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ホリエモン球団・北九州、初試合零封負けも西岡剛監督「最っ高!」 はつらつ「いくよ、カモンベイビー!」

田尻耕太郎スポーツライター
手前が西岡選手牽引監督。隣は寺原コーチ

 ホリエモンこと実業家の堀江貴文氏が創設した新球団・福岡北九州フェニックスが11日、チーム結成後初の対外試合となるオープン戦に臨んだ。

 フェニックスは2月18日に体勢発表会を行い、3月1日から9日まで長崎県平戸市でキャンプを行ってきた。

 迎えた初試合の対戦相手は、社会人のKMGホールディングス(九州三菱自動車から今年改称)。今月19日に開幕する「ヤマエ久野 九州アジアリーグ」に向け、新設チームの仕上がり具合は? そしてかつて千葉ロッテマリーンズや阪神タイガース、米大リーグ・ツインズでも活躍した西岡剛選手兼監督はどんな初采配を振るったのか。

寺原コーチが推す開幕候補が好投

【3月11日 オープン戦 KMGホールディングス夜須グラウンド】

フェニックス `000000000 0

KMG    `010000001 2

※特別ルール

<投手リレー>

【P】本野、松本、本村、力丸、湊

【K】藤松、横崎、飯村

<本塁打>

なし

<スタメン>

【P】6妹尾 7吉岡 4松尾 5中村 9古賀 D鈴木 3宮本 2渡邊 8宇土

【K】9益田 8村崎 D三野原 7吉岡 3光安 5基村 6中島 4河野 2大久

先発した本野
先発した本野

2安打した松尾
2安打した松尾

<戦評>

 KMGホールディングスは二回、2アウト一、三塁から大久保が右越え二塁打を放ち先制。しかし、2点目を狙った一塁走者を、フェニックスは見事な連係プレーで本塁アウトにして追加点を防いだ。

 初試合だったフェニックスは毎回のように得点圏に走者を置いた。3番に座った元DeNAの松尾が2安打を放つなど気を吐いたが、チームとしては決定打が出なかった。

 フェニックス先発の左腕・本野は5回1失点。寺原コーチ(元ソフトバンクなど)が「球速表示以上に速く見える」と評する直球を中心に好投。寺原コーチも19日のリーグ開幕投手の有力候補であることを認めた。

 試合は両チーム申し合わせの特別ルールで九回裏も行われ、KMGが最終回にも犠飛で1点を追加した。(了)

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西岡スキッパー「最っ高なゲーム」

試合後の短いミーティングでナインに拍手を送った
試合後の短いミーティングでナインに拍手を送った

 フェニックスは初めての試合を勝利で飾れなかった。

 しかし、チームの「スキッパー」(舵取り役)こと西岡剛選手兼任監督は心底明るかった。

「最っ高なゲームでした。キャンプで伝えたことがそのまま出来た野球でした」

 初めての試合。しかもオープン戦だ。「まだ勝ち負けはどうでもいい」。打撃陣には第1ストライクからどんどん振っていくことを指示していた。

「みんな出来ていましたよね。直球でも変化球でもバットを出していた。変化球に泳がされても、ちゃんと当てて前に転がしていた。こちら(首脳陣)の言葉をちゃんと表現してくれる。最高ですよ」

 この日はノーサインだった。攻撃中は三塁コーチャーを務め、無死一、二塁の場面でも「サインはないよ、どんどん打って行け」と大きな声を飛ばしていた。

「ヒットも出て、初回からランナーも溜められた。バントのサインとか、チーム打撃をして戦えば3点は入っていますよ。だけど今日は勝ち負けじゃない。19日のリーグ開幕に向けて、どんな風に打席に立つかが大事だった。まだスイッチを入れるところじゃない。シーズンに入れば、スイッチは入ります。だから今日は素晴らしかった」

 チームはまだメンバーが集結して2週間あまりだ。それでも、ダグアウトは活気に満ちていた。その中で誰よりも存在感を発揮したのが、やはり西岡スキッパーだ。

相手打者にも「ナイストライ!」

 声掛けも独特だ。

 四回表の攻撃。ヒット2本で走者を溜めたが無得点の場面では「最高最高、打ちまくって0点。これでいいよ」と手を叩いた。

 四回裏の守り。2人を打ち取って、自軍ベンチから「3人で」と声が飛ぶも「3人とか要らない、4人で良い。ウチは3人で、とかやってないんで」と発して、隣にいた寺原隼人コーチを笑わせていた。

 五回表の攻撃が三者凡退に終わっても、「良いテンポだよ」と笑顔。また、相手チームの打者がセーフティバントを仕掛ければ「ナイストライ!」と声を上げ、強振すれば「グッ(ド)スイング」と敵チームなのに褒める。

 もちろん、味方守備陣への声掛けも忘れない。細かなポジショニングの指示なども送りながら、「ゲッツーとりにいくよ、カモンベイビー!」と盛り立てる。「カモンベイビー」はあらゆる場面で聞こえてきた。

選手の自主性を信頼

 若い選手たちにとって、西岡スキッパーは最高のモチベーターだ。“○○をしなくちゃいけない”逆に“○○をしちゃいけない”という言葉は投げかけない。選手の自主性を大切にしながら、成長を促している。

「今日の試合結果だけ見ると、負けたと捉えられると思う。それは事実ですが、実際に今日の試合を見てくれた人たちは『北九州、なかなかやるんじゃないか』と思ってくれたはず」

 選手たちのスピード感やパワー、そして表現力。たしかに未来への可能性を感じさせるプレーの数々だった。

 ヤマエ久野 九州アジアリーグは3月19日(土)に、フェニックスのホーム3連戦から開幕する。「楽しみですよ」と西岡スキッパー。昨季リーグ優勝の火の国サラマンダーズを北九州市民球場に迎え、産声を上げたばかりの不死鳥がいよいよ飛び立つ。

※写真はすべて筆者撮影

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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