アフターコロナのファーウェイ問題

1月、米電子機器展示会CESのファーウェイ・ブース(写真:ロイター/アフロ)

米国によるファーウェイ制裁が新たな局面を迎えようとしている。今年3月のロイター通信によると、米国政府は、米国製半導体製造装置を利用する第三国企業がファーウェイに半導体を供給することを許可制にする、すなわち実質禁止にするとの新たな制裁案を検討している。現行の「直接製品ルール」は、米国で製造された製品及び米国で開発された技術を含む製品のファーウェイへの販売を禁止するものだが、新たな制裁は製品を作るための製造装置にまで範囲を広げるものになるという。

ファーウェイは傘下企業のハイシリコンによる半導体の自社設計を進めているが、製造の大半は台湾のTSMCに委託している。ファウンドリ(半導体受託生産)最大手のTSMCからの供給が断たれれば、その打撃は計り知れない。

ファーウェイのエリック・シュー輪番会長は3月31日に開催されたファーウェイの決算発表会で、この問題に次のように言及した。

もし米国が(この制裁を)実施したならば、中国政府に選択の余地はない。特定の(米国)企業に対して同様の措置をとるだろう。ファーウェイを見捨てることはなく、なんらかの対応策を採ると確信している。米国がやったように、米企業の5Gチップセット、5G携帯基地局、スマートフォン、各種スマートデバイスの中国での利用を禁止することができないはずはない。

また、(制裁が実施されても)我々は韓国のサムスン、台湾のメディアテック、中国本土のスプレッドトラム・コミュニケーションズからチップセットを購入することもできる。長期にわたりチップセットの製造ができずに損害を被ったとしても、中国で多くのチップセットメーカーが成長すると確信している。さらに韓国、日本、台湾、欧州のメーカーとも協力して、製造を続けられるだろう。

もし米国政府が好き勝手に直接製品ルールを変更できるのであれば、世界的なテクノロジー・エコシステムを破壊することになる。中国が反撃すれば、産業にどのような影響を与えるのか? その破壊的な連鎖反応は驚くべきものとなろう。パンドラの箱が一度開けば、グローバル化された産業チェーンのエコシステムは潰滅的、連鎖的な被害を受ける。破壊されるのはファーウェイだけではないのだ。

新たな制裁が実施されればファーウェイが深手を負うことは間違いない。米国による制裁が始まって以来、ファーウェイは積極的な広報を展開し、同社がいかに海外から多くの部品を輸入しているかをアピールし、また米国の制裁が世界の産業チェーンを損なうものであるかを強調してきた。日本メディア向けにも、性急なルール変更に反対する内容の「BSA(ザ・ソフトウェア・アライアンス)など米業界9団体がウィルバー・ロス商務長官に宛てた手紙」や、対中貿易規制によって米国が半導体分野の主導権を韓国に奪われる可能性があるとの内容の米調査期間ボストン・コンサルティング・グループのレポート「How Restricting Trade with China Could End US Semiconductor Leadership」を紹介するなど、広報活動を強化している。

2016年の米大統領選から「グローバリゼーションの逆流」や、米中の経済圏が分断される「デカップリング」といった議論が集めてきたが、この5年間の流れを見ると、世界経済成長の原動力であるグローバル化は止められないという答えが出つつあったように見える。

ただ、ここで不透明さをもたらしているのが新型コロナウイルス肺炎だ。国際分業の進展や労働力の国際的移動によるグローバリゼーションは世界経済を成長させる原動力であり経済の観点からみればその効用は明らかだ。しかし、新型肺炎が起きてみると、国際分業は一部地域のサプライチェーンの停止が世界的な経済危機に拡大しかねないし、人の移動は感染を広める要因になっている。新型コロナウイルス肺炎、あるいは今後登場するであろう未知の伝染病を考えるならば、グローバル化の抑止に向かう可能性もある。

アフターコロナという新たな要因を加えて、ファーウェイもさらに先が見えなくなりつつある。