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5球団1位競合のドラフトから4年。ホークス田中正義「前を向くしか」復帰から2度目の登板

田尻耕太郎スポーツライター
登板後はポジティブな言葉を並べた(筆者撮影)

大本が右越え本塁打

 10月12日、四国アイランドリーグplusとの定期交流戦で、福岡ソフトバンクホークス三軍と愛媛マンダリンパイレーツがタマホームスタジアム筑後で対戦した。

 

【10月12日 定期交流戦 タマスタ筑後 208人】

愛媛     100101000 3

ソフトバンク 10331010× 9

<バッテリー>

【MP】萩原、長島――福田

【H】田中、村上、吉住、大関、渡辺健――石塚、渡邉陸、堀内

<本塁打>

【H】大本

<スタメン>

【MP】4新井 D岡村 9渡部 5小笠原 8植田 2福田 7中西 3有間 6真山

【H】4増田 7舟越 8田城 3黒瀬 D清水 5小林 9中村宜 2石塚 6勝連

<戦評>

 若鷹打線が長打攻勢。1点ビハインドの一回裏の増田の当たりはラッキーな三塁打だったが、続く舟越が適時打を放ってすぐさま同点に追いついた。

 1対1で迎えた三回はノーアウトから勝連が左二塁打を放ってチャンスを作り、2アウト一、二塁となったところで黒瀬がレフトへ痛烈な打球を放ち勝ち越しの適時二塁打とした。

 この回に3点を奪って主導権を握ると、四回にも黒瀬が2点適時二塁打。五回は小林の三塁打をきっかけに犠飛で追加点。七回は大本が右越え本塁打を放った。

 先発の田中、2番手の村上は2回1失点。育成7位ルーキー左腕の村上は非公式戦13試合目の登板。この試合を迎えるまで防御率0.57と好投しており、この日も失点こそしたが自責は0。落ち着いた投球を見せていた。(了)

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田中正義最速152キロ、2回1失点

 田中正義投手が実戦復帰2度目のマウンドに立ち、先発で2回を投げて1失点だった。

 立ち上がりの初回、2人目の打者にこの日最速152キロをマークして簡単に2アウトを取ったが、四球後に相手4番・小笠原に左中間適時三塁打を浴びて1点を失った。この日は2回もしくは50球が目安となっており次の回も続投。2回は先頭打者に死球を与えたが、後続の3人はぴしゃりと抑えた。最後は140キロ台後半の直球主体で追い込み、低めの変化球で空振り三振を奪った。

 登板後、田中は「今出せる自分の力は普通に発揮できています。体も大丈夫だし、次に向かって早く練習をするだけです」と前向きな言葉を並べた。

今春キャンプで肘に違和感

 5球団が1位指名で競合したドラフト会議からも早4年が経とうとしている。一軍勝利はまだゼロのままだ。苦しい現状を打破するため、昨オフにはプエルトリコでのウインター・リーグに参加し、3度の先発を含む6試合に登板して2勝1敗、防御率1.80と好成績を残したことで、確かな手応えを得た。

 しかし、背水の陣で臨んだ4年目の今季。春季キャンプ1日目のブルペン投球で右肘に違和感を覚えて競争の輪から離脱すると、そのまま時が過ぎてしまった

 今年ようやく試合のマウンドに立ったのが10月7日だ。「誰が見ても遅すぎる」。思わず本音が漏れた。

「もちろん精神的にきつかった。でも、誰かに邪魔をされて野球ができなかったわけではない。だから何の言い訳もないです。しっかり頑張るしかない。前を向くしかない。今日やれることを一生懸命やるだけです」

表情が変わってきた

 この日の復帰2戦目のマウンドは、前回から中4日だった。比較的短い登板間隔、そして田中本人のコメントからもコンディションに不安がないことは明らかだ。

「今は考え方もシンプルになってきました。変にいろいろ考えることがない。いいことだなと思います」

 プロ入り後に伸び悩んだ一因として精神面の脆さも挙げられたが、取材応対するその表情が以前とは全く違っている。自分の想いを素直に言葉にするようにもなった。

 体とともに心も整いつつある。ホンモノの田中正義はもうすぐそこに居る。夢を抱ける大器の覚醒、まだ信じ続けたい。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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