聖光学院が甲子園で得た教訓。強打で悲願の全国制覇を目指す

トーナメントの組み合わせには、本大会の初戦にも似た独特の緊張感がある。

対戦相手が優勝候補。あるいは、強豪校がひしめく激戦ブロックなど、抽選ひとつで大会そのものの戦い方が大きく左右されることだってあるだろう。

今年のセンバツでも、激戦ブロックに注目が集まっている。

昨秋の明治神宮大会で優勝した仙台育英のブロック。春江工、関西、高知と地区優勝チーム3校に加え、龍谷大平安、早稲田実、報徳学園ら伝統校がひしめく。

史上初の3季連続優勝を狙う大阪桐蔭のブロックもそうだ。大会屈指の好投手と呼ばれる安楽智大を中心とした済美をはじめ、広陵、常総学院、県岐阜商と、過去にセンバツ優勝経験がある有力校が顔を揃えている。

トーナメントにおいて「潰し合い」は避けられない。しかし、全国制覇を果たすためには激戦ブロックを回避できる運も時として必要となるのではないだろうか。

そういった意味では、昨秋の東北大会準優勝の福島・聖光学院に大きなチャンスが転がり込んできたといっていいだろう。

全国制覇の経験こそないものの、2008、10年夏の甲子園でベスト8、センバツにも2年連続で出場を果たすなど、近年の成長は目覚ましい。

聖光学院のブロックには、昨秋の地区大会王者である安田学園、京都翔英、沖縄尚学に古豪の鳴門ら実力校が名を連ねているが、力関係からすれば決して引けを取らない。

「選手たちには、『甲子園では常に強豪校と当たると思って準備しろ』と伝えてモチベーションを高めさせている」

斎藤智也監督は以前、そう言っていた。

聖光学院は、どこよりも甲子園の怖さを知っている。だからこそ、このように常に選手を鼓舞し、成長を遂げてきた。

初出場となった01年夏には明豊に0対20の大差で敗れる屈辱を味わった。今では同校の「お家芸」となっている、盗塁、送りバント、スクイズなどを駆使した機動力野球に磨きをかけ2度目の出場を掴んだ04年夏。ベスト8まであと一歩に迫りながらも東海大甲府にサヨナラ負けを喫した。

春夏合わせて7度目の甲子園となった08年には、遂にベスト16の壁を破り8強に進出したが、横浜の前に1対15と大敗。10年夏にも2年生エース・歳内宏明の好投で広陵、履正社と優勝候補を撃破するなど躍進するも、準々決勝ではセンバツ覇者の興南に3対10と辛酸をなめさせられた。

歴戦を経て得た教訓。それは、「機動力野球には限界がある」ということだった。

斎藤監督は、噛みしめるように言っていた。

「うちが甲子園に出始めた頃にやっていた、1点へのこだわりを貫くスモールベースボールは今でも正しいと思うし大事にもしている。でも、甲子園の上の舞台で強打のチームを目の当たりにすればするほど、『今のままじゃ限界があるな』と感じるようになった。確かに、強力打線にはチャンスでゲッツーなどのリスクはある。それでも、『これも野球の醍醐味だ』と割り切ったチーム作りをしていかないと、もうひとつ上には行けない」

今大会、聖光学院にチャンスがあるのは、何も組み合わせだけではない。その強力打線を形成するだけの素材がいるからだ。

4番の園部聡。

昨年は2年生4番としてセンバツに出場し、夏には2回戦の浦和学院戦でバックスクリーンへ叩き込む豪快なアーチも放った。秋の時点で高校通算38本塁打。プロも注目するスラッガーを軸とした打線に、指揮官も大きな期待を寄せ、手応えも掴んでいる。

斎藤監督は言う。

「試合前には『4、5点勝負です』と言うかもしれないけど、自分の中での想定では7、8点も考えているかもしれない。『点差を離されてもうちはガンガン打ち合いをするよ』と言えるだけの打撃戦ができるといいね。もちろん、機動力も大事にするよ。強打と機動力。その二刀流でうまく戦っていきたい」

初戦の相手は益田翔陽。相手が21世紀枠での選出であっても慢心はない。

「センバツは各地区を勝ち上がってきたチームが集まるレベルの高い大会。弱いチームなんていない。だからこそ、結果を出すことに価値がある」

指揮官はそう言って気を引き締める。

数々の激戦を経て、聖光学院の強者の衣はさらに厚みを増した。

初の8強の壁を破り、一段階上のステージへ。東北勢の悲願である全国制覇を目指す。