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野球女子のバイブル「甲子園の星」「プロ野球ai」が休刊。甲子園V腕からも惜しむ声

田尻耕太郎スポーツライター

「輝け――」は43年、「ai」には30年の歴史

プロ野球シーズンは真っ最中。そして高校野球も清宮幸太郎(早稲田実業)のホームラン記録で盛り上がり、これから本格的な「夏」を迎えようとする中、残念なニュースが入ってきた。

世の中の「野球女子」に特に熱く支持されてきた「輝け甲子園の星」と「プロ野球ai」がすでに発売された号をもっていずれも休刊になると、出版元の日刊スポーツ出版社が自社のホームページで発表した。

「輝け甲子園の星」は1975年(昭和50年)の創刊。「高校野球の感動、選手の素顔を伝える高校野球雑誌」(同社HPより)として、高校野球情報の伝え手として業界の先頭を走っていた。

「野球女子」隆盛の時代も、出版不況に勝てずか

昨年10月発売のプロ野球aiの表紙
昨年10月発売のプロ野球aiの表紙

「プロ野球ai」は1988年(昭和63年)の創刊。選手の私服姿やプライベートトークが満載の女性ファン向けのプロ野球情報誌としては業界随一の情報量と多彩な写真で読者のハートをつかんでいた。

近年の野球界では「カープ女子」や「オリ姫」という言葉が定着するなどして、各球団とも女性ファンを主役にしたイベントも増えている。ソフトバンクが毎年行う「タカガールデー」では今年、満員観衆(38,585人)のうち3万人以上(30,357人)の女性ファンを集客したりするなど、「野球女子」の力強いムーヴメントが巻き起こっていたが、出版不況と言われる業界の厳しさには勝てなかったようだ。

ソフトバンク東浜「取材されることがステイタスだった」

ソフトバンクの東浜巨投手は、沖縄尚学高校時代にセンバツ甲子園で優勝投手となり、現在はプロで先発ローテに定着する活躍を見せており、「輝け甲子園の星」「プロ野球ai」の両誌で何度も取り上げられた。

休刊を伝えると「本当ですか」と驚いた様子だった。

「高校生の頃は『甲子園の星』に取材してもらえることがステイタスだと感じていた選手も多かった。僕も対談の企画で首里城に行った記憶があります。『甲子園の星』も『プロ野球ai』のどちらも選手のプライベートに迫ったりして、すごく選手に近い雑誌でした。休刊してしまうのは本当に残念です」

編集者ならびにこの両誌にかかわるすべての人々が野球愛に溢れており、だからこそ伝えられてきた魅力は山ほどあった。高校球界、プロ球界の人気拡大に多大なる貢献もしてきた両誌の休刊は、誠に残念でならない。いつの日か復活の声が聞かれることを、切に望む。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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