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崩れた子どもの生活リズムの戻し方、長くなりすぎたスマホ時間を短くするコツ【#コロナとどう暮らす

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
(写真:アフロ)

新型コロナウイルスを経験したことによって、私たちの暮らしは今後どのように変化するのだろうか。Yahoo!ニュースの「みんなの意見」を参考に、著者なりの見解を述べたいと思う。

「休校中、規則正しい生活を過ごせましたか?」というアンケートによると、「いいえ」が約6割の57.7%、規則正しく過ごせたという人は、28.7%と3割以下という結果になった。

長い休校が明けて、全国的に小中高校が再開している。崩れたリズムで、普段の学校生活への適応が難しい人もいるかもしれない。少しずつでも規則正しい生活を取り戻していきたいところだ。今回は生活リズムを取り戻すためのコツとともに、休校期間によく見られた問題、「長くなりすぎたスマホ時間」を短くするポイントについて見ていく。

就寝・起床時間は遅く、ゲーム・動画視聴が長時間に

筆者が取材した中でも、休校中に生活リズムが大きく崩れた例はとても多かった。

「娘は昼過ぎに起きるから、一日二食。私は仕事に行ってしまうので見てやれず、宿題もほとんどできていないようだ」(小学6年女児の母)

「夜中遅くまで友だちとボイスチャットをしながらゲームをしている。スポーツ系の部活に励んでいたが、できないのでゲームに向かってしまっている」(小学5年男児の父)

「起きている間中、子どもがYouTube動画を見ている。一日10時間以上は見ているようだ。YouTuberの○○の動画をすべて見尽くしたらしい」(小4男児の母)

今回の臨時休校では、普段は問題がない子どもも生活リズムを崩していた例が目立った。それまで利用を制限していたという小学生の子を持つ家庭でも、「学校にも行けないし友だちにも会えない。他に楽しみもなくてかわいそうなので、ついつい許してしまった」と、長時間になってしまった理由を振り返る。保護者がテレワークで忙しく、子どもにYouTubeを見せっぱなしにしていたという話も多く聞く。

調査結果でも、やはりこの傾向は目立つ。中学生・高校生・大学生を対象としたTesTee(テスティー)の「コロナウイルスの影響調査(行動編)」(2020年4月)によると、利用/視聴が増えた媒体は、「スマホ」が全年代でトップに。特に中高生では7割以上となった。

出典:TesTee  画像制作:Yahoo! JAPAN(TesTee『コロナウイルスの影響調査(行動編)』のデータを元に作成)
出典:TesTee 画像制作:Yahoo! JAPAN(TesTee『コロナウイルスの影響調査(行動編)』のデータを元に作成)

利用/視聴が増えたサービスジャンルは、全年代で「YouTube」が8、9割以上。同様に「SNS」も7〜9割増加し、「ゲームアプリ」も4〜6割増加していた。SNSやゲームなどは、会いたくても会えない友だちと交流できる場として使われる一方で、スマホ漬けになるきっかけにもなっていたというわけだ。

出典:TesTee  画像制作:Yahoo! JAPAN(TesTee『コロナウイルスの影響調査(行動編)』のデータを元に作成)
出典:TesTee 画像制作:Yahoo! JAPAN(TesTee『コロナウイルスの影響調査(行動編)』のデータを元に作成)

生活リズムや睡眠時間の長さは成績に比例

ところでそもそも、なぜ規則正しい生活が大切なのだろうか。生活リズムが崩れたという場合、大抵は前述の例のように就寝時間や起床時間が遅くなり、夜型の生活になっているケースが多い。平時の中高生などでは、ゲームのしすぎで就寝時間が遅くなり、その結果朝に起きられず、遅刻や欠席が増えるケースが目立つ。

2014年に改正された厚生労働省の「健康づくりのための睡眠指針」によると、就寝時間が遅いとメンタルヘルスに問題が起きたり、就寝時刻や起床時刻の遅さが学業成績の低さに関係しているという。

広島県教育委員会の「平成十五年度『基礎・基本』定着状況調査報告書」でも、小学5年生を対象に国語と算数の試験結果と睡眠時間の関係について調査している。それによると、睡眠時間が長くなればなるほど、成績も比例して良くなった。

大人でも、生活リズムが崩れることで体調を崩したり、睡眠時間が短くなることで仕事の効率が下がった経験があるかもしれない。就寝時間や起床時間を早くし、適切な長さの睡眠を取り規則正しく生活することは、子どもの心身の健康や学業にとって重要というわけだ。

約束と利用時間制限機能で日常に戻ろう

学校や部活、塾や習い事が再開して、すっと日常に戻れた子もいるだろう。しかしもし、休校のときの生活を引きずっていてうまく戻れないなら、少しずつステップを踏んで戻していこう。

ファーストステップとして、徐々に就寝時間と起床時間を休校前に戻そう。寝る前にスマホなどのブルーライトを浴びると睡眠の質が下がると言われているので、寝る直前の利用はなるべく避けるようにしたい。

セカンドステップでは、スマホやタブレットの利用時間をもとに戻していこう。まず、利用しているスマートフォンやタブレットで、現状の利用時間を確認してみよう。

利用時間がわかるスクリーンタイムやスマホ利用を管理できるファミリーリンクの機能をオンにしておき、一日のアプリごとの利用時間と総利用時間を確認してみよう。iOSの場合、「設定」→「スクリーンタイム」→「すべてのアクティビティを確認する」で可能だ。

利用時間の長さを見て、おそらく「使いすぎている」と感じたのではないか。「もっと利用時間を短くしたい」と感じたら、それが第一歩だ。休校前と比べて長すぎるなら、改めて一日の利用時間について話し合ってみよう。学校の生活に支障が出ず、睡眠時間や学習時間、部活動や塾、習い事などに影響が出ない長さがいい。

子どもと話し合って利用時間に関する約束事を決めたら、利用時間制限機能を使うと守りやすくなる。スクリーンタイムやファミリーリンクなどを使えば、カテゴリごとに利用時間を決めたり、スマホの利用をやめる時間も決めることができる。スクリーンタイムの場合は、「休止時間」で終了時間を、「App使用時間の制限」でカテゴリごとの利用時間が設定できる。

就寝時間、起床時間などとともに、ゲームや動画視聴、SNSの利用時間をもとに戻すことで、徐々に日常が戻ってくるはずだ。自分が本来好きだったものややりたかったことを取り戻して、貴重な今という日常を思い切り楽しんでほしい。

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また、Yahoo!ニュースでは「私たちはコロナとどう暮らす」をテーマに、皆さんの声をヒントに記事を作成した特集ページを公開しています。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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