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新型コロナ対策がムダになる「残念すぎる手洗い」 3つの落とし穴

高垣育薬剤師ライター、国際中医専門員
感染対策の手洗い(写真:アフロ)

 新型コロナウイルス予防のために大切な手洗いやアルコール消毒。手洗い後、水を止めるためにピカピカの手で水道のレバーに触ったり、アルコール消毒液節約のためにポンプを半押しで使ったりしていませんか? 手洗いを終え、ほっとしたそこに、せっかくの手洗いを残念な手洗いにする落とし穴があります。

手洗い後、水をどうやって止めていますか?

 厚生労働省が示した手順にしたがって爪も、爪と皮膚の境目も、親指の付け根も念入りに、かつ米疾病予防管理センター(CDC)が示す通りに20秒以上手を洗ってピカピカになりました。

 完璧に手洗いをしたのに、キレイになったその手で水道のレバーに触れて水を止めていませんか? これが1つ目の落とし穴です。

 最近はレバーに触れることなく自動で水が出てくるタイプの水道も多いのですが、手で操作が必要な水道の場合は手洗い後に注意が必要です。手洗い後にレバーなどに触れたらせっかくキレイにした手が再び汚れてしまうからです。

 ではどうやって水を止めるのかというとペーパータオルを使います。もしペーパータオルがなかったら手指を使わず、肘などを使って操作するようにしましょう。

手洗い後、濡れた手のまま髪の毛や化粧室のドアノブなどに触っていませんか?

 

 手洗い後、化粧室を見回してみるとペーパータオルがありません。カバンやポケットを探してみますがハンカチもありません。そんなとき、濡れた手でヘアスタイリングしたり、パッパッと水を払ってドアノブを触ったりしていませんか? これが2つ目の落とし穴です。

 髪の毛には誰かのくしゃみや咳で飛び散った飛沫によってウイルスが付着している可能性があります。ドアノブには、何らかのウイルスや細菌を含む飛沫に触った誰かの手を介した微生物が付着しているかもしれません。

 「医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン」によると、濡れた手からさまざまな表面へ移動するウイルスや細菌などの微生物の数は完全に乾いた手からの移動の数より多いことが示されています。

 濡れた手を介して自分や周りの人にウイルスなどの微生物を運んでしまうことがないよう、手はしっかり乾燥させましょう。そのためには手洗い後にペーパータオルがなかったときに対応できるよう、清潔なハンカチなどを持ち歩くように心がけたいですね。

 また、手洗い後に手を十分に乾燥させずに濡れたままでいることは、アルコール消毒液を使った手指消毒をも台無しにする恐れがあります。手に残った水分でアルコール消毒液が薄まり、消毒の効果が低下するためです。

アルコール消毒液節約のため、半押ししながら少しずつ使っていませんか?

 アルコール消毒液が手に入りづらい状況が続いています。いつ入手できるか分からないからといって、現在の手持ちのアルコール消毒液を少しずつ大事に使っているという人もいるのではないでしょうか。これが3つ目の落とし穴です。

 前述の「医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン」によると、アルコールベースの手指衛生用品の効き目は、使用されるアルコールの種類、濃度、接触時間、使用量、塗布時に手が濡れていたかなどの要因が影響するとされています。

 そして、アルコール消毒液の使用量が0.2~0.5mLの少量の場合では、普通のせっけんと水による手洗いより優れた効果は得られないとしています。

 日本感染症学会の「院内感染対策講習会Q&A」によると、市販のアルコール含有消毒液は1プッシュの量が製品により1~3mLまであると報告されています。したがって、1プッシュを押し切らずに節約して使っていたのでは消毒に適した使用量に至らず、期待した効果が得られない可能性があります。

 では、アルコール消毒液を使って手指を消毒するにはどうするのかというと、適切な量のアルコール消毒液をよく擦りこみ、30秒以上かけて乾燥させます。

 新型コロナウイルス予防のための手洗いや手指消毒が当たり前の習慣となってきた今だからこそ、改めて自分の手洗い・手指消毒の仕方に “うっかり” による落とし穴がないかを確認して、身を守ることに役立ててみませんか。

【参照】

・How to Protect Yourself(米疾病予防管理センター)

https://www.cdc.gov/coronavirus/2019-ncov/about/prevention.html

・手洗いについて(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000593494.pdf

・衛生的な手洗いについて 公益社団法人日本食品衛生協会(厚生労働省)

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/0000076156.pdf

・医療現場における手指衛生のためのCDCガイドライン(監訳:満田年宏、編集制作:国際医学出版株式会社)

・院内感染対策講習会Q&A(日本感染症学会)

http://www.kansensho.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=4

・手洗い/手指衛生の重要性と方法

http://www.kankyokansen.org/common/fckeditor/editor/filemanager/connectors/php/transfer.php?file=/publication/edu_pdf/uid000001_30342E706466

薬剤師ライター、国際中医専門員

2001年薬剤師免許を取得。2017年国際中医専門員の認定を受ける。調剤薬局、医療専門広告代理店等の勤務を経て2012年にフリーランスライターとして独立。薬剤師とライターのパラレルキャリアを続けている。愛犬のゴールデンレトリバーの介護体験をもとに書いた実用書「犬の介護に役立つ本」(山と渓谷社)の出版を契機に「人」だけではなく「動物」の医療、介護、健康に関わる取材・ライティングも行っている。

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