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かつての沢村賞右腕・攝津正 久保二軍コーチが高評価「風は吹く」

田尻耕太郎スポーツライター
7日のウエスタン・広島戦に先発した攝津(筆者撮影)

危険球退場を機に、歯車狂う

 4月7日、福岡ソフトバンクホークスはウエスタン・リーグで広島東洋カープと対戦した。

【4月7日 ウエスタン・リーグ 小郡 2,937人】

広島     100100033 8

ソフトバンク 000004100 5

<バッテリー>

【C】フランスア、タバーレス、○オスカル(1勝0敗)、S藤井(1セーブ)――中村奨

【H】攝津、野澤、伊藤祐、小澤、渡邉雄、●笠原(0勝1敗)――谷川原

<本塁打>

なし

<戦評>

 小郡で3年ぶりに行われたソフトバンク戦だったが、痛い逆転負けを喫した。3点リードの8回、代わってマウンドに上がったばかりの小澤が、先頭の小窪への2球目が頭部死球となり危険球退場。緊急登板となった渡邉雄が連続押し出し四死球などで3失点して追いつかれた。9回、6番手の笠原が先頭から3連打を許して勝ち越されると、その後も味方失策などで突き放された。

 打線は6回、釜元と三森のタイムリーなどで一挙4点を奪うなど一時は試合をひっくり返した。前日の試合で決勝ホームランを放った釜元は次の打席でもタイムリーを放ち好調をアピールした。(了)

一軍先発陣が不調・・・二軍の昇格候補は?

 一軍ローテ陣の不調がクローズアップされ、さらに開幕投手を務めた千賀滉大まで登録抹消となった現在、二軍先発陣におのずと注目が集まる。

 1軍の公式戦開幕日から振り返ると、攝津正(3月30日)、飯田優也(31日)、長谷川宙輝(4月1日)、古谷優人(4月6日)というのが二軍のローテーションだ。若手左腕に期待は集まるが、チームとしては体力づくりなどの育成を並行しながら試合経験を積ませている段階で、直近の一軍昇格は今のところ考えにくい。

 となれば、実績から名前が挙がるのは攝津ということになる。

 かつての沢村賞右腕。この日、中7日で先発をした。

 今季二軍公式戦では3試合目の先発。過去2戦は計10イニングで12安打、7失点(自責5)と今ひとつの結果だった。この日も立ち上がりから二塁打、四球、二塁打でいきなり失点。しかし、ベテランはここから意地を見せた。続くピンチを捕邪飛と内野ゴロで乗り切ると、2回は8球、3回はわずか5球で三者凡退に仕留めた。その後1点こそ失ったものの、5回を63球で投げきって被安打4、失点2は先発としての役割を果たすものだった。

「鉱脈を探し当てよう」とする姿勢

 久保康生二軍投手コーチは攝津の日頃の取り組みなどの姿勢を高く評価している。「何かにチャレンジしようという姿が見える。この年齢になって、今から大幅に何かが変わるのかと聞かれれば、それは難しいかもしれない。だけど、何か鉱脈を探し当てよう、見つけ出そうと努力をしている」。この登板前日も久保コーチと話し込み、よりよい投球フォームを探しながらキャッチボールを繰り返す姿が筑後で見られた。

 久保コーチは「自分が阪神にいた時も(藤川)球児や安藤、福原、能見がベテランと言われる歳になっても『終わってたまるか』『まだまだ死んでたまるか』というスピリッツ、情熱を持ちながらやっていた」とかつての教え子たちの姿と重ね合わせる。

 努力をしていれば、風は吹いてくれる。久保コーチはそのように言った。その言葉は攝津の胸にも届いているはずだ。この日のボールには前回までと比べて力強さがあった。劇的な派手さはなくとも確かな前進。背番号50にとって、見栄え以上に意味のある登板となった。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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