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ホークス小久保二軍監督、ファーム開幕投手に育成再出発の19歳右腕を抜てきか「開幕にぶつけたら面白い」

田尻耕太郎スポーツライター
高卒2年目の最速154キロ右腕、田上奏大投手(筆者撮影)

【3月10日 ウエスタン教育リーグ タマスタ筑後 466人】

中日     `010000000 1

ソフトバンク `100000000 1

<バッテリー>

【D】松木平、福島、R・マルティネス、福、森、加藤翼――郡司

【H】田中正、佐藤宏、田上――渡邉

田上奏大、152キロ3回完全

 福岡ソフトバンクホークスの田上奏大投手が七回から3番手で登板し、3回を打者9人で抑えるパーフェクト投球を披露した。

 この日は最速152キロをマークした直球を主体にした爽快な投球だった。最初の回は石岡を一ゴロ、石垣を詰まった二直、福元を三ゴロと計5球で片づけた。2イニング目もブライトからの三振を含みながら8球の省エネ投球。3イニング目は一軍でも実績ある中日・堂上から151キロ直球で空振り三振。外野に飛ばされた打球は一度もなかった。

「球数も少なくて(3回25球)、自分の中では去年も含めて一番良かった投球でした。追い込んでから早く打ち取れたし、しっかりコースにも投げられました」

 気迫を前面に押し出した。「覚悟を持って投げました」と胸を張る。そのヒントは意外なところで得た。

「調子が悪くて悩んでいた時、たまたま寮の風呂場で吉本(二軍)打撃コーチと会って『そんな顔するな。覚悟を持ってやれよ』と声を掛けてもらったんです。そうだなと思って、自分の中で覚悟を決めてマウンドに上がることを大切にしました」

プロ1年で支配下解除、育成も前向きに

 異色の経歴でプロ入りした。元々外野手で投手への本格転向は高3の6月だった。投手歴1年未満でソフトバンクへ。昨季は周囲も「まだ勉強中」と温かく見守った。

「もう2年目。昨年は三軍で一年間投げられた(21試合1勝2敗、防御率3.12)。ただ、去年は自分の中でどこか怪我をしないようにと“置きに行く”ところがあった。今年は自分の待っている力はマウンドで全部出し切る覚悟です。結果は後でついてくるものだと思っています」

 現在の背番号は「156」だ。昨年は「70」だった。ドラフト5位入団からわずか1シーズンで、支配下契約解除での育成再契約を打診された。

 悔しくないはずはない。だが、田上は言う。

「悔しさが今の原動力となっている部分は少なからずあります。だけど、背番号が変わっただけと捉えています。やることは去年と変わっていません。一軍に上がるために努力を積むだけです。育成になることを家族に告げた時も、そんな風に言ってもらいました。叔父さんからも」

 叔父は元ソフトバンク捕手でベストナインも獲得したことのある田上秀則氏だ。尊敬する叔父の助言も田上の大きな支えとなっている。

小久保二軍監督「相当良いモノ」

一番右が小久保二軍監督(筆者撮影)
一番右が小久保二軍監督(筆者撮影)

 また、小久保裕紀二軍監督が、田上の才能をかなり高く評価している。この日の試合後に取材に応じてくれた。

「彼は3桁(背番号)ですけど、ファームでは(先発の)軸で回ってもらおうと思っている。それくらいできると、僕も投手コーチも判断しています。もちろん、上(一軍)との兼ね合いもあるので、こちらだけで判断は出来ませんが、相当良いモノを持っていると判断しています」

 さらに「ウエスタンの開幕戦でぶつけたら面白いかな、と。これも上との絡みがありますけど。それくらいのモノはキャンプから見せてくれている。キャッチボールひとつをとっても違う」と3月18日のウエスタン開幕戦(オリックス戦=タマスタ筑後)で開幕投手に抜てきするプランがあることも明らかにした。

 小久保二軍監督には現役時代のイメージもあり大砲候補の育成に期待する声も多いが、将来のエース発掘にも注目だ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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