる台風が一番危険」との言い伝えが昔からあることを明らかにした。

一問一答は以下の通り。

――日本寺の被害状況を教えてください。

境内では倒木が多いです。100本以上全部、根ごと倒されています。息子は毎日、山に行き、チェーンソーで木を切断していますが、素人ではどうにもできない状況です。

境内にある羅漢は窪みにあるため、大丈夫でしたが、山道である参道が倒木で通れなくなっています。

寺は鋸山にありますが、台風15号が房総半島に上陸した9月9日以降ずっと、閉山しています。停電が一週間続き、電気が通ったのは15日午後10時ちょっと前でした。

――電気が通り、今は水道も流れているのですね。

はい。水を通すには、電気が必要です。

山ですから以前は湧水を利用していました。しかし、鋸山の下にトンネルを掘ったため、それ以降は、井戸を掘ってポンプで水をくみ上げてきました。しかし、15日まで電気が止まっていた時には、ポンプも使えず、水が使えませんでした。

――ここまで台風被害が大きくなっている理由について、どのようにご覧になっていますか。

倒木が多く、配電線を駄目にしてしまいました。房総半島は高い山はないのですが、地形が急しゅんです。海と山が隣り合わせで、海抜ゼロの海辺から、急に山になっています。急しゅんな地形のため、海岸線にある道路も狭いです。

昔から東京湾に直に入ってくる台風が一番危険だという言い伝えがありました。

――そのような言い伝えがあったのですね。災害救援活動が大変な困難に直面してきていますが、その理由についてはどのようにご覧になっていますか。

災害時の初動活動が十分ではありませんでした。電気も無線も通じず、被害状況を把握できませんでした。千葉県庁も南房総の被害状況がよく分からず、動けなかったのはないでしょうか。自衛隊への要請も遅れました。ツイッターで南房総の被害状況が分かるようになって、それから動き始めました。

日本寺にある日本最大の大仏さま(高橋浩祐撮影)
日本寺にある日本最大の大仏さま(高橋浩祐撮影)

――同じ鋸南町の漁協直営の鮮魚食堂「ばんや」の辺りの被害が大きいと聞いております。

はい。ばんやも大変な被害を受けました。鋸南町の大半の家が今もブルーシートで覆われています。

――どのような支援が今、必要でしょうか。

人手が足りません。町長も不眠不休で活動しておりますが、人口8000人にも満たない小さな町ですので、物資を送っていただいてもさばききれておりません。町長と先ほども話しましたが、町の全世帯の9割が被災しているとのことです。

ぜひ返礼品のないふるさと納税を通じ、復興のために支援をしていただけば幸いです。

●危険半円と可航半円

日本寺ご住職のお母様は「昔から東京湾に直に入ってくる台風が一番危険だという言い伝えがありました」と述べた。これはいったいどういうことか。

ウェザーマップ所属の気象予報士の久保井朝美さんは18日、筆者の取材に対し、一般的に、台風は進行方向の右側が「危険半円」、左側が「可航(かこう)半円」と呼ばれ、右側の方が風が強いと説明した。北半球の台風は空気の流れが反時計回りで、台風の進行方向右側は台風の移動速度が加わって、風速が増すからだという。今回は右側が房総半島となった。一方、左側は台風そのものの風向きと移動に伴う風向きが逆になるため、風速は右側と比べ、弱くなるという。