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17年ぶり開幕二軍のホークス内川が再始動。志願の三軍を経て取り戻した本来の打撃

田尻耕太郎スポーツライター
試合前から明るい表情を見せていた(筆者撮影)

【6月23日(火)ウエスタン公式戦 ソフトバンク1-3中日 タマスタ筑後】

 内川が、内川らしさを取り戻した。

 左中間、そして右中間を2本の打球が破っていく。2打席連続のツーベースだ。本来の内川聖一のあるべき姿が、そこにはあった。

 23日、タマスタ筑後でのウエスタン・リーグの中日戦に「4番指名打者」で先発出場した。初回2死一塁での第1打席、中日先発の福谷に追い込まれたがフォークボールを上手く拾って左中間へはじき返してタイムリー二塁打にした。

 四回1死の第2打席では福谷150キロの真ん中外寄り直球を今度は右中間へ鋭いライナーで運び、悠々と二塁へ到達した。第3打席はフルカウントから四球を選び出塁。2打数2安打1打点1四球。納得の表情を浮かべた再スタートになった。

10日ぶりの打席

 打席に立ったのは、6月13日の一軍練習試合の広島戦以以来、10日ぶりだった。

 練習試合でまったく結果を残せなかった。まさかの21打数1安打。先述の広島戦は代打で出場し、外角に大きく外れたスライダーをあっけなく空振りして三振した。通算2171安打の面影が消えていた。

 工藤公康監督は苦悩する内川を見て心配した。内川のいないホークスは想像しづらい。しかし、「結果で判断する」と言い続けた指揮官は決断をした。移籍後初、横浜時代以来17年ぶりの開幕二軍スタートが決まった。

 ファーム公式戦も19日に開幕。しかし、3連戦に内川の姿はなかった。

 三軍に合流。練習時間を確保して、バットを振り込んだ。

「あの状態のまま打席に立っても、良いものが出てくるとは思えなかった」

 一軍にいる間は悩み、今季はすり足で行くと決めたのに左足を上げる打法に戻したりもした。よく言えば創意工夫なのだが、ドツボにハマっている表れだった。

 三軍で5日間、自分の思う練習に取り組んだ。そして臨んだ二軍戦の打席。本当にやってきたことが間違っていなかったのか、不安だったに違いない。内川ほどのスーパースターだって、ひとりの血の通った人間だ。二軍戦とはいえ、人知れず重圧と戦いながら打席に立っていた。

「特に2本目の二塁打ですね。しっかりと外のボールにバットが引っ掛かって捕まえることができた。右中間に、久しぶりにあのような打ち方ができた」

 何かきっかけが欲しい。そう思っていた中で飛び出した最高の打球だった。相手が速球派で一軍実績もある福谷だったことも、その自信を後押しした。

自分を信じ、すり足打法に

 また、この日の打席ではすり足打法に戻っていた。

「焦ってバタバタして、せっかくやってきたことを変えてしまうよりも、今年はこれだと自分で決めたんだし自分のやってきたことを信じてみようと思った」

 今日24日の二軍戦にも出場予定だ。

 内川のいない一軍打線は苦しんでいる。背番号1はやはり必要な存在だ。きっかけは確かにつかんだ。あとは自信を深め、そして確信に変えていく。内川は完全復活へ進み始めた。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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