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現地記者の言葉から読み解くニューカッスルの序列。チェルシー戦で武藤嘉紀の先発はあるか

田嶋コウスケ英国在住ライター・翻訳家
(写真:Shutterstock/アフロ)

ニューカッスルのFW武藤嘉紀は、26日にチェルシーとのプレミアリーグ第3節を戦う。過去2戦でベンチスタートだった武藤に、先発の機会は巡ってくるのか。ラファエル・ベニテス監督と現地記者の言葉から今後の起用法を探ってみたい。

現在ニューカッスルのFW陣は、ベネズエラ代表FWのサロモン・ロンドン、スペイン人FWのホセル、スペイン人FWのアジョセ・ペレス、そして武藤の4人で構成されている。ロンドンとホセルの特徴について、ベニテス監督は次のように話している。

「ロンドンには強さがあり、前線でしっかりとボールをキープできる。味方とのリンクプレーもこなし、機動性も高い。彼が前線に入れば、チームにフィジカル面での軸ができる。

ホセルも前線でボールをキープできるが、ロンドンほど強くない。ただし、ホセルの場合はオフ・ザ・ボールでクレバーな動きが期待できる」

186cm・86kgのロンドンと、192cm・80kgのホセルは、いずれも「高さ」がストロングポイント。一方、179cm・69kgのペレスについては、どのように見ているのか。2014年にFWとしてチームに加入したが、ベニテス監督は彼を4−2−3−1のトップ下の位置で起用している。その理由について、次のように語る。

「アジョセはクレバーな動きができ、試合展開を読む力もある。相手の中盤とDFの間のスペースに侵入してボールを受けられる。その役割と効果も理解できている。彼のような選手はそういない」

最後に179cm・72kgの武藤について、ベニテス監督は、速さとハードワークが持ち味だと話す。

「武藤は速さがある。走力を生かした動きも良いし、ハードワーカーでもある。チャンスをつくり、自らネットも揺らせる」

指揮官の言葉から紐解くと、4選手はそれぞれ違った個性と武器を備えている。気になるのは、彼らをどのように起用していくか。

地元紙『イブニング・クロニクル』でニューカッスル番を務めるリー・ライダー記者は、4−2−3−1を基本フォーメーションとするベニテス監督の采配に、ある特徴が見えると指摘する。

「4−2−3−1の『1』の位置、つまり最前線に長身で当たりに強い選手を配置する傾向がある。ロンドンとホセルは、まさにこのタイプ。彼らならロングボールを収めるターゲットマンとして機能する。一方、トップ下の位置に、彼らとはタイプの異なる選手を起用している。昨シーズンは、ペレスが不動のスタメンで起用された。このように、ベニテス監督はFW陣を2つのタイプに分けて考えている。ターゲットマンと、彼らの周辺で動くFWの2つだ。そして、武藤は後者の枠で考えられているように思う。つまり、武藤の当面のライバルはペレスだろう」

昨シーズンのペレスは、いずれもクラブ最多となる8ゴール&5アシストをマーク。強力なライバルであるのは間違いない。

しかし、武藤にチャンスがないわけではない。『イブニング・クロニクル』紙のアンドリュー・マスグローブ記者は、「昨シーズンに比べると、ペレスのパフォーマンスがわずかに低下している」と指摘。ベニテス監督がチーム内に競争が生まれることを望んでいるとし、武藤を先発起用する価値はあると力を込める。

「カーディフ戦の武藤は活き活きとしていた。PKを獲得した仕掛けの動きも良かった。あのPKを成功させ、チームは勝ち点3を挙げるべきだった。武藤は敵と敵の間に入り、そのライン間でプレーできるインテリジェントなプレーヤー。エネルギーに満ちているのは、カーディフ戦で証明された。先発でプレーする準備はできているように見えるし、ベニテス監督としても、武藤の起用は戦略上、大きなポイントなる」

アウェイゲームとなった2節カーディフ戦後にファンサービスを行う武藤嘉紀【撮影:田嶋コウスケ】
アウェイゲームとなった2節カーディフ戦後にファンサービスを行う武藤嘉紀【撮影:田嶋コウスケ】

振り返れば、2004〜10年まで指揮を執ったリバプール在任時代のベニテス監督は、異なるタイプのFWを試合ごとに入れ替えた。例えば、プレミアリーグを4位で終えた2007−08シーズンでは、速さのフェルナンド・トーレス、ハードワークのディルク・カイト、高さのピーター・クラウチ、強さのアンドレイ・ヴォロニンの4人を起用。トーレスをFWの軸としながらも、積極的にローテーションを行なった。

優れた戦術家として知られるスペイン人指揮官としては、異なるFWの個性を組み合わせることで、敵に守備の的を絞らせない狙いがあったのだろう。同時に、敵の弱点を徹底的につく狙いも見えた。チャンピオンズリーグに出場し、試合数の多かったリバプールほどではないにせよ、ニューカッスルでも選手の調子やコンディションを重視しながら、同様の策でシーズンを進めていくように思われる。

その中で、武藤はどのように起用されていくのだろうか。慎重派として知られるベニテス監督は、チームとプレミアリーグに慣れるまで、しばらく途中出場で出番を与えていくかもしれない。既存戦力のホセルとペレス、昨シーズンをWBAの一員としてプレミアで戦ったロンドンは、この点でアドバンテージがある。

ただし26日の試合では、チェルシーからレンタルで在籍している左サイドMFのケネディが、所属先との一戦になるため出場できない。既存戦力のジェイコブ・マーフィーやクリスティアン・アツを起用する手もあるが、チェルシー戦では左サイドMFとしても先発のチャンスはある。

また昨シーズンでは、相手が3バックシステムを用いると、その対抗策としてベニテス監督は3−4−2−1のフォーメーションを採用した。今後3−4−2−1の「2」の位置で、ペレスと武藤が同時起用されるシナリオもありえる。

いずれにせよ、武藤としてはベニテス監督の志向する戦術を正しく理解し、ゴールやアシストの結果を追い求めていくことが必要になる。

英国在住ライター・翻訳家

1976年生まれ。埼玉県さいたま市出身。中央大学卒。2001年より英国ロンドン在住。香川真司のマンチェスター・ユナイテッド移籍にあわせ、2012〜14年までは英国マンチェスター在住。ワールドサッカーダイジェスト(本誌)やスポーツナビ、Number、Goal.com、AERAdot. などでサッカーを中心に執筆と翻訳に精を出す。

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