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「岡山の李大浩」(!)に一目惚れ!? フレッシュ球宴で出会った「金の卵」

田尻耕太郎スポーツライター

高校通算71発の大砲候補

思わず応援したくなる選手だ。

昨日7月17日に長崎で行われた「フレッシュオールスター」で優秀選手賞に輝いたオリックスバファローズの奥浪鏡選手。『スポーツナビ』でのコラムでも少し触れたが、とにかく好青年。書ききれなかった彼の魅力をもう少し紹介したいと思う。

試合ではウエスタン選抜の「6番一塁」でスタメン出場。1打席目にレフト前ヒットを放つと、3回表の第2打席では外角球を引っ張り込み、この時点で逆転となる2ランホームランをポール際に叩き込んだ。この活躍で賞金50万円を手にしたのだ。

普段のウエスタン取材で名前は知っていた。だが、認識といえば高卒1年目で、高校時代には通算71発を放ったスラッガーだったという程度だった。

逆転弾を放ったところで彼について調べてみた。プロフィールによれば身長176cm、体重95kg。広島県出身。岡山の創志学園高校からドラフト6位でオリックス入りした。甲子園出場経験はないが、通算71発の中には今秋のドラフト最上位候補と名高い済美高校の安楽智大投手から放った2打席連続アーチが含まれているという。

そして、面白いワードに出会った。

<岡山の李大浩>

巨漢でありながら柔らかい打撃を見せることから、そう呼ばれるようになったとか。また、今春のキャンプでは森脇浩司監督がソフトバンクへ移籍した李大浩の後継者に指名したという記事も見つかった。

賞金は、自分の為に「使わない」

試合後の表彰式が終わったタイミングで声を掛けると立ち止まってくれたので、じっくりと話を聞くことが出来た。正直、不躾な質問が多かったと思う。賞金の使い道や体型のこと。我々はどうしても「ネタ」になることを聞きだそうとしてしまうのだが、彼はどんな質問にも丁寧に対応してくれた。やはり取材慣れはしていないようだが、自分の言葉できちんと答えようとする姿勢には好感が持てた。

ただ、賞金の使い道の話では、彼の人間性をよく知ることが出来た。「少し自分のところにとっておいて、あとは両親に渡します」というコメントだけならば在り来たりなのだが、「自分の分の使い道」を訊ねると意外な答えが返ってきた。

「自分の為より、チームの為に使いたいと思います。北川(博敏)2軍打撃コーチも現役時代にフレッシュ球宴で賞を獲ったのですが、当時北川コーチは約10万円分のドリンクなどをチームに差し入れたそうです。僕も何らかの形でチームに貢献したいと思っています」

自分も含めて囲んだ記者はみんな「エッ?」という顔をしたのは言うまでもない。

「僕は欲を出したら失敗するタイプ。2打席目にホームランを打った後の3、4打席目がまさにそう(浅いライトフライ、空振り三振)。だから自分の為には使いません。もっと活躍して、1軍で稼ぐようになったら自分に何か買います」

そして体型の話では、彼自身のポリシーがしっかりと感じ取れた。

「今はプロ入りから少し増えて98キロ。でも、体脂肪率は17%から15%に減りました。体重は減らさないようにしたい。減って(打球が)飛ばなくなるか、それはやったことがないから分からないけど、自分の魅力がなくなるのはイヤです。今の体重があっての今の飛距離だと思います」

そしてホームランについても「今日は井上(晴哉=ロッテ)さんが2本打ちましたが、3年後か5年後には僕が一番ホームランを打つ選手になれるよう努力していきたいです」とこだわりを見せ、岡山の李大浩については「有名な選手に例えてもらえるのは嬉しい。恥じないプレーをしたい。そして、いつかは僕の2世と言ってもらえる選手が出てくるようなプレーヤーになりたい」と夢を語った。

ちなみに、彼の名前は「鏡」と書いて「きょう」と読む。そこにも興味があったので訊ねてみると「ひいお婆ちゃんがつけてくれたんです。下に弟と妹が3人いますが、みんな名前が一文字なんです。由来ですか? うーん、知らないんですよ(笑)」。じつはこれが最大の疑問だったので、ちょっと心残り…。

僕の取材の主戦場であるホークスにとっては、今後かなり脅威の存在となるかもしれない。オリックスの「奥浪鏡」、しっかりと憶えておきたい選手であることは間違いない。

スポーツライター

1978年8月18日生まれ、熊本市出身。法政大学在学時に「スポーツ法政新聞」に所属しマスコミの世界を志す。卒業後、2年半のホークス球団誌編集者を経てフリーに。現在は「Number web」「文春野球」「NewsPicks」にて連載。ホークス球団公式サイトへの寄稿や、デイリースポーツ新聞社特約記者も務める。また、毎年1月には千賀(ソフトバンク)ら数多くのプロ野球選手をはじめソフトボールの上野由岐子投手が参加する「鴻江スポーツアカデミー」合宿の運営サポートをライフワークとしている。2020年は上野投手、菅野投手(巨人)、千賀投手が顔を揃えた。

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