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ドラフト会議まであと3日。プロ入りとリーグ戦の崖っ淵から這い上がる中央学院大・古田島成龍

高木遊スポーツライター
最速151キロのストレートとキレの良い変化球が武器の古田島成龍(高木遊撮影)

 140キロ台中盤から後半のストレートを勢いよく投げ込む。中央学院大の古田島成龍(こたじま・せいりゅう)は身長175センチと決して大きくはないが角度があり、変化球もキレがある本格派右腕だ。切磋琢磨してきた同期の同学年の山崎凪とともにプロ志望届を提出しドラフト指名を待っている。

崖っ淵からの修正

 そんな古田島だが、今秋のリーグ戦序盤は自身もチームも崖っ淵の状況にあった。エースとして常に1回戦の先発を任されているが、開幕から2週続けて黒星を喫した。開幕戦の東京情報大戦は8回3失点、2週目の千葉経済大戦は7回2失点で敗戦投手となった。チームも4試合終えて1勝3敗と、リーグ優勝はおろか2位までに与えられる横浜市長杯(明治神宮大会関東代表決定戦)への出場にも黄信号が灯る事態となった。

 しかし、春季優勝の国際武道大との1回戦(9月25日)で古田島は見違えるような投球をする。開幕戦では体の左側が突っ張ったような形で腕が振り切れずにいた印象だったが、この日は躍動感たっぷりのフォームで先頭打者からストレートが147キロを計測するなど勢いのある球をどんどんと投じた。

 そうするとカットボール、カーブ(パワー系とドロップ系)、ツーシーム、チェンジアップといった変化球も冴えて、8回3安打1失点という完璧に近い投球を見せた。9回からはリリーフエースの山崎にマウンドを託し、サヨナラ勝ちに繋げた。さらにチームはここから勢いを取り戻し4連勝。リーグ2位まで浮上している。

 試合後は「今日はシンプルに楽しかったです。山崎に繋ぐつもりで初回から飛ばしました」と笑顔が弾けた。1週試合が無かったためフォームを作り直すとともに「力で勝負するところは力で勝負して、コースを狙うところは狙いました」と気持ちの割り切りも意識して投げたという。

 ドラフトは意識するなという方が無理な話ではあるが、「まずはチームを勝たせることが一番。この仲間たちと楽しく野球をやりきりたいです」と、リーグ最終週(10月9日、10日)に集中を向けている。

ともに切磋琢磨してきた山崎凪(写真右)(高木遊撮影)
ともに切磋琢磨してきた山崎凪(写真右)(高木遊撮影)

部員9人の中学時代

 人口1万人に満たない茨城県南部の河内町で生まれ育ち、中学時代は部員が9人で古田島の球を捕れる捕手がおらず古田島が捕手を務めていたほど。それでもオール県南に選出され、取手松陽では投手育成に定評のある宮本正和監督の指導を受けて投手として急成長。2年春にはエース兼4番打者として県8強入りを果たすなど、高校時代からプロ注目の存在だった。

 大学でも2年春から公式戦のマウンドを踏むと、チームに多くの白星をもたらしてきた。菅原悦郎監督は能力に加え「俺が試合を作るんだという気持ちが前面に出る」という気迫や、「侍ジャパン大学代表合宿に行った際はいつも様々なもの得て帰ってきます」という吸収力の高さにも目を細める。

 山崎とともに奪三振能力が高く、昨秋には防御率1.55の活躍でリーグ優勝に貢献しMVPを獲得した。山崎の存在も刺激になっており「いいライバルですね。ダブルエースで比べられるので負けたくない」と切磋琢磨してきた。

 人懐っこい性格でもあり、先発投手とは思えないほど攻撃時にベンチから声を出すのも魅力のひとつだ。

 NPB球団から調査書が届いたのは2球団のみで支配下ドラフトで指名が無ければ強豪社会人に進むことが決まっている。ドラフト指名は当落線上と言えるが、やるべきことをマウンドでやるしかない。そして、まずはこの仲間たちと1日でも長く野球をやるために、全力を尽くす。

憧れの投手には則本昂大(楽天)を挙げている古田島(高木遊撮影)
憧れの投手には則本昂大(楽天)を挙げている古田島(高木遊撮影)

文・写真=高木遊

スポーツライター

1988年10月19日生まれ、東京都出身。幼い頃から様々なスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、ライター活動を開始。大学野球を中心に、中学野球、高校野球などのアマチュア野球を主に取材。スポーツナビ、BASEBALL GATE、webスポルティーバ、『野球太郎』『中学野球太郎』『ホームラン』、文春野球コラム、侍ジャパンオフィシャルサイトなどに寄稿している。書籍『ライバル 高校野球 切磋琢磨する名将の戦術と指導論』では茨城編(常総学院×霞ヶ浦×明秀日立…佐々木力×高橋祐二×金沢成奉)を担当。趣味は取材先近くの美味しいものを食べること(特にラーメン)。

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