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8者連続奪三振を広島カープ戦で記録! ホークス笠谷俊介が、現在二軍で取り組んでいること

田尻耕太郎スポーツライター
一軍ローテ返り咲きを狙う(6月24日、筑後での練習時に筆者撮影)

 福岡ソフトバンクホークスの笠谷俊介投手が6月20日に由宇球場で行われたウエスタン・リーグの広島東洋カープ14回戦で、初回1アウトから三回終了まで8者連続奪三振を奪うなど、6回13奪三振1失点の快投で2勝目を挙げた。

リーグ記録に1つ届かず

 1試合連続奪三振のウエスタン・リーグ記録にはあと1つ届かなかった。最多記録保持者は当時広島カープの藤本和宏投手で、1970年7月1日の西鉄ライオンズ1回戦(広島)で達成した9連続(5回2死~8回2死)だった。

 なお、過去にウエスタン・リーグで8連続奪三振をマークしたのは次のとおり。

南海ホークス・合田栄蔵、1962年5月13日の西鉄2回戦(香椎)

中日・星野仙一、1971年5月26日の南海3回戦(中日)

中日・佐藤亮太、2006年8月16日のソフトバンク15回戦(雁の巣)

中日・小熊凌祐、2011年6月8日の阪神11回戦(甲子園)

中日・笠原祥太郎、2017年8月20日のソフトバンク21回戦(タマスタ筑後)

 あの星野仙一氏にも肩を並べる快挙だ。しかし、笠谷本人は「三振にはこだわっていません。一軍に戻るための課題を向き合っています」ときっぱり話した。

 広島戦は「立ち上がりは変な感じでした」と振り返る。マウンドに立った感覚に違和感を覚えた。球を制御できずに高めに浮き、先頭の安部にはいきなり四球を与えた。

「これはいけないと思い、投手プレートにかける左足の角度を変えたんです」

 もともとは爪先を真っ直ぐ捕手方向に向けるが、かかとを三塁側にずらして斜め向きにした。「これが良かったと思います」。その直後からの奪三振ラッシュ。結果もさることながら、マウンド上での修正力の高さを証明してみせた。

ファーム降格後2試合で好投

 笠谷は今季、入団7年目にして自身初となる開幕ローテ入りを果たした。しかし、成績が振るわずに5月上旬にはリリーフに回り、5月27日の中日戦(バンテリンドーム)で再び先発に戻ったが3回2安打も5四球で3失点したことでファーム降格となっていた。

「今は自分の課題と向き合っています」

 ファーム戦では6月10日の中日戦(タマスタ筑後)に先発して6回1安打7奪三振無失点と好投。そして件の20日の広島戦の6回3安打13奪三振1失点と続けて好結果を残して、一軍復帰へアピールを見せている。

「一軍では投げ急いでしまい、腕だけで投げていた。今はゆっくり、ゆっくり投げるという意識を大切に『体で投げる』ことをテーマにしています。それが出来れば、もともと課題にしている『横の時間』(一塁側を向く時間、体の開きを抑えるための動き)も自然と出来るので」

 練習では出来ても試合では難しいと苦笑いするが、二軍戦とはいえ無双の投球を見せているのは、少なからず課題に取り組んだ成果が出ている証である。

”記録”は「知らなかった」

 倉野信次ファーム投手統括コーチも「二軍とはいえ、8者連続奪三振なんてなかなか出来るものじゃない。すごいですよ」と興奮気味だった。

 ちなみに、その連続奪三振の記録について、笠谷は登板しているときは知らなかったらしく、「倉野コーチが『(四回の先頭は)絶対に三振取れよ』と言ってくるので、なんでかなと思っていました。普段そんなこと言わないので。記録がかかっているのならば教えてくれればよかったのに(笑)」と冗談めかして話した。

 「9人目」で対戦したのはファーム調整中だった長野久義で、結果は中前安打だった。ただ、続くクロン、そして正随からは連続空振り三振を奪ってみせた。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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