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走力テスト”秋春連覇”! ホークス育成内野手が1軍オープン戦に“飛び級”ベンチ入り

田尻耕太郎スポーツライター
オープン戦でベンチ入りした松本龍憲内野手(右から2人目)<筆者撮影>

背番号142の2年目内野手

【3月10日 ソフトバンク3-3ロッテ タマスタ筑後】

 出番はなかった。

 それでも、かけがえのない時間になったはずだ。

 ソフトバンク2年目育成内野手の松本龍憲が、3月10日にタマホームスタジアム筑後で行われた1軍オープン戦のロッテ戦にベンチ入りした。

「昨夜、3軍のマネジャーから電話があって。本当にびっくりしました」

 予想もしていない朗報だった。昨年は3軍が主戦場。故障でリハビリにいた期間もあった。2軍公式戦すら出場した経験がない。“飛び級”だった。

走力テストで”秋春”連覇

「ワシは何も言っとらんよ、本当に」

 そう話したのは達川光男ヘッドコーチだ。じつは、以前に達川ヘッドから“チャンス”を示唆されていた。

 昨秋のキャンプ。松本龍は「Yo-Yoテスト」でB組の1位に輝いた。これは持久力のテストで、直線20mの往復をほぼ休むことなく連続で走り続けるというもの。1往復の持ち時間が決められており、一定数を走るとその時間が短くなっていく。そのためどんどんキツくなっていき、どの選手も最後は倒れ込んでしまうほど自分自身と戦わなければならない。このテストの様子を見守っていた達川ヘッドが「よう頑張った! 育成の松本は来年春キャンプの紅白戦に1試合でも呼んでもらえる様に、そして九鬼はA組スタートさせてもらえる様に、ワシから工藤監督にお願いしてみるけぇ。ご褒美がないとな」と言って褒めていたのだ。

松田宣浩の声出しから学ぶ

代走の準備をしている最中には松田(1番右)から声を掛けられるシーンもあった<筆者撮影>
代走の準備をしている最中には松田(1番右)から声を掛けられるシーンもあった<筆者撮影>

 そして今年の春。九鬼はA組でキャンプを過ごした。一方の松本龍は春季キャンプ序盤に行われた「12分間走」でもチーム全体1位を記録した。<もしかしたら、これは本当に紅白戦に呼ばれるのでは>と期待して見ていたが、キャンプ期間中にそれが叶うことはなかった。

 今回のオープン戦招集はチーム事情によるもので、その“ご褒美”というわけではなさそうだったが、松本龍は「すごく貴重な経験になりました」と目を輝かせて言った。

「まず声の出し方ひとつをとっても、1軍は全然違いました。プレー中でも目の付け所が違うと感じました。集中して試合に入っていくところや、ベンチでは松田(宣浩)さんの隣にも居させてもらいましたが、やはり常に集中してずっと声を出していた姿が印象的でした」

 試合終盤には代走出場の準備をして出番を待ったが、残念ながらグラウンドに立つ機会はなかった。それでも「すべてが新鮮で勉強になることだらけでした。明日からは、まず声の出し方も変えていきます」ときっぱり。

 昨年は投手の小澤怜史がやはり“飛び級”でオープン戦に登板。シーズン中には1軍公式戦デビューを掴み取った。松本龍はまず「背番号142」からの卒業が大前提となるが、この一日体験から得たものを無駄にするつもりは勿論ない。次なる育成の星へ、今後注目したい存在だ。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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