京都産業大学や県立広島大の新型コロナ感染大学生を個人特定・SNSで批判することに意味はあるか

欧州旅行で新型コロナ感染した大学生がネット上で非難され、個人特定の動きもある(写真:アフロ)

新型コロナウイルスで大学生の感染が相次いでいる。

京都産業大学の4年生4人は3月2日~13日にイギリスやスペインなど欧州5カ国に旅行し、帰国後に感染を確認。この3人はゼミの卒業祝賀会やサークルの懇親会にも参加しており、クラスターを発生させた可能性がある。

また広島県の県立広島大でも、女子大生が3月5日~13日にイギリスなどに旅行した後、喉の痛みや鼻水などの症状が出ていたが、卒業式にマスクをして出席しており、こちらも感染を拡大させた可能性がある。

大学側が海外旅行は自粛するよう求めていた中で欧州旅行を決行した上で感染しており、しかも感染後に祝賀会や卒業式などに参加していたことで、ネット上では非難の論調が少なくない状態だ。中には、個人情報を特定したり、特定した情報をトレンドブログなどでさらしものにしている例もある。

犯人探しをしてしまう心理は「正義感」

どちらの大学名で調べても、「誰」「特定」「感染者」「名前」などの検索候補が表示される。Twitterでもやはり「誰」「名前」が候補として表示される状態だ。調べた結果がまとめられたトレンドブログも複数投稿されており、ネット上では熱心に犯人探しが行われている状態だ。

これには、「勝手な行動をして感染した」ことへの非難と、他人に感染を拡大させている可能性が高いことへの非難の両方が含まれているだろう。裏には、「自分たちも自粛しているのに、勝手なことをしている人のせいで感染させられたくない」という心理も働いているのではないか。

実際、「実名報道して罰すべき」とSNSに投稿している人を複数見かけたが、根っこには正義感があり、悪いことをしたのだから罰せられるべきと信じたゆえの行動であることがうかがえる。

学生たちが旅行した3月上旬の状況は

しかし、その正義感は本当に正しいのだろうか。今「欧州旅行」と聞くと自殺行為にしか思えないが、3月初旬はまだ感染者数は中国、韓国、イタリアなどが高いのみで、欧州より日本の方が感染者数が多かった。実際、この頃はサッカーの試合なども通常通り行われていたはずだ。

外務省が「欧州における新型コロナウイルスに関する注意喚起」とする文章を発表したのは3月9日のことだ。この中でイタリアは感染症危険情報レベル3(渡航は止めてください)または感染症危険情報レベル2(不要不急の渡航は止めてください)、スイス,スペイン,ドイツ及びフランスに対して感染症危険情報レベル1(十分注意してください)とされ、英国は含まれていないことに注意してほしい。

確かに、その後の卒業式や祝賀会参加は軽率な行動であり、周囲の濃厚接触者にとっては迷惑な行為だし、問題はあるだろう。しかし、たとえ大学側に自粛を要請されていたとはいえ、感染がまだそれほど広がっていなかった地域にキャンセル料がかかる旅行のキャンセルをしなかったことが、本当に実名報道されるほどの罪に当たるのだろうか。

国内において感染者が少なかったときには、感染者の行動履歴などが公開されることは、感染拡大防止に意味があった。しかし今回は、既に濃厚接触者も特定済みであり、この意味でも意味はなさそうだ。

最近、感染者が罪人同様の扱いとなっている例を見かけることがある。感染者を非難・批判したり、いじめたり、差別する人などもいるようだ。しかし、感染者はただ感染症に感染しただけであり、罪人ではない。悪いのは新型コロナウイルスなのだ。

感染者をさらし者にしても得られるものはない。間違った人を風評被害にさらしてしまうリスクもある。意味のない個人情報特定はやめて、今は各人が感染しないように務めることが大切と言えるだろう。