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ホークス小久保二軍監督はなぜ、チーム5本塁打より「川原田の見送りストライク」をベタ褒めしたのか

田尻耕太郎スポーツライター
2年目内野手の川原田純平(筆者撮影)

【4月1日 ウエスタン・リーグ タマスタ筑後 1208人】

中日     `020101000 4

ソフトバンク `30322000× 10

<本塁打>

【H】リチャード2号・3号、井上1号、黒瀬3号、正木1号

真っ先に挙がった初回の攻撃

 開幕10戦目で8勝目を挙げて好調な、小久保裕紀二軍監督が率いるホークス二軍。1日の中日戦(タマスタ筑後)は若鷹ロマン砲の本塁打5発でド派手に勝利した。

 リチャード内野手の2発をはじめ井上朋也内野手、黒瀬健太内野手、そして正木智也外野手には“プロ公式戦1号”が飛び出した。

 試合後に小久保二軍監督へ取材。メディア側は当然、5ホーマーの話題から質問を振った。しかし、小久保二軍監督が切り出したのは意外な場面だった。

「今日のポイントは、(試合後ミーティングで)みんなの前でも話したんですけど、初回の川原田ですよ」

昇格初打席でチームのために「我慢」

 初回無死一塁、2番遊撃スタメンの川原田純平が打席に入った。

「川原田は今年二軍初打席。本人は絶対に打ちたいところなんです」

 初球は、一塁走者の緒方が偽盗を仕掛けて見送りストライク。

 そして、続く2球目のストライクも見送った。あっという間に追い込まれてしまった。だが、小久保二軍監督はそれを絶賛したのだった。

「2球目に緒方がスチールを仕掛けた。(チームの)ルール的には打ちにいってもよかったんです。でも、それを見送った。2ストライクになるのに」

 さらに言葉を継ぐ。

「本人に聞いたら、スタートが良かったので打ちにいくのをやめた、と。今までのホークスの選手なら間違いなく振りに行くところを、しかも昇格してすぐに打ちたい場面で我慢をして、チームプレーに徹した。そしてチャンスを作ったところを褒めました」

 追い込まれたことで3球目から右打ちのサインに切り替わった。結果、ライト前へポテンヒットを打ち、チャンスが広がり初回の3点先取につながった。

19歳川原田、今春キャンプはA組スタート

 川原田は2年目、19歳の内野手。まだ一軍未出場だが、今春の宮崎キャンプではA組に抜てきされるなど期待の大きな若鷹だ。しかし、2月5日に右脚を痛めて右半膜様筋2度損傷を診断され無念の離脱をしていた。

 先頃から三軍戦で復帰し、そのカテゴリーでは走攻守ともに飛び抜けた存在感を発揮。そしてこの日からようやく二軍戦合流を果たしていた。

 この試合では四回の3打席目では2点タイムリーも放つなど、4打数2安打2打点で1盗塁も記録した。

2打席目は反省促す

 ただ、小久保二軍監督は、期待しているからこそ“指摘”も忘れない。

「2打席目も走者一塁で回ってきた。初球に(一走の)九鬼がスタートしたのに、打ちにいった(結果はファウル)。それは(チームの)ルール違反。初回に出来たんだから、2打席目のせなアカンやろという話はしました」

 小久保二軍監督も、すべての打順や選手にそれを求めるつもりはない。「クリーンナップにはやれと言わないよ」。ただ、川原田は小兵で1、2番打者として育っていってほしいと考えている選手だ。

「彼がこの世界で生きていくうえで大事なこと。それを評価してあげるチームが大事」

 常勝チームの礎づくりへ、小久保イズムが若鷹へ浸透していっている。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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