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「フォロー部屋」はNG!利用規約に見る音声SNS「Clubhouse」の注意点と3つのリスク

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
音声SNS「Clubhouse」が人気を集めている(写真:アフロ)

音声SNS「Clubhouse」が流行中だ。まだiOS限定だが、コロナ禍で他人と簡単に会えない中、気軽に話すことができる場として人気となっている。

知り合い同士でおしゃべりするだけでなく、気になるテーマのルームに参加してスピーカーとなったり、著名人のトークショーに参加するなど、様々な使い方がされている。いわば電話、ラジオ、ポッドキャスト、セミナーなどすべてが兼ねられる状態だ。同じくコロナ禍で人気となったものにZoomがあるが、こちらは音声のみなので、他のことをしながら「ながら聞き」ができ、場所や服装なども気にせず参加できる気楽さもある。

人気となった理由は、多くの人が他人とのリアルコミュニケーションや新しい出会いに飢えていたことが一番の理由だろう。もちろん、招待制であることも影響している。著名人も多く入ってきたこともあり、メディアにも多く取り上げられ、さらにユーザーが増えている状態だ。多くのSNSで先に始めた人に先行者利益があることが指摘されるが、現在はインフルエンサーとなることを狙った層も増えているようだ。

Clubhouseを使う上で、徐々に様々なリスクが見えてきた。どのような危険性や注意点があるのか、改めて抑えておきたい。

音声SNS「Clubhouse」におけるリスクを知っておこう

Clubhouse利用における3つのリスクとは

Clubhouseは実名制で、招待にも電話番号を利用するSNSだ。また、プロフィールを開くと招待者名と参加した日にちが表示されるなど招待者と紐付いているため、信頼性は高い。スピーカーに呼ばれれば誰でも直接話せるのが楽しいが、逆に言えばスピーカーに呼ばれない限りコメントもできないので、荒れにくいようになっている。

一方、利用上でのリスクは多い。1つ目は情報流出問題だ。アーカイブが残らないので、油断してオフレコの話をしている人は多い。規約上、話したことの録音、記録は禁止されているが、別途外部でICレコーダーなどで記録されて流出する可能性がある。これまで24時間で消えるInstagramのストーリーズで炎上が続いたことを考えると、やはり注意が必要だろう。

2つ目は、未成年トラブルだ。利用規約で18歳以上対象とされているが、特に年齢を確認する仕組みなどはなく、未成年も利用可能だ。実際、「中学生」と名乗っているユーザーを見かけたこともある。これまで、子どもが生配信やボイスチャットなど直接話せるサービスで個人情報を漏らしてしまいさらし者にされたり、出会い系被害に巻き込まれたりする事件は頻繁に起きている。Clubhouseでも同様のリスクがあると考えるべきだろう。

3つ目は、言うまでもなく中毒性の高さだ。友人と話せる楽しさだけでなく、芸能人などと直接話せる可能性もあり、本来有料のような内容も無料で話されている。アーカイブが残らないため、リアルタイムで聞かねばならず、時間を食ってしまいがちだ。また、求めている情報に効率よくアクセスできないため、聞き続けねばならない点にも注意が必要だ。他のSNS同様、生活や体調に支障が出ないようコントロールして使う必要がある。

詐欺被害、情報ビジネス被害も起きている

既に様々なトラブルが起きている。招待制で初期は1ユーザーあたり2名しか招待できなかったため、招待枠はメルカリやヤフオクなどで1万円前後で販売されていたこともある。ただしメルカリではサービスや権利など実体がないものの売買を禁止しているため、現在は削除対象となっている。

一方、これに乗じて招待詐欺も起きている。SNSなどで招待権を売る口約束をした上で、支払いを受けてから招待しないまま相手をブロックして逃げるというものだ。そもそも見知らぬ相手に電話番号を渡すと悪用される可能性がある上、規約違反であり、購入は絶対にすべきではない。招待枠は利用日数などに応じて増えてくる上、既存ユーザーの電話帳に登録があれば利用できるようになるので、焦って購入することは避けるべきだ。

既に、差別発言や誹謗中傷問題が指摘されている他、情報商材の販売に使われているという報告もある。フォロワーを増やし、信頼を獲得した上で販売している例があるのだ。直接話すことの力はすごく、話しているうちに引き込まれたり、信用したり好意を持ったりすることは珍しくない。しかしその結果、思わぬトラブルに巻き込まる可能性があるので注意してほしい。

利用規約・ポリシー違反に注意

利用規約ポリシーに違反している利用を時々見かける。現状では厳しく対処されてはいないが、違反行為はアカウント停止などにつながる可能性もある。規約やポリシーはしっかりと把握した上で、違反しない利用が大切だ。

既に説明したとおり、実名で18歳以上の人が利用することとなっているが、ニックネームや明らかに本名でない人、18歳未満のユーザーも多い。芸能人や著名人などは本名以外に別名(creator aliasとして)も追加できるので、活用してほしい。

また、「関係するスピーカー全員の明示的な書面による同意なく会話を記録すること」「オフレコとして扱うよう明示的に表明されたにもかかわらず情報を(Clubhouse内または他の場所で)共有すること」は禁止されている。つまり、Clubhouseでの会話の録音や記録はすべてNGなのだ。Twitterなどでやり取りを書きおこししているユーザーもいるが、問題視される可能性がある。

作業部屋として無音の部屋があるが、主に仕事に集中するための部屋として機能しているようだ。場所によってはキーボードの音だけ聞こえている部屋もあるし、完全に無音なこともある。これだけなら問題ないのだが、「フォローしあう」ことを目的としたルームは禁止されている。フォロワーを増やしてインフルエンサーになりたいユーザーなどが行っているが、やめておいた方がいいだろう。

ビジネスに活用したいユーザーも多く、フォロワーを増やすための方法をテーマとしたルームもよく見かける。「ファン同士が話す部屋を作ったら、参加者の多くが購入行動をとった」などの話も聞いている。しかし、「特に承諾のないまま商業目的で商品またはサービスの売買を広告しまたは販売すること」とされているので、広告・販売で利用は基本的にNGと考えてほしい。

音声SNSは、我々にこれまでとは違う新しい楽しみを与えてくれている。規約違反やリスクに気をつけながら、安全に適度な利用を心がけるようにしてほしい。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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