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迫るリミット、焦る育成選手たち。ソフトバンク3年連続の最終日登録はあるのか

田尻耕太郎スポーツライター
ソフトバンクの野澤。19歳右腕は二軍でチーム1位の登板数

今季登録期限は7月31日

ペナントレースは後半戦が始まったばかり。秋の決着へ、真の勝負どころはまだ先になるだろう。

一方でリミットがわずか「残り10日」しかない男たちがいる。

背番号3桁の育成選手だ。

今季中の支配下登録の期限は7月31日。刻一刻と迫るデッドラインに、彼らは気を揉む日々を過ごしている。

大所帯のソフトバンクは、7月21日時点23名の育成選手を抱えている。一方で支配下登録選手は68名。残る枠は2つしかない。

過去2年は期限ぎりぎりに吉報

だが、逆に最大2枠の可能性が残されているのだ。近年のソフトバンクでは期限ぎりぎりの支配下昇格の例が複数見られる。昨年は最終日の7月31日に張本優大捕手が登録された。2015年もやはり7月31日に釜元豪外野手が支配下入りを果たしている。

2014年はなかったが、その代わり7月にトレードが行われ、ヤクルトから川島慶三内野手と日高亮投手を獲得した(新垣渚投手と山中浩史投手を放出)。

育成枠からの支配下登録は、この時期に行える今季最後の戦力補強の一つでもある。

はたして、今のソフトバンク、その候補者はいるだろうか。

ソフトバンクの場合、育成選手の多くは三軍が主戦場となる。まずは二軍でプレーをしないことには支配下入りへの距離は縮まらない。

今季ここまで二軍公式戦である程度の出場機会を得ている育成選手といえば、投手では左腕の伊藤祐介、変則右腕の野澤佑斗、やはり変則左腕の児玉龍也といったところか。野手では残念ながら10試合以上出場している育成選手はいなかった。

この3選手の中で、最有望といえば野澤になるか。

野澤の武器は「ぐちゃぐちゃ」の145キロ

野澤はつくば秀英高校から育成ドラフト1位で入団し、今季が2年目の右腕だ。少し腕を下げたところから投げるが、変則タイプのわりに強い球を投げ込む。ストレートは140キロ台中盤を常時マークする。そのストレートは妙な癖球。本人いわく「僕の顔はきれいなんですけど、球はぐちゃぐちゃ」。余計なひと言(笑)が入ったが、相手打者は嫌がりそうだ。

昨年は公式戦登板がなかったが、今季は開幕から二軍に定着している。24試合の登板はチーム最多。役割は中継ぎ投手だ。2勝1敗、防御率1.29。28イニングを投げて、被安打13、与四球は5つしかないのは魅力だ。

性格はかなりの天然系だが、そのおかげか妙に勝負度胸が据わっているのはある意味プロ向きかもしれない。

仲良し柳田悠岐から「待っとるぞ」

また、今年2月の宮崎キャンプ中はB組調整だった柳田悠岐と宿舎で同部屋だった。

「ギータさんからはちょくちょく連絡くるんですよ。オールスターの時も『(一軍で)待っとるぞ』って言ってもらえて、めっちゃ嬉しかった。どうなんです? 僕の名前出てないんですか? 何か聞いてません???」

残念ながら一介のスポーツライターにそんな情報が入ってくるわけもない。

焦る気持ちを一生懸命抑えながら、とにかく日々最善の準備をするしかない。残り日数のカウントダウンはもう始まっている。背番号129の右腕に吉報は果たして届くのか。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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