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投げ方のクセがすごい!ホークス板東は「トルネード投法」で一軍デビューを目指す

田尻耕太郎スポーツライター
チーム屈指のイケメン右腕(筆者撮影)

JR東日本から入団2年目

 福岡ソフトバンクホークスの板東湧梧投手はクセのない投球フォームからきれいな真っ直ぐを投げて、制球力も高いとの呼び声でJR東日本から2018年ドラフト4位でプロ入りした。

 その右腕は評判通りに、入団当初から完成度の高い投球を見せた。しかし、昨季は支配下でドラフト指名された投手5名の中で、唯一一軍のマウンドに立つことができなかった。

 今季も二軍スタート。まだプロ野球選手としての本当の第一歩を踏み出せていない。

「コントロールの部分を磨いていっても(プロで)勝負ができると思うけど、常にコントロールを間違わずに狙って投げ続けるのも自分としてはきつい。ある程度強い球を投げられるような工夫をしようと思い、フォームを見直しました」

異例の2日連続先発が転機に

 オフ期間に振り被る姿勢を少し変え、体も強くした。宮崎春季キャンプでは良いアピールもした。

 しかし、3月に入っても一軍には呼ばれず、鳴尾浜球場での阪神とのファーム練習試合では不甲斐ない投球をしてしまい、倉野ファーム投手統括コーチから厳しく叱責された。2日連続で先発マウンドに上がる異例の登板をした。

「今までのフォームだと力が入りづらいと感じた。そして、あの出来事があって、何か変えなきゃという気持ちになりました」

 久保二軍投手コーチに相談。すると、2つの案を示された。

 1つは左脚を上げた際に軸足でジャンプをして伸び上がって投げるイメージの投げ方。もう1つはトルネード投法だった。

野茂を参考に「波をイメージ」

ネット裏からはっきりと背番号50が見える(筆者撮影)
ネット裏からはっきりと背番号50が見える(筆者撮影)

 久保コーチは近鉄と阪神で20年以上も現役で投げた鉄腕だ。トルネード投法の先駆者である野茂英雄と一緒にプレーしたことはなかったが、板東のために映像などを見せながらアドバイスを送った。

「波のような意識だと言われました。捻った時に腕をぐっと上げて、投げに行くときは一度下げて、また上げて、また下げる。動きが波のように。イメージですけど、それで掴んでいきました」

 また、開幕延期の約3カ月間で体を鍛えて体重を5キロ増やし、人生最高体重の83キロにした。昨年も80キロ台に乗せたが、「あの時はご飯を無理やり食べて増やしたので、筋肉よりも脂肪だった。今回はトレーニングです」と嬉しそうに笑う。

野球人生初めての150キロ

 その成果は6月の中継ぎ登板で発揮された。野球人生で初めて150キロをマークした。

 7月4日、タマスタ筑後での広島戦は、今季の公式戦開幕後初めての先発だった。

「少しボール先行になったのは反省点だけど、全体的には良かった」

 4回を投げて1安打1四球の無失点と好投した。

「自分としては先発タイプだと思っているけど、与えられた場所で結果を残すだけです」

 もともと投げるスタミナには自信がある。徳島・鳴門高時代は4季連続で甲子園に出場した。最後の夏は大舞台で4試合連続完投し、母校を63年ぶりの8強へと導いた。

 見た目がスマートでチーム屈指のイケメン右腕。もしかしたら、変則的な投球フォームは以前にくらべて不格好に映り、板東には似つかわしくないかもしれない。だけど、いつも爽やかな顔の裏側で、悔しさを内心に募らせてきた。もうなりふり構っていられない。

 まず目指すは一軍デビュー。しかし、それはあくまで通過点だ。チームのため、そして何より自分のために表舞台のマウンドで輝き続けることを描きながら、板東はぐっと体を捻り一球に思いを込めて投げる。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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