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マッチングアプリが流行する理由と20代ユーザーが課金する意外な理由

高橋暁子成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト
マッチングアプリが若者に流行中の理由と課金する意外な理由(写真:アフロ)

ゲームアプリについては課金しているユーザーも多く、納得する人は多いだろう。しかし、20代はまだ若く出会いが多いはずだし、お金にシビアな世代なのに、なぜかマッチングアプリには課金しているようだ。

ヴァリューズの「アプリ内課金実態調査」(2018年7月)によると、回答者全体の32.5%がアプリ内課金をするなど、アプリ課金が一般化してきている。年齢・性別に見ると、20代男女は課金している割合が高く、中でも20代男性は47.4%と約半数が課金している。

月平均支払額を見ると、全体では2000円未満のライトユーザーが多い一方で、20代男性の支払額はなんと5200円に上る。課金額が多いアプリは、マッチングアプリ、ゲームアプリ、電子書籍の順となっている。

若者世代がマッチングアプリに課金する意外な理由について見ていきたい。

マッチングアプリが流行している理由

そもそも、なぜマッチングアプリが流行しているのだろうか。今どきの若者たちは、SNSネイティブ世代であり、様々なSNSでつながり合っている。つまり、お互いの交友関係や行動などが筒抜けとなっているとわけだ。

ある大学生は、「Twitterを遡られて前の彼氏を指摘されたことがある。誰と親しいとか筒抜けだから、付き合いづらい」と言っていた。サークルなどで付き合い、別れてしまったら、そこでの人間関係にも響くというわけだ。そこでマッチングアプリが生きてくる。「付き合っても別れても他の人間関係に響かないので気が楽」。実際、大学生の間で流行中だそうだ。

昔から出会い系サイトやアプリはあったが、マッチングアプリは何が違うのだろうか。実はマッチングアプリはFacebookや電話番号認証しているので、出会い系アプリに比べて比較的安全と考えられている。安全に出会いたいというニーズを満たす新しいアプリが、マッチングアプリなのだ。

なぜマッチングアプリで課金するのか?

では、若者はなぜマッチングアプリで課金するのだろうか。1つ目は、オトナと同じ理由だ。つまり、課金しないとマッチングしづらいためだ。課金すると、マッチングした相手とメッセージできたり、自分が上位表示されたり、「いいね」数がわかる、身元バレしづらくできるなど、課金するとほしい機能が使えるようになるのだ。

中でも、知り合いへの身元バレは多くの人が避けたいことだろう。課金すれば、マッチングしたり「いいね」した相手にのみ自分のプロフィールを表示する機能が利用でき、身バレを避けられるようになっているのだ。人間関係を壊したくない若者たちには重要な機能となる。

2つ目は、遊びではなく本気で恋活・婚活する場合、課金した方がマッチングしやすく効率が良いためだ。マッチングアプリはアプリごとに特徴が異なり、婚活、恋活、気楽な出会いと目的に合わせて選べるようになっている。「目的に合わせて選べるので、本気の恋愛目的なのに遊び目的の人とマッチングするということが少なく、使いやすい」という声がある。アプリ課金が一般化してきているため、ゲーム課金に近い感覚で支払われていると考えられる。

3つ目は、マッチングアプリには詐欺を働く業者が多いためもあるようだ。実はマッチングアプリでも詐欺が流行中だ。結婚などをちらつかせて現金を騙し取られる詐欺の他、マルチ商法・ネットワークビジネスなどに誘われるケースもある。マッチングアプリでは顔を合わせることが前提のため、SNSよりもそのような詐欺が働きやすい面があるのだ。

アプリでのやり取りは運営者側が監視してくれており、そのようなおかしなメッセージや相手はブロックしてくれるようだ。一方、LINEなどを交換してアプリ外でやり取りしていると、アプリで切っても連絡がくるなどリスキーなこともあるという。

本気で婚活をしていたのに相手が既婚者だったという話は多いが、「ゼクシィ縁結び」「ユーブライド」など独身証明書を提出できるアプリもあり、そのようなアプリを活用するとリスクは減らせるだろう。

成蹊大学客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNSなどのウェブサービスや、情報リテラシー教育などについて詳しい。書籍、雑誌、Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナーなどを手がける。テレビ・ラジオ・雑誌等での解説等も行っている。元小学校教員。『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)、『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(日本実業出版社)等著作多数。教育出版令和3年度中学校国語の教科書にコラム掲載中。

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