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南野拓実が語る、自身のストロングポイント。「ライン間」をいかに制すか【現地取材】

田嶋コウスケ英国在住ライター・翻訳家
FA杯4回戦シュルーズベリー戦で相手選手と競り合う南野拓実。(写真:ロイター/アフロ)

南野拓実がリバプールに加入して1ヶ月が経過した。

日本代表MFは、ここまで3試合に出場。カップ戦の2試合で先発し、リーグ戦の1試合に途中交代で出場した。最後にピッチに立ったのは、1月26日に行われたシュルーズベリー対リバプールのFA杯4回戦。南野は4−3−3のCFとして先発し、後半40分までプレーした。

試合は、リバプールにとって不本意な結果に終わった。英3部シュルーズベリーの本拠地で行われたこの一戦で、欧州王者のリバプールは後半1分までに2点のリードを奪った。ところが、終盤の後半26分と同30分に立て続けにゴールを許し、2−2の引き分けで終えた。

シュルーズベリーのスタンドは、まさかのドローとアンフィールドでの再試合決定に大興奮。試合終了と同時に客席からサポーターが次々とピッチへ乱入した。途中交代で出場していたロベルト・フィルミーノとモハメド・サラーは、群衆にもみくちゃにされながら足早に選手通路口へ消えていった。

試合後しばらくすると、南野拓実が取材エリアに現れた。この日は、公式戦で2度目の先発。相手は英3部だけに、ゴールも期待された。しかし、前半こそチャンスに絡んだが、ポジションを3回も変えた後半は存在感が希薄になり、シュートは合計1本。無得点のまま後半40分に交代を命じられた。試合後の南野の表情からは、やはり悔しさがにじみ出ていた。

この日の先発メンバーは、カップ戦用のBチーム編成。スタメンはユースアカデミー出身の若手も多く、連係面で難しさを抱えて、チーム全体がうまく噛み合わなかった。だが勝ち抜き戦のカップ戦で、しかも相手は英3部。南野は、貪欲に勝利にこだわる姿勢が必要だったと語った。

「2-2にされた後も、試合を決められる場面があった。そこで決められなかったから、こういう展開になった。連係面がどうであれ、カップ戦だし、正直勝つことが重要だったと思う。連係ミスで相手にチャンスを与えてしまった部分もありますけど、それを言い訳にしてはいけない」

4−3−3のCFとして先発した南野は、いわゆる「フィルミーノ・ロール」の役割を担った。最前線に留まるだけでなく、相手DFとMFの間のスペースまで頻繁に降下。味方からパスを引き出したり、自ら突破を図ったりしてチャンスに絡んだ。ところが、トップ下→右MF→左FWと3回もポジションを変えた後半は、効果的なプレーができなかった。日本代表MFは、自身のプレーを次のように振り返った。

「わりと慣れているポジションでの先発でした。ボールを何回か良い形で引き出せる場面はあったけど、試合全体として見ると、特に(ポジションを色々変えた)後半はそういうところでボールを受けるプレーが少なかった。もうちょっとゴールに向かっていければよかったと思います。ライン間でボールを受けるだけでなく、もっと前でボールを収めたり、もっとゴールに向かう姿勢を見せたり。そういう積極性をもっと出していく必要がある」

■南野が語る、リバプールでの自身のストロングポイント

シュルーズベリー戦で先発のチャンスが与えられた南野だが、大きなインパクトは残せなかった。それでも、落ち込んではいられない。今後もリバプールで熾烈なポジション争いが待っている。

4−3−3の3トップには、サディオ・マネ、サラー、フィルミーノの世界的名手が君臨。インサイドMFにも、ジョルジニオ・ワイナルドゥム、ジョーダン・ヘンダーソン、アレックス・オックスレイド=チェンバレン、ナビ・ケイタといったトップクラスの選手が揃う。世界最高峰と呼ばれる彼らの牙城を崩すのは容易ではない。

そこで試合後、南野にひとつ質問をしてみた。「リバプールで入団から3週間強トレーニングしてきた中で、どういうところが自分のストロングポイントになると思うか」。南野は次のように答えた。

「ラインの間でボールを受けて前を向き、キーになるパスかシュートまで持っていく。また、ボックス内でセカンドボールを拾ってシュートを打つ。ビルドアップのときに味方が動いたスペースをうまく使うとか、そういう部分。あとは(攻守の)切り替えのところ。(局面が攻撃から守備に変わった際に)早い切り替えで相手のボールを奪うとか。そういう部分をもっと出していければいいなと思います」

南野の言う「ライン間でボールを受ける動き」が、今後リバプールでプレーしていくなかで大きなポイントになる。スペースを見つけて侵入し、そこからシュートやラストパスまで積極的に持っていく──。公式戦デビューとなったFA杯3回戦のエバートン戦(1月5日)でも、決定的なチャンスには持っていけなかったものの、随所にこうした“南野らしさ“は見せた。同様の動きを得意とするのは、トップチームではフィルミーノぐらい。ここを武器にしたい。

このライン間でボールを受ける動きをベースにしながら、ゴール前に顔を出して積極的に仕掛ける。また、攻→守へのネガティブ・トランジションの際に、相手から素早くボールを奪い切る。このあたりがポイントになるという。

周囲との連係、リバプールのプレースピードへの順応、戦術習得、そして当たりの激しいプレミアリーグへの適応──。乗り越えるべき壁は、まだ山ほどある。しかし、「どうやってチームにフィットしていくか」と問われると、25歳のMFは「とにかくやり続けるしかない。自分から『今のタイミングでパスを出してくれ』と言いますけど、高いレベルでやっていれば、周りが合わせてくれる部分もある」と力強く答えた。

当然、南野はリバプールに入っただけで満足していない。ここからが勝負である。自分の持ち味を武器にアピールしていこうと、気持ちを高めていた。

英国在住ライター・翻訳家

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。中央大学卒。2001年より英国ロンドン在住。香川真司のマンチェスター・ユナイテッド移籍にあわせ、2012〜14年までは英国マンチェスター在住。ワールドサッカーダイジェスト(本誌)やスポーツナビ、Number、Goal.com、AERAdot. などでサッカーを中心に執筆と翻訳に精を出す。

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