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花粉症ツライけど、眠くなる薬は使いたくない 薬剤師がおすすめの緩和方法は

高垣育薬剤師ライター、国際中医専門員
(写真:WavebreakMedia/イメージマート)

 花粉が飛び始めました。目がかゆくなったり、鼻がむずむずしたりすると、つい手で顔に触ってしまいます。ですが、今年は新型コロナウイルスが流行しているので症状がつらくても、どうかガマンしてください。なぜなら、手洗いや消毒をしていない手で顔に触れると、鼻や目の粘膜からウイルスが侵入するおそれがあるためです。

 感染リスクを避けるために症状を抑えたい。けれど薬で眠くなるのは困る。いったいどう対処すれば良いのでしょうか。

花粉症の薬を飲むと眠くなるのはどうして?

 花粉が飛び始めて、すでに症状がつらいという方も多いと思います。そして、薬局ではたらいていると、この季節によく相談されるのが薬を飲んだときの「眠気」についてです。

 花粉症の治療薬にはさまざまな種類がありますが、そのなかに「抗ヒスタミン薬」という薬があります。体内で「ヒスタミン」という物質のはたらきを妨げる薬です。

 薬のシートに書かれた名前で言うと、アレグラ(一般名:フェキソフェナジン塩酸塩)、クラリチン(一般名:ロラタジン)、ビラノア(一般名:ビラスチン)、ザイザル(一般名:レボセチリジン塩酸塩)、アレロック(一般名:オロパタジン塩酸塩)などが抗ヒスタミン薬に該当します。

 「あ、自分も飲んでいる薬だ!」という方がいるかもしれませんね。では、自分が飲んでいる薬、あるいはこれから飲むかもしれない薬のことをよく知るために「ヒスタミン」のはたらきについて、もう少し詳しくみていきましょう。

 ヒスタミンは、花粉が体内に入ると放出されて鼻の粘膜にはたらきかけ、くしゃみ、鼻水、かゆみなどのアレルギー症状を起こす物質のことを言います。

 ところが、実はこのヒスタミンという物質は、鼻の粘膜だけではなく、脳にも存在しています。そして、脳においては、覚醒を維持したり、集中力、判断力を保ったりするはたらきをします。

 つまり、ヒスタミンは、鼻水やくしゃみでわたしたちを悩ませるだけではなく、頭をすっきりとさせて、仕事や勉強をするうえで大事なはたらきをする物質でもあるのです。

 では改めて「抗ヒスタミン薬」の作用についてみてみましょう。飲んだ抗ヒスタミン薬が鼻の粘膜で作用すると、くしゃみや鼻水などの症状を和らげてくれます。

 ところが、抗ヒスタミン薬が脳へ移行して、ヒスタミンのはたらきを妨げるとどうなるでしょうか。ヒスタミンによる覚醒を維持するはたらきが妨げられて、眠気が起こったり、集中力や判断力が低下したりします。これが抗ヒスタミン薬を飲むと眠くなる仕組みです。

花粉症の時期を快適に乗り切るには自分にあった薬を選ぶことが大事

 花粉症の治療薬は、不快な症状に悩まされることなく普段通りに仕事や勉強に集中したりする目的で用いますよね。

 それなのに、薬のせいで眠たくなったり、知らないうちに集中力が低下したりする「インペアード・パフォーマンス」が起こるのでは、とてもいつも通りに過ごせるようになったとは言えません。それどころか、無自覚のうちに判断力が鈍ったせいで運転ミスを起こしたり、機械等の操作を誤ったりするなど重大な事故につながるおそれだってあります。

 だから、花粉症の時季を快適に、安全に過ごすために自分の体にあった薬を選ぶことが大切です。

眠くなりにくい薬は病院に行かないともらえない?

 では、眠くなりづらく、集中力が低下しにくい薬はあるのでしょうか。

 答えをずばり申し上げると、眠くなりにくい花粉症の治療薬はもちろんあります。

 「でも、それって病院じゃないともらえないでしょう?」と思った方はどうか安心してください。忙しくて病院に行けない方でも、眠くなりにくい薬を手に入れる方法が2つあります。

 1つ目はオンライン診療を活用する方法です。

 オンライン診療は、スマートフォンなどのオンライン通信ができる端末、あるいは電話を使って、自宅で医師の診察を受ける仕組みです。この仕組みを使えば、病院に出かけることなく、自宅にいながら自分にぴったりの薬を医師に処方してもらえます。

 もう1つは市販薬を活用する方法です。たとえば、これまで毎年花粉症で受診していて、いつもの薬で症状が安定している方が通院の時間が取れないときなどには、よい選択肢のひとつになるでしょう。

眠くなりにくく、脳のはたらきが鈍くなりづらい市販薬にはどのようなものがあるの?

 では、眠くなりにくい市販薬にはどのようなものがあるのでしょうか。早速見ていきましょう。

●抗ヒスタミン薬

 くしゃみ、鼻水だけではなく、鼻づまりも含めた全般的な症状の改善が期待できるのが抗ヒスタミン薬です。

 眠くなりにくい抗ヒスタミン薬としては、病院でもらうのと同じ成分の「フェキソフェナジン塩酸塩(商品名:アレグラFXなど)」、「ロラタジン(商品名:クラリチンEX)」があります。

 これらの薬は眠くなりにくく、集中力、判断力、作業効率の低下を起こしにくいことが確認されています。自動車運転などの操作の制限もありません。

 一方、抗ヒスタミン薬には多くの種類があるので、なかには眠気などの副作用が出る薬もあります。また、前立腺肥大や緑内障など治療中の病気がある場合は症状が悪化することがあるため注意が必要です。

●漢方薬

 日本アレルギー学会が作った「アレルギー総合ガイドライン2019」にはいくつかの漢方薬が挙げられています。そのなかでも、ドラッグストアなどで手に入れやすいのが「小青竜湯」です。薄い水っぽい鼻水が出るときなどに用います。

 なお、時々患者さんから「漢方薬には副作用はないのでしょう?」と聞かれますが、そんなことはありません。たとえば小青竜湯に含まれる生薬「麻黄」の成分「エフェドリン」によって不眠、動悸などの症状が出ることがあります。また「甘草」の成分「グリチルリチン酸」により、手足のだるさや脱力感が出て、適切な処置をとらずに放置したままにしておくと症状が重くなり、健康に影響を及ぼすことがあります。

●点鼻薬

 点鼻薬は噴霧するなどして鼻の粘膜に作用させる薬です。点鼻薬とひとくちにいってもさまざまな種類がありますが、眠くなりにくいのは「ステロイド」の点鼻薬です。くしゃみ、鼻水、鼻づまりという、鼻のつらい3症状の全てに対して改善が期待されます。

 市販薬では、病院でもらうのと同じ成分の「フルチカゾンプロピオン酸エステル(商品名:フルナーゼ点鼻薬<季節性アレルギー専用>)」、「ベクロメタゾンプロピオン酸エステル(商品名:パブロン鼻炎アタックJL<季節性アレルギー専用>など)」等があります。

 使用する際の注意としては漫然と使い続けないことです。たとえば上記のフルチカゾン、ベクロメタゾンは「他のステロイド点鼻薬の使用期間も合わせて、1年間に3ヵ月を超えて使用しないでください」とあります。もし使用が3ヵ月を超えても症状が改善しない場合は、ほかの疾患が隠れているおそれがあるため受診がすすめられます。

 ここまで眠くなりにくい市販薬をいくつか紹介しましたが、ドラッグストアに行くとたくさんの花粉症対策の薬が置いてありますよね。

 どの商品にどの成分が入っているのかが分かりづらかったり、どの薬を選べば良いのか悩んだりすることがあると思います。また、持病や現在飲んでいる薬がある方では、飲み合わせに注意を要することがあります。

 ですから、少し面倒かもしれませんが、事前に主治医や薬剤師に相談して、安全・安心に市販薬を使うようにしたいですね。

薬以外の花粉症対策

 花粉症対策では、体のなかに入ってくる花粉を減らすことも重要です。花粉を寄せ付けないためには、どのような対策をしたらよいのでしょうか。

●マスクをつける

 厚生労働省の「花粉症Q&A集」によると、マスクは吸い込む花粉の量をおよそ1/3~1/6に減らし、鼻症状を少なくする効果が期待できるとされています。

 ただし、「風が強いと鼻の中に入る花粉はマスクをしていても増え、効果は減弱するといった報告もあります」という記載もあります。天気によっては薬の力も借りて症状をしっかり抑え込むという対処も必要そうですね。

●メガネをかける

 メガネは目に入る花粉をおよそ1/2~1/3まで減らすことができると報告されています。

 花粉症用のメガネではなく普通のメガネでも構いません。厚生労働省の資料「的確な花粉症の治療のために(第2版)」によると、メガネなしの場合、結膜の上の花粉の数が791個だったのに対し、通常のメガネの場合は460個と報告されています。

 そのほかの対処としては、外出先から帰ったらうがい、洗顔をして花粉を洗い流すこと、鼻の粘膜をよい状態に保つためにお酒やたばこは控えめにすること、花粉がつきやすいけばだった毛織物などの上着での外出を避けること等があります。色々な対処法があるので、自分が取り入れやすいものから試してみると良いですね。

 花粉症のつらい症状は、自分にあった薬での対処と、花粉を寄せ付けない工夫で軽くすることができます。これら2つの対処法をうまく活用して花粉症シーズンを快適に、安全に乗り切りましょう。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

◇参考

薬剤師ライター、国際中医専門員

2001年薬剤師免許を取得。2017年国際中医専門員の認定を受ける。調剤薬局、医療専門広告代理店等の勤務を経て2012年にフリーランスライターとして独立。薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書「犬の介護に役立つ本」(山と渓谷社)の出版を契機に「人」だけではなく「動物」の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。

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