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3年前に「侍ジャパンU―18」を苦しめた火の国右腕が、ソフトバンク三軍相手に見せた”投手の真髄”

田尻耕太郎スポーツライター
火の国サラマンダーズの源隆馬投手(筆者撮影)

 8月1日、九州アジアリーグ交流戦で、同リーグの火の国サラマンダーズが福岡ソフトバンクホークス三軍とタマホームスタジアム筑後で対戦した。

1勝1敗で、3日から藤崎台2連戦へ

【8月1日 九州アジアリーグ交流戦 タマスタ筑後 224人】

火の国    000030005 8

ソフトバンク 010000110 3

<投手リレー>

【火】源、◯西島、石森

【H】重田、桑原、村上、●中村亮

<本塁打>

【H】牧原巧

<スタメン>

【火】4高山 3小窪 6宇土 8水本 Ⅾ吉村 7河添 5高橋 2深草 9浦木

【H】Ⅾ緒方 6川原田 7笹川 3黒瀬 5小林 2牧原巧 4伊藤 9荒木 8中村宜

<戦評>

 火の国が同点の九回表に猛攻。1イニング3本のタイムリー三塁打などで一挙5点を奪った。

 1死二塁から途中出場で2番に入っていた猪口が中越え適時三塁打を放ち勝ち越しに成功。その後4番・水本が適時三塁打、途中出場の5番・植月が左前適時打、7番・高橋が2点適時三塁打と攻撃の手を緩めなかった。

 火の国は五回表にも一気に3点を奪うなど、勢いのある攻撃を見せた。1番・高山は2試合連続で2安打2盗塁をマーク。九州アジアリーグの首位打者&盗塁王の力を示した。

 ソフトバンクは二回に6番・牧原巧が本塁打を放ち先制。七回は先頭の5番・小林の三塁打を足掛かりに得点し、八回は途中出場の石塚の適時打で一旦は同点とした。大きく勝ち越された後の九回裏も無死一、二塁と反撃機を作ったが、今秋ドラフト候補の石森の前にホームに還すことは出来なかった。

 前日の今カード初戦はソフトバンクが3-1で勝利しており、タマスタ筑後では1勝1敗だった。3日、4日は同じ対戦が火の国主催ゲームで、リブワーク藤崎台球場に舞台を移して2連戦が行われる。(了)

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20歳の源が「6,7割」で投げるワケ

今秋のドラフト候補にも挙がりそうだ(筆者撮影)
今秋のドラフト候補にも挙がりそうだ(筆者撮影)

 20歳右腕が「ピッチングの真髄」を見せた。

 火の国サラマンダーズの源隆馬がソフトバンク三軍を相手に7回4安打2失点。白星こそつかなかったが、チームに勝利を呼び込む好投だった。

 本来は制球力抜群の右腕だが、立ち上がりは連続四球。二回には先制ソロを浴びて、次打者にヒットも許した。しかし、大崩れはしない。「立ち上がりはボールやマウンドの違いに戸惑ってしまった。前回ここ(タマスタ筑後)で投げた時と同じ。反省です」と悔しがったが、「走者を背負ってから感覚が良くなり、三回からは修正できた」と笑みを浮かべて振り返った。

高校時代に「宮崎県選抜」で若侍相手に快投

 火の国は150キロ級の直球を投げる投手がずらり。独立リーグ屈指の好投手が揃っている。その中で、源の直球は140キロ前後。ほとんどが130キロ台後半だ。それでもソフトバンクの打者は差し込まれていた。

「6,7割の力で投げる。質を求めています」

 球速を出そうと思えば、もっと出せる。宮崎学園高校時代は最速147キロを誇る右腕だった。高3年夏の大会後だった2018年、宮崎県選抜に選ばれて侍ジャパンUー18の壮行試合に登板した。1イニングだけだったが、現広島カープの小園、現中日ドラゴンズの根尾を含む3三振でアウトをとった。

「だけど、あの頃は力任せで投げていただけでした」

 ちなみに、この壮行試合で宮崎県選抜の先発を務めて好投したのが、現読売ジャイアンツの戸郷翔征だった。源と戸郷はこの年の宮崎高校球界を代表する投手だった。

「戸郷とは今も良く連絡を取っています。刺激を受けています」

防御率1.43の安定感

 高校卒業後は國學院大學に進学するも昨年途中に中退。昨年のうちに退部をしているため、今秋のドラフト指名の対象選手である。

「自分ではまだ力が足りないと思っています。技術よりもメンタルをもっと鍛えないといけない」と表情を引き締めたが、九州アジアリーグ・公式試合では今季これが9試合目の登板で4勝0敗、防御率1.43の好成績を残している。

 昨今の球界は剛速球投手が急増し、150キロ台でも驚かなくなってきた。しかし、野球はスピードガンコンテストではない。投手の役割は見せかけの良い球を投げることではなく、「勝つ球」を投げて失点を少なくアウトを積み重ねることだ。

 若干20歳の右腕がそれを体現した。本当に惚れ惚れするピッチングだった。

源隆馬(みなもと・りゅうま)

2000年11月20日生まれ、宮崎県出身。身長178センチ、体重80キロ。右投左打。実家がソフトバンクキャンプ地の近くで「子どもの頃はいつも観に行っていた」。ただ、小学生時代は水泳に夢中。本格的に野球に取り組んだのは中2から。宮崎学園高校から國學院大學に進学。1年生でベンチ入りしてリーグ戦登板も果たしたが、中退して火の国サラマンダーズで今年からプレー。背番号21。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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